農林水産省、農業遺産認定地域連携会議主催の「第3回高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」にて、66件の応募の中から見事ゴールド賞に輝いたアイデアがあります。徳島県立池田高等学校の生徒たちが考案したジビエカレー、その名も「おかわりシカたなしカレー」です。
この受賞アイデアが、東京・吉祥寺PARCO内の和カフェ「kawara CAFE&KITCHEN」にて、2026年2月2日から2月28日までの期間限定でメニュー化されています。
2月13日、考案者の生徒たちが実際に店舗を訪れ、プロの手によって提供された自分たちのメニューを実食しました。その様子を取材し、このアイデアに込められた想いを伺いました。
プロの技で再現された高校生たちの絶品カレー
若者が行き交う吉祥寺のランドマーク、吉祥寺PARCO。その7階にある「kawara CAFE&KITCHEN」に、高校生たちの姿がありました。
はるばる徳島からやってきたのは、コンテストでゴールド賞を受賞した3名と、シルバー賞を受賞した2名が在籍する、県立池田高等学校の2年生「探究科食文化班」のメンバー(写真左から華岡愛文先生、中村蒼空さん、矢野新さん、福田悠作さん、先川こはるさん、山口ひまりさん)です。
少し緊張した面持ちで待っていた彼らの前に、香ばしい匂いとともにカレーが運ばれてきました。その瞬間、表情がパッと華やぎます。
「おいしい……!」
「スパイスが効いて、本格的な味になってる!」
彼らが口にしているのは、2026年2月に1ヶ月間限定で提供されている「おかわりシカたなしカレー」。徳島県祖谷(いや)地方の食材「祖谷の地美栄(ジビエ)」シカ肉を使ったキーマカレーです。
自分たちのアイデアが、東京のおしゃれなカフェ・ダイニングのメニューとして多くのお客様に楽しまれている——。その現実に、矢野さんは喜びを隠せないようでした。
「まさか自分たちがゴールド賞を取れるとは思っていませんでした。こうして東京にも来ることができて、コンテストにチャレンジして良かったです。お店の前には『おかわりシカたなしカレー』の大きなポスターが貼ってあって、改めてすごい賞を取ったんだなと実感しました。大々的に紹介してもらえて本当に嬉しいです」
今回彼らが参加したアイデアコンテストは、農林水産省、農業遺産認定地域連携会議が主催する、次世代への農業遺産の継承を目的としたプロジェクトです。コンテストのお題は、「2地域以上の農業遺産地域の産品と一般の材料を自由に組み合わせた、食品または料理のアイデア」。
農業遺産とは、何世代にもわたって継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに関わる文化、景観、生物多様性などが一体となったシステムを認定する制度で、現在日本国内には36の地域が存在しています。※世界農業遺産17地域、日本農業遺産28地域(重複認定あり)
池田高校の生徒たちが選んだのは、地元「徳島県にし阿波地域」と、海を挟んだ隣県にある「兵庫県南あわじ地域」。これら2つの農業遺産地域には、以下のような特徴があります。
・徳島県にし阿波地域(世界農業遺産)
最大40度にもなる急傾斜地を、段々畑にすることなくそのまま利用する「にし阿波の傾斜地農耕システム」。カヤをすき込んで土壌流出を防ぎながら、400年以上にわたり雑穀などを育ててきました。
・兵庫県南あわじ地域(日本農業遺産)
稲わらを牛の飼料にし、牛ふんを堆肥として畑に還す「循環型農業」が特徴。このサイクルが、有名な淡路島のたまねぎを生み出しています。
「おかわりシカたなし」に込めた地域への想い
池田高校には「課題研究」という授業があり、生徒たちは高校1年から2年間、それぞれの興味に分かれて班を形成し、地域活性化にもつながる主体的な探究学習を進めていくそうです。
その中で生まれた「探究科食文化班」の5名が、昨夏このコンテストの存在を知り、応募することに決めました。
「それまでの食文化班の活動の中で、地元・三好市には『祖谷の地美栄(いやのジビエ)』があることを知っていました。もう一箇所の『南あわじ地域』には、玉ねぎやお米が産品としてあったので、これらを掛け合わせてカレーのアイデアが浮かびました。匂いにイメージのあるジビエのシカ肉を、誰もが親しみやすいカレーに取り入れることで、おいしく食べてもらえたらいいなと思って」(矢野さん)
さらにお米には、「にし阿波地域」で産出されるはだか麦、たかきび、粟、こきび、やつまたといった雑穀を混ぜ合わせ、甘みやプチプチ食感を楽しめるようにしたそうです。
「若い人にも年配の方にも刺さる料理は何かと考えたときに、伝統を守りながらも、今どきの新しいトレンドを取り入れていくのが大切だと、今回の企画を通して思いました」(先川さん)
そして付けられた名前が、「おかわりシカたなしカレー」。「鹿」と「仕方なし」を掛け合わせ、「おかわりせずにはいられないほどおいしい」という意味を込めたという、高校生らしい遊び心あふれるネーミングです。
また、矢野さんはネーミングについてこんな想いも語ってくれました。
「にし阿波のジビエを活用することは、『野生鳥獣による農林水産業被害』という地域課題を解決することにつながります。そして、南あわじの食材を使うことは、循環型農業という持続可能なシステムを応援することになるんです。このカレーを食べることが地域の環境保全につながるので、だから皆さんにいっぱい食べてほしいなって。そんな想いもこの名前に込めました」
引率していた担任の華岡愛文先生に、生徒たちを指導するなかでどんな苦労があったか伺うと、
「正直に申しまして、私はほとんど何もしておりません。生徒たちがこれをやりたい、あれをやりたいと、自発的に動いてくれました。試行錯誤したり、これが合っているのか間違っているのかとか、そういうものを全部生徒が自分たちで考えてやっていました。探究科食文化班として一年間続けてきた活動の積み重ねが、このゴールド賞という結果につながったのだと思います」
と話します。
今後は、「おかわりシカたなしカレー」とその開発を通して経験したことを、徳島県内でたくさん広めていく予定があるそうです。
「『食を通して地元を盛り上げたい』というのがぼくらの目標としてあるので、今回の受賞はあくまで通過点だと思っています。食だけに限らないんですけど、地元の魅力って、意外と地元の人たちが知らないっていうのも結構あるんですね。それで、魅力を広めるといってもやっぱりぼくたちだけでは力が足りないので、まずは地元の人たちにきちんと魅力を伝えて、知ってもらいたいです。そして一丸となって、地域の魅力を全国に広めていくのが大事かなと思っています」(矢野さん)
地域を想う高校生たちのアイデアと、素材の良さを最大限に活かすプロの調理技術。その両方が噛み合い、素晴らしい一皿が完成しました。「祖谷の地美栄」シカ肉は「国産ジビエ認証」の施設で適切に解体処理されているため、臭みはまったく感じられません。「南あわじ地域」の「きぬむすめ」と、「にし阿波地域」の5種類の雑穀の相性も抜群です。
今回「kawara CAFE&KITCHEN」では、「おかわりシカたなしカレー ~徳島県『祖谷(いや)の地美栄』シカ肉のキーマカレー~」に加え、関連メニューとして、「徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー」と、その2つを一度に楽しめる「ハーフ&ハーフ」も用意されています。
2026年2月28日までの期間限定メニューです。高校生たちの情熱が詰まったカレーを、ぜひこの機会に味わってみてください。
<商品情報>
■おかわりシカたなしカレー ~徳島県「祖谷(いや)の地美栄」シカ肉のキーマカレー~(サラダ・スープつき) 1,540円(税込)
■徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー(サラダ・スープつき) 1,540円(税込)
■徳島県「祖谷(いや)の地美栄」シカ肉のキーマカレーと徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー ハーフ&ハーフ(サラダ・スープつき) 1,760円(税込)
書き手:中村洋太
X:https://x.com/yota1029
note:https://note.com/yota_nakamura

