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訪れる度に驚きと感動を与えてくれる予約困難な人気店「sincere」東京都渋谷区千駄ヶ谷

東京都 フレンチ 焼肉・ロースト シカ コース
2021.01.12

2016年4月にオープンした「sincere(シンシア)」(以下、シンシア)は、予約が取りにくいことで知られる人気店。

場所は東京・北参道駅から徒歩約5分の閑静な住宅街。マンションの地下1階にありながら、テラス席を2卓も配し、解放感にあふれる空間です。

店内にはテーブルが7卓。最大19名まで対応可能ですが、現在は新型コロナウイルス感染症の感染防止対応のため、席数を減らして営業しているとのこと。また、オープンキッチンになっていて、客席から食事中でもきびきびと作業を進める料理人の様子を見ることができ、まるでライブに参加しているかのような一体感を覚えます。

「シンシア」のオーナーシェフ、石井 真介さんは、「オテル・ド・ミクニ」で三國 清三シェフに師事。フランスの三ツ星レストランで経験を積んだのち、日本一予約困難と言われた松濤のフレンチ「restaurant bacar(バカール)」にて手腕を発揮。2014年に「バカール」が惜しまれながら閉店したあと、約1年の準備期間を経て2016年4月にオープンさせたのが「シンシア」です。“嘘偽りがない” “真摯な”などの意味を持つ言葉であり、石井 真介シェフの名前にもちなんでいます。

こちらでのメニューは「ディナー オートクチュールコース」(13,800円・税抜・サ別)のみ。内容はすべてシェフにお任せすることになりますが、事前予約の際にアレルギー食材や苦手な食材などを申し出ておけば安心。今回はディナーコースの中から「鹿のロースト」を出していただきました。

「骨なしの芯の状態で焼く場合は、じっくり焼く、直には熱しないことが大切です」と石井シェフ。表面にバターを絡めて膜を作り、オーブンで焼き上げたあと、最後に炭火で仕上げるそうです。
「炭火での仕上げは香りもそうですが、食感がよくなるんです」。

肉の外側、色が変わった部分はねっとりと濃厚な感覚で、内側はしっとりとやわらかく、噛むと鹿ならではの味がにじみ出てきます。赤ワインソースには鹿のスジ肉からとったジュ(出汁)が使われていて、口当たりは軽め。

炭火でグリルされた山梨産の天然舞茸や銀杏、栗も歯応えがよくて香りも高く、山ブドウを鹿と一緒に食べるとフレッシュな甘さが加わり、また異なる味わいに。

鹿、猪、子牛、子羊など、季節ごとに使い分ける

実は石井シェフ、2020年9月に新業態店として「Sincere BLUE(シンシアブルー)」をオープンさせています。未利用魚(※形が悪い、傷がある、漁獲量が少ないなどの理由で市場に出回らない魚)を積極的に取り入れ、漁獲量や海洋環境に配慮。海洋資源の乱獲などに関して啓蒙活動も行っています。

そんな石井シェフにとって、ジビエとはどういう存在なのでしょうか?

「命をいただく、という意識ですね。鹿や猪を害獣として駆除しているわけですが、それで奪った命を無駄にしないようにと考えています」

この日の「鹿のロースト」に使用したのは、宮城県牡鹿半島産の鹿肉。食猟師を名乗る小野寺 望さんが主宰する「Antler Crafts(アントラー クラフツ)」から仕入れたものです。石井シェフは牡鹿半島には何度も足を運んだそうで、イベントで鹿肉のパイをふるまったり、小野寺さんの猟に同行したりと、交流を重ねているそう。
「猟期の関係で鹿肉は秋のイメージが強いですが、夏の方が脂がいい。真冬の鹿肉の脂は融点が高く、固いんです。夏鹿肉なら脂も料理に使えます」

猪肉は小柄で肉質がしっかりしているという理由から、島根県から取り寄せていて、「冬は猪、鴨。春先になってきたら子牛や子羊。ほかに岩手県のホロホロ鳥なんかも使うことがあります」と石井シェフ。
修業時代はフランスからの輸入ものでジビエ料理を作っていましたが、「今は国産でそろいます。ただ、自分が美味しいと思ったものしか取らないですけどね」
自ら各地でその味を確かめ、季節ごとに食材を使い分けているそうです。

確固たる信念とそれを具現化する技術、感動を与えるプレゼンテーション

「シンシア」の魅力の一つに、プレゼンテーションの素晴らしさがあります。例えばこちら。

石井シェフの代名詞と言われる「”たい焼き”風の魚のパイ包み」です。「フレンチなのにたい焼き?」といささか面喰いますが、実はこれ、伝統的な魚のパイ包み焼きから発想したもの。ふんわりサクサクのパイ生地の中には、スズキなどの白身魚が入っていて、濃厚な甲殻類のソースが添えられています。

アミューズの盛り付けひとつをとっても、遊び心があふれています。本物のフレッシュマスカットの一部に「マスカットとフォアグラのキャンディ」が紛れ込んでいたり、「サザエのクロケット」が真っ黒真ん丸だったりと、石井シェフならではのイマジネーションが驚きと感動を与えてくれるのです。

各席には天然石や珊瑚を使ったプレゼンテーションプレートが置かれているのも、心憎い演出。また、リピーター客が7~8割と圧倒的に多いなかで、「顧客履歴を把握し、次のご来店時には違うお料理をお出しする」という姿勢を貫いているため、訪れる度に新たな発見があるのでしょう。

「昔はただ、美味しいものを作ればいいと思っていたんですが、料理をすることで誰かが不幸になってはいけないと思うようになりました」と石井シェフ。漁獲量が減っている水産物、害獣とされてしまう鹿や猪など、さまざまな食材の抱える問題点に向き合い、「可能な限り変えていこう」とさまざまな取り組みを行っています。

「美味しいものを通して自然や未来が少しでも明るいものになるように――」。

そんな石井シェフの高い志や温かな人柄も、多くのゲストを集める理由のひとつかもしれません。

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