山陰の森が育んだジビエを提供する本格イタリア料理店「ペペネーロ イタリア館」鳥取県鳥取市
鳥取県東部、因幡(いなば)地方に位置する鳥取市は、千代川流域に広がる鳥取平野の東側に作られた城下町です。日本海側には鳥取県を代表する観光地である鳥取砂丘が広がっています。中国山地の山々が連なる自然に恵まれた豊かな土地です。
JR鳥取駅から若桜街道を県庁方面にむけて徒歩約10分のところにある「ペペネーロ イタリア館」は、弥生公園の向かいに位置しており、明るい黄色の外壁に映える緑・白・赤のイタリアンカラーが目印です。
こちらのお店は、1980年の11月に創業された鳥取市で一番歴史のあるとされる本格イタリア料理店です。
ステンドグラスの美しい光がきらめく店内では、二代目オーナーシェフである木下 陽平さんを始め、創業者であるお父様の龍雄さんとお母様の和子さんが温かな笑顔で出迎えてくださいます。
創業者である龍雄さんは、もともと大阪のホテルで腕を振るっていましたが、仕事で鳥取県の米子市に訪れた際に、鳥取の豊かな自然に恵まれた食材に魅了され、そのまま鳥取に残ることを決め、27歳の頃に奥様の故郷である鳥取市で本格イタリア料理店を開店しました。
当時の鳥取では、まだイタリアンという概念が定着しておらず、イタリア料理やフランス料理をまとめて洋食と呼んでいた時代だったため注目を浴びたそうです。
二代目オーナーシェフの陽平さんがご両親の営むこのお店で共に働き始めたのが20歳の頃。今ではお父様と二人で力を合わせて「ペペネーロ イタリア館」を営んでおられます。
お店では、日本海でとれる新鮮な海の幸、和牛や地鶏といった上質な畜産物、採れたての有機野菜、そして山陰の森が育んだジビエなどの美味しさにこだわった地元の食材を使った本格イタリア料理をいただくことができます。
今回は、そんなジビエを使った料理を二品ご紹介いただきました。
味わい深い鹿肉にスパイシーなトマトソースがアクセント
さっそく、ランチでも注文が入るという定番の人気メニュー「鹿肉のハンバーグ」(1,100円・税込)を作っていただきました。
「うちの店では、鹿肉100%ではなく鹿肉と豚肉の合い挽きを使用しています。鹿肉は赤身が多く脂身が少ないため、豚肉を加えることでその部分を補うことができるんですよ。後は、豚肉を入れると鹿肉の独特な風味を抑えられるので、ジビエを食べ慣れていない方でも食べやすい味になっています。」と教えていただきました。
ハンバーグを焼く前に全体に細かめのパン粉をまぶすことで、全面に焼き色がきれいにつくだけでなく、ハンバーグの表面がパリッと仕上がります。両面に焼き色を付けた後は、オーブンで中までじっくりと火を通すことで肉汁を中に閉じ込めます。仕上げにジンを使ってフランベすることで風味をプラスします。
色とりどりの付け合わせ野菜が添えられた皿には、スパイスの効いたトマトソースがたっぷりとかけられており、ふっくらと焼きあがったハンバーグが食欲をそそります。
いただいてみると鹿肉の風味が程よく、お肉らしいジューシーさもありながらさっぱりとした味わいで、添えられたトマトソースとよくマッチしています。
アナグマのパンチェッタにぴったりな濃厚なソースが食欲をそそる
続いて紹介するのは、「アナグマのカルボナーラ」(1,800円・税込:時価)です。
今回のカルボナーラに使われるのはなんと、アナグマの自家製パンチェッタです。
通常は豚肉を使って作るのが一般的なパンチェッタですが、それを一番脂がのっている時期に仕入れたアナグマでアレンジして作っているそう。実際に見せていただくと、確かに驚くほど脂身がしっかりとありました。
「イタリアのカルボナーラで使われるチーズは一般的にペコリーノ・ロマーノが多いんですが、うちの店では、ペコリーノ・ロマーノに比べてくせが少なく日本人の口に合うといわれるパルミジャーノ・レッジャーノを使っています。」と手際よく料理をしながら話す陽平さん。
しっかりと炒めたアナグマのパンチェッタにその他の食材やソースを合わせ、茹で上がったパスタと合わせていきます。
濃厚なソースが全体に絡まりぽってりとした見た目の「アナグマのカルボナーラ」は、チーズの香りが食欲をそそります。アナグマのパンチェッタは、口の中で脂身がとけていくのに対して、肉の部分はしっかりした歯ごたえで、噛みしめるとアナグマ特有のパンチの効いた香りを楽しめました。パンチェッタの塩味も、マイルドなカルボナーラとぴったりです。
「アナグマのカルボナーラ」は仕入れ状況によって登場する特別なメニューです。猟師さんの中では、ジビエの中でアナグマが一番美味しいという声もあるそう。
ご来店の際に提供されていたら是非食べてみてほしい一品です。
地元の食材には地元のワインをペアリング
陽平さんは、ワインを扱うならソムリエの資格を取りたいという思いから努力され、5年前(2019年)に見事ソムリエの資格を取得したそうです。店内にはそんな陽平さんの選ぶワインがたくさん取り揃えられています。
そこで陽平さんに今回ご紹介いただいたジビエ料理に合うおすすめのワインを尋ねました。
「イタリアのワインももちろん合いますが、地元のジビエを使った料理なのでぜひ鳥取のワインをペアリングしていただきたいです。トマトソースを使った鹿肉のハンバーグには赤ワイン、パルミジャーノ・レッジャーノを使ったアナグマのカルボナーラには白ワインをおすすめします。」と話す陽平さん。
鳥取県東部にある「兎ッ兎ワイナリー」の赤ワインと白ワインを紹介していただきました。因幡の白兎をモチーフにしたラベルが目を引きます。
今回おすすめしていただいた鹿肉のハンバーグに合わせたい赤ワイン「サペラヴィ2022」は、深みのある香りが特徴で、しっかりとした口当たりに酸味とのバランスがとれた辛口のワインです。もう一方のアナグマのカルボナーラに合わせたい白ワイン「宇部野(うべの)2023」は、芳醇な柑橘系の香りとすっきりとした酸味が印象的な辛口のワインです。こちらは「兎ッ兎ワイナリー」のオリジナル品種「宇部野(うべの)」で醸造されているそうです。
創業当時からの地域の人々に愛されるお店
今回ご紹介いただいたジビエ料理は鹿とアナグマを使ったメニューでしたが、「ペペネーロ イタリア館」では、他にも猪や熊、まれに狸なども仕入れ状況によって登場するそうです。
年中とれるのは鹿と猪で、その他のジビエは捕獲数が少なく珍しいので出会えればラッキー。それも、来店の楽しみの一つですね。
「ジビエ料理は創業当時から提供しているのですが、当時イタリア料理よりも珍しかったので注文する人は少なかったです。しかし、今では県外からジビエを求めて来店するお客様もおられて、全体の1~2割程の方がジビエを注文されています。ジビエを食べることは1つの地域貢献になると思います。食わず嫌いの人にはぜひ一度ジビエ料理を味わってほしいです。」とジビエへの想いを語る陽平さん。
お店では年間を通してジビエのフルコースを提供しており、通常のコース料理の中にも一品はジビエを使用した料理をメニューに組み込んでいるそうです。
料理を食べに訪れるお客様のことを想い、食材や調理法にこだわった本格イタリアンは、地域の人々を夢中にさせ創業から45年となるお店に通い続ける地元のファンもおられます。店内を彩るステンドグラスは創業者である龍雄さんのこだわり。ステンドグラスに反射した美しい光が店内を包み込みクラシックな雰囲気を作り出しています。素敵なこの空間でいつもとは一味違う食事の時間を楽しんでみてはいかかでしょうか?
ぺペネーロ イタリア館
- 公式サイト: https://pepenero-italia.com/
- 住所:鳥取県鳥取市弥生町308-2
- TEL:0857-27-4736
- 営業時間:ランチ11:30~14:00(LO13:50)/ディナー18:00~23:00(LO22:00)
- 定休日:第1・3・5日曜日、第2・4月曜日 ※祝日の場合は翌日
- ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
- 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。