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名店出身オーナーが九州産の新鮮食材で描く、あでやかな美味の世界「aga-ri (アガーリ)」福岡県福岡市中央区

福岡県 イタリアン パテ シカ イノシシ ランチ
2020.12.10

天神は、福岡県福岡市の中心部にある九州最大の商業エリアです。多くの人がにぎわうショッピングの街として知られていますが、レトロなスポットから歴史ある史跡、子ども連れでも楽しめるスポットまで、見どころもたくさんあります。

その天神をつらぬく渡辺通りは、おびただしい車や人が行き交い、喧騒が止む日は1日とありません。

けれど1つ角を曲がると、別世界の静けさが広がる街・今泉が現れます。

イタリア国旗を掲げた看板を見つけたら、そのまま指示に従いエレベーターで2階へ。

ここは2017年のオープン以来、多くのファンが信頼を寄せるイタリア料理店「aga-ri (アガーリ)」。赤を基調とした店内は、シックなのに気取らず過ごせそうな雰囲気です。

客席はカウンター5席(1日1組限定)とテーブル2卓、最大6名収容の個室1室を完備。メニューは完全予約のコースのみで、昼4,000円、夜が6,000円、8,000円、10,000円(各税抜)です。

オーナーシェフは、本場が認めた名店の元料理長

食材と生産者に敬意を払い、皿にあでやかな世界を描きだす「aga-ri」。オーナーシェフの上里(あがり) 克彦さんのキャリアを聞き、高い評価の理由がわかりました。なんとイタリアの権威あるグルメ誌「ガンベロロッソ」が日本最高得点を与えた大阪の名店「PONTE VECCHIO(ポンテベッキオ)」の料理長だった方なのです。

しかし広島出身でもある上里さんが、なぜ福岡に出店を?
「実は大阪にいたころから、九州産の食材に魅せられていました」
福岡で独立を決めると、九州各地の生産者を回るなかで、その恵みをさらに実感します。

「朝まで畑に植わっていた野菜が午後には皿の上にある…なんて恩恵は九州ならではですね。それに農家さんと仲良くなると、僕好みの野菜を喜んで作ってくださる。こんなふうに産地との距離が近いので、食材への思い入れは深まるばかりです」
メニューには「本日の食材」欄が設けられ、生産者さんの名前と産地名がずらりと列記されていました。

そんな上里さんにとって、ジビエはかねてより馴染み深い食材。今は福岡県糸島市の食肉処理施設から良質なものを送ってもらい、コースに加えているそうです。今回はそのなかから2品紹介します。

一品目は猪と鹿で作った「パテ・ド・カンパーニュ」。安全に食べられるよう、しっかり火を通してあります。

火入れは完璧ながら、仕上がりは驚くほどしっとり。しかも肉自体は強い弾力を秘め、飲みこむと鼻腔に上品な野性味が残りました。

上里さんの歓待の心が伝わる、工芸品のような盛り付けがまた印象的。3種の小粋な薬味にもこだわりがうかがえます。薬味は左から粒マスタード、麹で熟成させた芥子の実、赤ワイン塩です。

続いては、マルサラ酒(シチリア伝統の甘口ワイン)やバルサミコなどで猪肉をグツグツ煮込んだ「猪のスカロッピーネ」が登場。

仕上げにゴボウのピューレとトリュフを加えれば完成。中の半熟卵をくずして猪に絡めると、なぜだか懐かしい気分に…。

そう、まさにこれはイタリア版のすき焼き! 現地の伝統料理ですが、白ワインではなく甘口のマルサラ酒を使うことで“すき焼き度”がアップしています。甘味の強いタレと、猪の自然な甘味。その2つが舌を包むと、うっとりする旨味の渦に襲われました。

「ジビエの生臭さがなく、日本人向きで好まれそうでしょう?」と上里さん。「ジビエの認知拡大は僕のテーマの1つ。それには親しみやすい味に仕上げるのが一番なんです」

「僕ら世代」の料理人に託された責任

その言葉には、上里さんの強い願いがこもっていました。
「この先10年、価格高騰で気軽に使える食材は確実に減ります。でも子供たちには安心・安全なものを食べてもらい、バトンを次代に繋いでほしい。そのためにも、さまざまな食材を“美味しく食べる方法”を模索することが僕ら世代の責任だと思うんです」

そうした意味で、まだ普及しきれていないジビエには特に可能性を感じるとか。
「もともと野生の存在だからか、“命をいただいている”という感覚が強い食材。流行り廃りではなく、真剣に向き合っていきたいですね」

食材、人、未来。すべてに優しさや慈しみを向けるからこそ、上里さんの料理には独特の魔法がかかるのでしょう。改めて食の価値や意義について考えたくなりました。

最後にデザートの「ティラミス」をいただき、再び夢心地に。ティラミスというと下からコーヒーシロップ、生地、マスカルポーネムースの順に重ねていくのが普通ですが、遊び心からその重ねる順序を逆にしており、「僕らは“ミスティラ”と呼んでます」と、上里さん。季節感ある栗の渋皮煮と、苦味の効いたキャラメルジェラートも素敵なアクセントでした。

店内では実際に使用中のオリーブオイルやパスタなども販売中。お土産にすれば、ここで味わった感動を自宅で再現できるかも!?

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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