西武新宿線・新所沢駅から徒歩わずか1分ほどのところにある大人の美食空間「ビストリア 新所沢店」は、『ジビエと野菜とワイン達』をテーマに掲げる隠れ家的レストランです。
青い壁に囲まれた地下への階段を降りると、まるでヨーロッパのビストロのような広々とした空間が広がります。落ち着いたピンクの壁面に、上品なゴールドのタイルがアクセントを添え、店内の壁に映し出されるプロジェクターの光と影が、空間にやわらかなぬくもりを生み出しています。
ここでは、やわらかな食感と、赤身の旨味が際立つ南アルプスの鹿肉のほか、猪、雉(きじ)、アナグマなどを、所沢の新鮮な野菜やオーナー厳選の種類豊富なワインとともに贅沢に楽しめます。
お店のオーナーシェフは、川上 さん。食品卸業界で培った流通の知識と、ジビエへの深い情熱を掛け合わせ、日本の食文化に新たな価値を届けています。川上さんが大切にしているのは、「安全で上質な肉を提供する」という信念。 提供するお肉の品質には細心の注意を払っています。
このお店で味わえるのは、命を尊び、素材の力を最大限に引き出した料理の数々です。口に運ぶたびに、自然の美しさや命の循環を感じさせてくれます。そのひと皿には、川上さんの想いと、未来へつながる「ジビエの物語」が込められています。
天然鹿肉と旬の野菜、ワインとともに楽しむ「アルプス鹿のロースト」
店内の黒板には、その日おすすめのメニューがずらりと並び、多種多様なジビエが顔をそろえています。
その中でも特に人気の定番料理が「アルプス鹿のロースト」(2,800円・税込)です。しっとりとやわらかな食感と、噛むほどに広がる上品な旨味が特徴で、初めて鹿肉を味わう方にも親しまれています。南アルプスで育った天然鹿の赤身を丁寧に焼き上げ、素材本来の風味を引き出した一皿です。
「やっぱり野生感が大事なんです。素材そのものを感じてもらいたいので、焼くときも塩と胡椒で仕上げます。ソースを添える場合は、最後にフルーツ系をほんの少しだけ」
料理に彩りを添えるのは、毎日、直売所から仕入れている所沢産の新鮮な野菜たち。パプリカやカボチャ、ケール、シシトウなど季節の野菜を使った付け合わせが、アルプス鹿の皿に華やかさを加えます。
「所沢の野菜は、直売所ならではのフレッシュさにくわえ、色鮮やかで豊富な品ぞろえに、つい心が躍ります」と川上さんは情熱的に語ります。
また、アルプス鹿と鴨(国産養殖)を使った「アルプス鹿と鴨のラグーのパスタ」(2,000円・税込)は、濃厚な味わいと香りが魅力のひと皿。高価な鹿肉や鴨肉の切り落としなどの余り部位 も、パスタソースやほかの料理に活用し、命を大切にする工夫が随所に施されています。
鹿肉と鴨肉をじっくり煮込み、芳醇なラグーソースに仕立てることで、ジビエならではのワイルドさとワインのコクが重なり、ひと口ごとに豊かな余韻が広がります。
ハンターであり医師でもある人物との出会いが導いた、ジビエ専門店への転機
「ビストリアはもともとイタリア料理店だったんですが、いまはジビエ専門レストランとして全面的に展開を進めているところなんです」と、これからの展望を語る川上さん。
もともとは食品卸会社を経営されていたそうですが、 卸先の飲食店が次々と閉店していく現状を目の当たりにし、店舗を引き継いで新たなレストランとして再生させる事業を始めました。それをきっかけに、川上さんは外食ビジネスやシェフ業にも挑戦するようになります。「ビストリア」も当初はイタリア料理店として誕生しましたが、ある運命的なご縁をきっかけに、ジビエ専門レストランとして生まれ変わったのです。
転機となったのは、お店の近隣にある病院の院長先生との出会いでした。医師であり狩猟にも携わるその方から、ある日、捕獲された鹿が必ずしも有効に活用されるとは限らず、山から運び出すこと自体にも多くの困難があるという現実を聞かされたそうです。その院長先生は、この問題を解決するため、私財を投じて南アルプスに食肉処理施設を設立。
院長先生のここまで取り組む姿勢に、川上さんは強く心を動かされ、自身が経営する食品卸会社のネットワークを生かし、本格的なオリジナルブランド「南アルプス鹿」と銘打って、ジビエの流通に乗り出しました。
そうしてジビエの世界に深く関わるうちに、「ビストリア」はジビエ専門レストランとしての道を歩み始めます。
「結局、院長先生に出会わなかったら、ここまでやっていなかったと思うんですよ。彼の情熱に、こちらも心を動かされてしまって。ある日、先生が鹿を持ってきてくださり、色々と教えていただき、気づけば自分のほうがどんどんジビエにのめり込んでいました。『ジビエってこんなに深い問題だったのか』と改めて思うようになったんです 」とジビエ専門レストランとして生まれ変わるまでの、熱い想いを聞かせていただけました。
食材への強いこだわり。南アルプス鹿と徹底した品質管理
川上さんは、ジビエの中でも鹿肉が持つ可能性に強く惹かれています。「山で育つ鹿は、木の実や草などを食べているため、臭みが少ない。適切な検査、処理を行えば、未来の食卓を支える健康的な食材になり得る」と、川上さんは確信しているのです。
ビストリアの主力である「南アルプス鹿」は、処理施設にて、個体ごとの状態を把握するための検査や確認を行いながら、速やかに解体・部位分けを行い、急速冷凍によって品質を管理。こうした日々の積み重ねのもと、状態を見極めながら、厨房へと届けられています。
「ビストリア 新所沢店」から生まれる、ジビエ文化の未来と新しい命の循環
川上さんは、「将来的にはチェーン展開を目指し、より多くの方に上質で安全なジビエを届けたい」と、未来への希望を語ってくれました。
課題として見えてきたのが、有害駆除を担うハンター不足。川上さんと院長先生の会社で協力し、ハンターに報酬を支払う仕組み作りに取り組み始めました。
こうして駆除した鹿を有効活用するため、鹿を獲る人、活かす人、食べる人がつながり、持続可能な形で鹿肉文化を回していく仕組み作りを目指したことで、現在は少しずつ若いハンターが集まり始めているそうです。
「『鹿肉を広めるためのレストラン』をやっています。いずれはチェーン展開できるように、捕獲から流通、提供までの課題を一つずつ解決し、持続可能な循環をしっかり形にしていきたい」と川上さん。
行政の支援だけに頼るのではなく、自らの手で課題に向き合い、ジビエ文化を広めようと奮闘する姿勢には、地域の自然や命への真摯な思いが感じられます。こうした動きはやがて全国へと広がり、支援の輪やジビエの魅力に惹かれて訪れる人々が増えていく未来が想像できます。
「ビストリア 新所沢店」から生まれる、新しい命の循環。今後の展開に、ますます期待が高まります。
ビストリア 新所沢店(bistoria)
- 公式サイト: https://gh4t402.gorp.jp/
- 住所:埼玉県所沢市松葉町2-6 B1
- TEL:04-2935-7808
- 営業時間:金 17:00〜22:00(L.O. 22:00)、土・日 12:00〜15:00(L.O. 15:00)/ 17:00〜22:00(L.O. 22:00)
- 定休日:月・火・水・木曜
- ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
- 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。

