絶品鹿肉が味わえるミシュラン一つ星獲得「フレンチレストラン banquet」北海道札幌市中央区南

北海道札幌市の地下鉄東西線・西18丁目駅の1番出口より徒歩約8分。

瀟洒（しょうしゃ）なたたずまいの住宅街におしゃれなカフェなどが点在する、円山地区。そこに今回紹介する「フレンチレストラン banquet（バンケット）」（以下、バンケット）があります。

扉を開けると、窓から光差す明るい店内に導かれて、真っ先に目に入るのがオープンキッチン。テーブル席からはシェフの姿が見えて期待感が高まります。

「バンケット」は1日2組限定の完全予約制レストランで、テーブル席のほかに落ち着いた空間の個室があります。メニューはコースのみでランチは6,000円と10,000円のコース、ディナーは12,000円と18,000円のコースがあります（各税抜・サ別）。

鹿から作ったフォンで引き出す鹿肉の底力

まず紹介するのは、全メニュー共通で最初に出される「アンチョビバターを挟んだチーズのサブレ」。麦を敷き詰めたお皿の上に個包装されたサブレが置かれ、料理を待つ間にお客様が「これはなんだろう？」と、ワクワクしながら写真を撮って楽しむんだそうです。

バンケットのロゴシールを剥がしてサブレを割ってみると、チーズの香りが漂ってきます。口へ運ぶと、まろやかなチーズの旨味と程よい塩加減のアンチョビの風味が、食欲を一気に呼び起こしてくれました。

コース料理のメインプレートは、「鵡川（むかわ）産鹿肉ロースト」です。

赤ワインのソースには、鹿の骨などから取ったフォン（出汁）を使っているので、鹿肉との相性は抜群。肉の繊維の隅々までじわじわと染み込んでいきます。蝦夷鹿肉の肉汁からあふれる旨味とソースの酸味が見事に調和して、鹿肉の底力を引き出してくれているよう。

18,000円のコースでは、ローストと一緒に鹿のタンも添えられています。

鹿のタンは、牛タンともよく似たコリっとした食感で、ローストとはひと味違ったあっさりした風味が楽しめます。

猟場まで通って確信した蝦夷鹿肉の美味さ

オーナーシェフの若杉 幸平さんは、1998年から6年間フランスの星付きレストランで修行を積みました。その間、2002年にフランス料理文化センターが主催する「FFCC料理コンクール」で準優勝を果たすなど、修行中から頭角を表します。2005年にはミシェル・ゲラール氏がグランシェフを務める三つ星レストラン「Les Prés d’Eugenie (レ・プレ・ドゥジェニー)」で魚料理担当シェフに就任。その後、帰国し2006年7月に独立。札幌で「バンケット」をオープンさせました。

「本当は数年で東京へ行こうと思っていたんですが、北海道のよさに気が付いてしまって。でも、心の中では葛藤もありました。まだまだシェフとして料理の腕を上げる伸び代があるんじゃないかという自分への期待と、地元に貢献したいという気持ちと、いろいろ…」

若杉シェフは食材にとても厳しく、本当に美味しいと思える食材じゃないと料理を提供したくないと常々思っています。そんな噂を聞き付けた猟師さんより若杉シェフに「うちの鹿肉を使ってもらえませんか？」と声がかかったそうです。
「初めは、きっと美味しくないだろうと信用をしていなかった。けれど調理してみたらすごくよくて！ 猟場まで見に行きました」
訪れたのは、北海道のむかわ町で食肉処理・加工販売を営む「むかわのジビエ」。こちらで、処理の仕方も見学させてもらったそう。
「とにかくすべてが完璧な処理でした。それを見たら彼の鹿肉が美味しいのは当然」と思い、仕入れることに。
「今では、猟師さんに指示を出しています。『できるだけ食肉処理施設近くまで鹿を引き寄せて』とか『角が1本の鹿がいい』とか」
鹿の角の本数というのは雄鹿の年齢を表します。角が1本、つまり1歳の雄の肉はやわらかいのに蝦夷鹿らしい野性味もあり、美味しいのだそう。

バンケットは、2017年にミシュラン一つ星を獲得し、選び抜いた食材を引き出す料理を提供し続けています。
「ジビエだから、というよりも、この時期は絶対的に蝦夷鹿肉が美味しい、それが優先。とびっきり美味しいものをお客様に提供したいという気持ちです」

目指しているのは“グランメゾン”ではなく、気軽な気持ちで立ち寄れる“プティメゾン”だと語る若杉シェフ。気さくな人柄のシェフとの会話も楽しみながら、心温まるランチやディナーはいかがですか？