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罠を仕掛けてジビエを食べる!早稲田大学狩り部の活動取材

千葉県 講義 シカ イノシシ 体験
2025.02.06

ジビエトでは、2024年10月24日、早稲田大学の岩井雪乃准教授のWAVOC特別講義「狩猟と獣害対策論1」にて、地域社会と自然環境との共生を目指し、持続可能な未来への一歩を模索する早稲田大学 狩り部の活動報告を取材しました。
今回は、その講義にて発表を行なった早稲田大学狩り部の活動を取材。早稲田大学 狩り部は、千葉県鴨川市にて獣害対策ボランティアを行う早稲田大学公認サークルで、箱罠やくくり罠の設置や獣害対策の勉強会、ジビエの料理会などを開催しています。

狩り部の活動場所は千葉県鴨川市にある「鴨川自然王国」。東京駅からバスを乗り継ぎ、現地へ向かいます。到着後、最初に行ったのは箱罠の解体でした。箱罠がある場所へ向かう道中で鹿の足跡を発見し、このエリアに鹿が来ていることを確認しました。

獣の痕跡を分析し罠を仕掛ける

畑近くに設置されていた箱罠は猪用の小型のもので、これまで何度も猪を捕獲してきましたが、最近は猪の痕跡が見られなくなり、罠を移動させるために箱罠を解体することになりました。箱罠は、箱型の構造の動物を捕獲するための罠です。中に入ると扉が閉じる仕組みで、主に鳥獣被害対策に使われます。

ポールを一本ずつ外し、埋まっている部分をスコップで掘り起こします。土が固まっていてスコップで少しずつ切り崩していく必要があり、剥がすには一苦労でした。

軽トラックに解体した箱罠を積み込み、次の設置場所へ向かいました。入り口部分の扉は特に重く、力を合わせて積み込みます。

設置場所に到着しました。ここは竹林に接した草地で、現在農業は行われていませんが、猪の出没が多いと地域住民から情報を得て、訪れることにしました。目撃情報の通り、草地には猪が掘り返した後が目立ちます。そこで、猪がどこから草地に入っているのかを確かめるため、地域の方と協力して獣道(けものみち)を探します。獣道とは、野生動物が移動する際にできた細い道のことです。動物が繰り返し通ることで、草や土が踏み固められて形成されます。

まずは解体した箱罠を設置します。金網のような人工物は猪に警戒されやすいため、罠の下面に土をかぶせてカモフラージュを施しました。その後、ポールを差し込み罠を固定します。

最後に入り口をワイヤーで吊し上げ、仕掛けが完成。動物がワイヤーに触れると扉が閉まり、捕獲が完了する仕組みです。

箱罠の中には米糠を撒き、外にもいくつか米糠の山を作って誘引します。これで設置作業は終了しました。

「箱罠を設置できて楽しかったです。構造はそれほど難しくありませんでしたが、完成した時には達成感がありました。」(狩り部・モクさん)

一方、箱罠部隊と別行動を取っていたメンバーは竹林と里山の間のバッファーゾーンで草刈りを実施。防護メガネと手袋を装着し、数人で手際よく草を刈り進めました。数時間前までは藪だった場所が、見違えるほどきれいになっています。開けた場所には猪が近寄りにくくなるため、草刈りも重要な鳥獣対策です。

作業中、くくり罠のワイヤーが切れているのが発見されました。これでは捕獲ができないため、罠を回収して修理することに。

罠を掘り起こし、木の枝を使って発動させました。

すると学生の1人が茂みの中からあるものを見つけてきました。
「薮でハクビシンの骨を見つけました。頭蓋骨と首の骨のようなものです」
小さな頭蓋骨は形を保ったままきれいに残っており、周囲の興味を集めました。こうした嬉しい拾い物も、ここではたくさんあるそうです。

もう一つのくくり罠も確認しようと藪の近くに来ました。すると近くに獣道が。罠を見ると空弾きしており、作動はしているが獲物はかかっていない状態でした。罠を掘り起こしましたが、こちらはワイヤーが切れてはいないようです。

ワイヤーが少し錆びており、滑りが悪くなっているとのこと。

滑りが悪くなると動物がくくり罠を踏んでから罠が作動するまでに時間がかかってしまうため、こちらも回収することになりました。

道の補修にも地域資源を使って

次に来たのは竹藪です。こちらでは、山道の補修に使う竹を調達するためにやってきました。ちょうどいい竹を見つけて、ノコで切っていきます。かなり力が必要な作業です。

根本を切って数人がかりで竹藪から引き出してきました。竹は数メートルの高さがあるため、物や人にぶつからないように引き出していきます。

軽トラックに乗せるために3〜4等分に分けていきます。端っこを持ち上げてもらいながら切ると刃が入りやすいというアドバイスを実践し、容量よく竹を切り分けていきます。帰り道では、仕掛けていた箱罠を確認します。

罠が作動している様子はありませんでしたが、撒いた米糠には足跡があり、猪が近くまで来たことが確認できました。

最後に、切り出した竹を使い山道を補修。水の流れを調整した後、竹を設置して固定し、ぬかるみを防ぎました。

獲って食べる唯一無二の体験

拠点に戻ると、お昼ご飯のいい香りが漂っています。バーベキューコンロでは猪肉と鹿肉を串に刺し焼いていました。

キッチンではカレーが完成していました。料理班が用意した料理を青空の下でいただき、串焼きは炭火の香ばしさが際立ち、カレーはブロック状のお肉が食べ応えたっぷり。

最後に、鴨川自然王国を運営するYaeさんにお話を伺いました。

「学生さんが拠点に来てくれることは本当に助かっています。里山には藪化してしまった場所がたくさんあり、開墾するのは非常に時間がかかります。私はここに住んでいますが、住んでいてもやり切れない部分を手伝ってくれるのはとてもありがたいです。こうした里山にリスペクトがある若い方が育ってくれると嬉しいです」

以前は人の生活圏にも出没していた猪ですが、学生たちが活動するようになってから姿を見かけなくなったとのこと。人と野生動物の境界線を作るためにも、こうした里山での活動が重要であると実感しました。

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■早稲田大学 狩り部

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