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創業半世紀の山荘の新名物。秘境で味わう薪窯焼きジビエピザ「村上山荘 食事処 大長谷ふるさとセンター」富山県富山市

富山県 イタリアン ホテル・旅館 焼肉・ロースト パスタ・ピザ シカ イノシシ クマ
2023.02.15

富山県と岐阜県の間には、世界遺産の五箇山(ごかやま)と白川郷を結ぶルートを始め、大きく分けて3本のルートがあります。その中でも、富山市から深い山を越えて飛騨市へ至る国道471号は冬季閉鎖が半年にも及ぶ最も雪深い場所です。

今回ご紹介する「村上山荘 食事処 大長谷(おおながたに)ふるさとセンター」(以下、村上山荘)は471号の県境付近、富山市中心からは車で1時間ほどの「大長谷(通称:ながたん)」と呼ばれる集落にあります。

背後には、季節を問わず登山ファンが通う「白木峰(しらきみね)」という山がそびえ、その麓にはキャンプ場があるなどアウトドアが盛んな地。昔から釣りや狩猟が生活の一部で、熊や猪も豊かな山の恵みの一部として地元料理に根付いてきました。

「村上山荘」は創業約50年。初代オーナーの村上 光進(こうしん)さんが、牛飼い、狩猟、山菜栽培、農業をしながら食事提供可能な山荘を開いたのが始まりでした。登山に訪れるにもたいへんな奥地だったため、登山客らにとってはベースキャンプ地としての利用ができる山荘として重宝されてきたそう。

そんな山荘を、2011年に、村上さんの姪の森 恵美さんが叔父を手伝いながら引き継ぐことになりました。以後、イタリアンを得意とする恵美さんのアイデアでメニューも進化を続けながら、秘境でほっとひと息付ける山荘として、住民や登山客らに長く親しまれています。

世界大会で見えた「故郷でピザを焼く自分の姿」

恵美さんは富山県内の大学の食堂の栄養士として就職後、異動の際に料理部門を希望し、師匠と仰ぐ料理長のもと、ホテルのセントラルキッチンで洋食の基礎を徹底的に学びました。料理の道を歩み出して感じた、食べてくれるお客さんの顔が見える仕事がしたいという思いを師匠に相談。26歳で大阪のイタリアンレストラン「ピッツエリア・ラ ポルタ」へ職場を移します。

そこでの修行中、イタリアを研修で訪れた時のこと、ピザの世界大会があることを知りました。出場してみたいという思いを募らせながら過ごした5年目、ピザ場での焼きを任されるまでに。今こそ腕を試してみたいと思い立ち、The Championato Mondiale Della Pizza(イタリアの世界ピザ職人選手権大会)に出場しました。

世界中から集まった300人を数えるピザ職人の熱気に圧倒されながらも、大長谷のススタケ(別名ネマガリタケ ※日本海沿岸に自生するタケノコの一種)を具材に持ち込み、クラシカ部門に出場、2位を勝ち取りました。

またその時に、総合優勝に輝いた現地の年配の女性の姿を見て、自分も「あの人のように長く料理を続けたい」と、新たな目標ができたそう。さらに大会で食べたピザに使われていた現地のチーズや生ハムの美味しさに、地元の素材を使ったものが一番美味しいということを再認識し、故郷でピザを作るというイメージが見えてきたと言います。
「世界中の職人が集まるイタリアの大会に“大長谷のススタケ”を持ち込んだのは、やはり私の原点は大長谷だったのかな」と、恵美さんは振り返ります。

それから4年が経ち、故郷の大長谷へ帰ってきた恵美さん。叔父の山荘を引き継ぐために、最初は手伝いながら自分の得意なイタリアン料理をメニューに加えていきました。

「自慢は、左官職人である父と弟が作ってくれた『手作りのピザ窯』です。薪窯は高温調理ができ、薪の風味が加わるので、いっそうピザが美味しくなります」と話してくれました。
※火入れの関係で、ピザを注文する場合は要予約

獲れたその地で味わうジビエの真骨頂

「村上山荘」を訪れたらまず味わいたいのが、そのピザ窯で焼き上げた「ジビエソーセージとクレソンのピッツァ」(2,000円・税込)です。

大長谷で獲れた猪と鹿のお肉で作ったソーセージに、大長谷育ちのクレソンを添えました。ジビエソーセージは、地元の食肉処理施設「大長谷ハンターズジビエ」の猟師・石黒 木太郎(もくたろう)さんが、丁寧に解体したジビエを富山市の専門店でソーセージにしてもらっています。クレソンとも相性ピッタリで、窯焼きピザ生地の香ばしい風味がそれぞれの個性を受け止めて、ひと口頬張れば旨味が口いっぱいに広がります。

次に紹介するのは、サイドメニューで人気の「鹿肉のロースト」(2,500円・税込)です。

甘味が強い大長谷産の鹿肉をじっくりローストし、ダイナミックにカット。純粋に鹿肉の旨味を味わえる、ジビエファンにもおすすめの一品です。

最後に紹介する「熊のミートソース」(1,800円・税込)は、熊肉を赤ワインとトマトでじっくりと煮込んだソースが絶品のパスタメニュー。たっぷりと時間をかけて仕上げているので、熊肉がとてもやわらかく旨味が凝縮されています。熊肉も大長谷産は甘味が強めなのが特徴で、ベリー系の赤ワインとの相性が抜群です。

住民ガイドによるツアーで、人と山がつながる場所に

「村上山荘」では、食事のみの提供は毎年4月上旬から11月末まで。12月に入ると、宿泊がメインで、夜はジビエのコース料理を楽しめます(山小屋スタイル1泊2食付き10,000円~・税込 ※個室はありません)。

「私が安心してジビエを食材として扱える理由の一つとして、石黒さんの存在が大きいです。彼は、捕獲時どんな状態だったのか、どんな個体だったのか、鮮度など丁寧に教えてくれます。それを前提に今回はミンチにした方がよいといった、ベストな食材に形成して提供してくれるんです」

また、住民がガイドするキノコ狩りや山菜採りなどのツアー、ワークショップ、無農薬野草を採取して酵素ジュース作り、スノーシューで山歩きトレッキングなど、季節によってさまざまなツアーを開催。参加者向けの食事提供もしています。

「私がここに辿り着いたのも、人と人とのつながりのおかげです。村上山荘を人と人、人と山が繋げてくれる場所に育てたい」との森さんの言葉どおり、『村上山荘』では下山して絶景を振り返る人や、旅の途中の人、地元のおじちゃんやおばちゃんたちまで、いろいろな人たちがくつろいでいきます。料理ももちろんですが、山奥に流れる和やかな雰囲気も、ふとした時にまた訪れたくなる大きな魅力です。

世界を見てきた森さんが、知り尽くした故郷の素材から引き出す味わい。それをその地でいただく贅沢は、イタリアンの技に彩られながらも、地産地消のジビエ料理の真骨頂なのではないでしょうか。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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