北海道・札幌市営地下鉄大通駅の地下街を出てすぐにある南一条の中小路周辺は、70年代には「オヨヨ通り」と呼ばれ、当時の若者たちで賑わうカフェやショップが立ち並ぶ文化の発信地でした。東京でいう渋谷や原宿でしょうか。そんなオヨヨ通りの面影を残す建物のひとつ、オレンジ色が目印の建物「oyoyo VALLEY」に、今回訪ねる「Magazzino(マガッツィーノ)」(以下、マガッツィーノ)があります。
ビルに一歩足を踏み入れると、どこか懐かしい雰囲気が漂っています。階段を上り、2階の左奥が目指す「マガッツィーノ」です。
扉を開けた先には、札幌駅前通りの喧騒から隔てられたお洒落で落ち着いた空間が広がっていました。
店内にはカウンター席とテーブル席があり、貸し切りも可能です。お食事は完全予約制で、月替りのコースのみの提供。コースは全部で3種類あり、5,000円、7,000円、10,000円(各税抜)そのうち、当日予約が可能なコースは5,000円と7,000円の2つです。
〆の一杯まで、道産素材と蝦夷鹿尽くし
今回は「¥5,000コース」(5,000円・税抜)のメニューから人気の料理を2品ご紹介します。
まず「エゾシカ肉の炭火焼とジャガイモ地元ポルチーニのバター和え」から。
ちょっと気になったのはメニュー名にある“地元”という言葉。ポルチーニといえば、 “世界三大キノコ”のうちの一つとも言われ、トリュフや松茸などと並ぶ高級食材。札幌市内で採れるのでしょうか?
「札幌市は政令指定都市で確かに都会ですが、手付かずの自然が残る土地でもあるんですよ」と太田さん。今朝とれたての立派なポルチーニを見せてくれました。
鹿肉とポルチーニを一緒に口へ運ぶと、炭火の風味が加わることで蝦夷鹿肉の旨味が際立ち、ポルチーニの重厚な味わいと共に口内に広がります。それらをオリジナル和風ソースが上手にまとめて、複雑で豊かな味が生まれてくるのです。
二品目は「エゾシカカリー麺」。道産小麦100%の自家製麺を使い、蝦夷鹿のスネ肉をカレー味に煮込んだものです。
自家製麺は、ラーメンとパスタのいいとこ取りのようなオリジナル麺で、つるつるでモチモチ、かつシコシコと気持ちのよい食感です。カレースパイスが効いた蝦夷鹿のスネ肉は、じっくり煮込まれているためやわらかく、麺とよく絡みます。この麺料理は、コース料理の〆に出すのだそう。カレーと出汁が優しく調和して、ワインをたくさん飲んだあとの〆の一杯には最適。自家製麺は、その日のメニュー構成や季節などによって、太さや形を変えるそうです。
ワインから始まる縁。お客様に育てられた独自の味
オーナーシェフの太田 了光(のりみつ)さんは、1992年からワインバーで3年修行したのち、1995年に独立し8畳間ほどのワインバーをオープン。当時はまだ20歳で、貯金はしていたものの資金が足りず…。そこで太田さんはご両親を説得し、融資してもらってどうにかお店を持つことができたのだそう。
そのころはまだワインバーなんてほとんどなかったことから、お店は意外に繁盛! 常連客の中には一流フレンチレストランのシェフもいて、来るたびに料理を教えてもらっていたそうです。ほかの常連さんの中にもグルマンが数人いて、アドバイスをもらって料理を改良するなど、料理研究や開発に打ち込みました。「それらの方々から料理の奥深さを学ぶことができた」と、自分を育ててくれたお客さんに今でも感謝しているそうです。
自分が目指す料理がどんどん作れるようになり、2010年に中学の同級生である和食料理人の大谷 奈々さんと「マガッツィーノ」を立ち上げました。
「新鮮な素材や食材の部位をどう生かしてどう美味しく食べるかを考えるのは当たり前のことですが、僕にとっての料理はワインを美味しく飲むためのものです」と太田さん。
蝦夷鹿肉を使った料理の提供はいつごろからか伺うと、
「20年前からです。やっぱりワインには欠かせない旨い食材って言ったら蝦夷鹿なんですよね。蝦夷鹿は、さっぱりしているけど旨味と程よい脂のりがありますからね。当時は小さいお店だったけれど、高級レストランと取引しているようなお肉屋さんから仕入れていたので、品質のよい鹿肉を分けてもらえたんです」
長年追求し続けてきたワインとジビエ料理の相性のよさにハマって、通い詰める常連さんも多いとか。コース料理というと気が張るという人も多いかもしれませんが、ワインバーのころから続く変わらない居心地のよさや気軽な雰囲気が「マガッツィーノ」の大きな魅力。札幌訪問の際には、オヨヨ通りの風情を感じながらグラスを傾けてはいかがでしょうか?
Magazzino(マガッツィーノ)
- 住所:北海道札幌市中央区南2条西4丁目 OYOYO VALLEY2F
- TEL:080-9617-5430
- 営業時間:18:00〜22:00(LO21:30)※完全予約制(当日予約は16:00まで)
- 定休日:日・月曜
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※コース料理のスタート時間は厳守をお願いしています
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