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鹿肉ってこんなに美味しいの!と驚かれた家庭的なジビエが味わえる「猿田彦BASE」三重県鈴鹿市

三重県 カフェ 天ぷら・揚げ物 ハンバーガー カレー シカ
2024.12.19

三重県鈴鹿市といえば「モータースポーツ」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は、鈴鹿市は東に伊勢湾、西に鈴鹿山脈と、自然に恵まれた場所でもあります。その鈴鹿山脈の麓には、「みちひらきの神様」として知られる猿田彦大神(さるたひこおおかみ)の総本宮である椿大神社(つばきおおかみやしろ)が鎮座しています。全国から参拝者が訪れる椿大神社から車で3分ほどの場所、鈴鹿市小岐須町にあるのが、今回紹介する「猿田彦BASE」です。

「猿田彦BASE」は、「空間を楽しむ」「山を味わう」「自然を体験する」という3つの楽しみ方を提供しています。敷地内でキャンプやイベントを楽しめるほか、鈴鹿山脈の恵みをいただくジビエ料理や、観光農園でのブルーベリー収穫体験を楽しむことができます。

作物の大半を失って気づいたのは「この環境にあるものを生かすこと」

代表取締役の伊藤 嘉晃(いとう よしてる)さん(写真中央)は元警察官。「大自然の中でのびのびと働きたい」と、鈴鹿市に移住。2021年に農業法人を設立しました。ブルーベリーや生姜、ニンニクなどを栽培しますが、さまざまな困難に遭遇します。

取得した農地は野菜の栽培には適さない石だらけの土地。「それならば」とハウス栽培を試みたものの、山から吹き下ろされる強風や冬の積雪でハウスは倒壊してしまいました。やっとの思いで育てた生姜も、鹿たちが新芽を一晩で食べつくし、茎だけの状態に…。

「この小岐須町で農業をするのは無理なのではないか」と途方に暮れますが、伊藤さんには強い想いがありました。それは高齢化が進んで地場の産業が衰退し、農地の手入れも山林の整備もままならない状態になっている小岐須町を何とかしたいという想いです。

「私は小岐須という場所を愛しているから、高齢化が進んで限界集落になっていくのではなく、『限界突破集落』にしたかったのです。そのためにはここに産業が必要です。そのとっかかりとしてジビエは地元の資源を生かした産業になり得ると思いました。私たちと同じように、鹿の食害に悩んでいる農家の人たちの役に立つこともできます」

捕獲、解体、調理のすべてを自分の手でできるのが強み

自分たちで捕獲した鹿の肉を使った料理を提供するには、解体処理する施設が必要です。そこで、敷地内にある建物を改築することにしました。クラウドファンディングで改築費用の一部を募り、2023年11月、処理施設「猿田彦山肉工房」がオープンしました。「猿田彦BASE」では、この工房で精肉したものを提供しています。

「猿田彦BASE」で提供される鹿肉は、捕獲から解体処理、加工、調理に至るまで、三重県が独自に定めた厳しい基準を定めたマニュアルに従って取り扱われたものとして、「みえジビエ」の認証を受けています。十分に血抜きされ、捕獲から60分以内に解体されるため、臭みのないのが特徴です。

ジビエの特徴は個体差があること。同じ場所で捕獲された鹿でも、食べたものの違い、年齢の違いなどにより、肉質が違うそうです。

シェフの大竹 英臣(おおたけ ひでおみ)さんは、「自分で捕獲した鹿を実際に自分の手でさばき、肉質を見極めて自分で料理して出すことができる。これが我々の強みですね」と言います。

日常の「家庭料理」として気軽に食べられるジビエ料理を提供したい

提供するメニューのベースになっているのは、大竹さん自身が育ってきた家庭の味です。

「凝った料理になってしまうと、ジビエ料理は『珍しいもの』『敷居の高いもの』になってしまいます。から揚げ、カレーやハンバーガーのように、皆が日常的に食べているもののほうが、ジビエを身近に感じてもらえると考えました」

地元のお祭りでジビエ料理を提供したとき、「鹿肉って、こんなにおいしかったんですね!」と驚き、そのあと店に鹿肉を買いに来てくれるようになったお客様もいるそうです。

「鹿肉は普通の食材として扱えることをもっと広めていきたい。今度はボロネーゼをメニューに加えようと考えています」と、大竹さんはメニュー開発にも余念がありません。

あっさりしているからいくらでも食べられる「鹿肉のから揚げ」

カフェで一番人気のメニューは、「鹿肉のから揚げ」(800円・税込)です。

鹿肉は加熱しすぎると硬くなってしまうので、できるだけ早く火が通るよう、肉は厚さ4~5mmの削ぎ切りにしているそうです。外モモ、内モモ、シンタマの各部位を使っているので、食感の違いも楽しめます。

「鹿肉こそから揚げだなと思いましたね。鹿肉は脂質の少なさが、揚げ物に合います」と大竹さん。味はしっかりしているのにあっさりしていて、いくらでも食べられます。

ご飯にから揚げをのせた「鹿肉から揚げ丼」(1,200円・税込)も人気のメニューです。

ホロホロとした食感の鹿肉がたっぷり味わえる「ジビエ鹿カレー」

スネ肉をメインにバラ、カタを加えてじっくり煮込んだ「ジビエ鹿カレー」(1,000円・税込)は、コンビーフのようなホロホロとした食感が特徴です。

「肉がゴロゴロしているほうが見栄えはいいのですが、スネ肉以外は肉の形を残すと、硬くなって口に残ってしまいます。ホロホロにして完全にルーに溶け込んでいるほうが、おいしく召し上がっていただけると思います」

20人前で1.5kgの肉を使用しているというだけあって、ボリュームもたっぷり。

肉もタマネギも完全にルーに溶け込んでいますが、よく見ると小さな赤い具が見えます。

「それは、パプリカです。少しだけ彩りが欲しいと思って入れました。ニンジンは煮込むうちに溶けてしまいますが、パプリカは形が残ります。そのうえ、香草のような感じも出て、彩りと香りをプラスすることができました」

肉々しさを追い求めたハンバーグが絶品!「ジビエ鹿ハンバーガー」

3品目は、「小岐須バーガー(ジビエ鹿ハンバーガー)」(1,200円・税込)です。

ハンバーグに使うミンチ肉の配合には、試行錯誤を重ねたとのこと。「肉々しさを出したくて、スネ肉を若干入れた」と言うとおり、ジューシーなのにしっかりした歯ごたえがアクセントになっています。

ハンバーガーをひと口頬張ると、ゴロっと厚みのあるハンバーグが、その存在を主張してきます。食べ応えがあり、これひとつでお腹いっぱいになります。

命の循環とストーリーを感じられる場所に

「この鹿の角(写真中央)、枝分かれしたところのひとつが根元から折れてなくなっています。きっと雄同士でケンカをしたときに折れたのでしょうね。こんなところにも、その鹿のストーリーが感じられます」と大竹さん。伊藤さんも「ジビエにはストーリーがある。そのストーリーも含めて味わってもらいたい」と言います。

「猿田彦BASE」では、子どもたちに「命の循環」を考える実体験を提供したいと、「リトル・ハンターズ・マーケット」というイベントを開催しています。プロの指導のもと、実際に山を歩き、罠を仕掛けて獲物を捕らえ、解体して食べるところまで体験します。そのほか、鹿肉を使用した犬用ジャーキーの制作体験や座学を通して、「命の循環」「経済の循環」「社会の仕組み」を学びます。

参加した子どもたちは、目の前にある鹿肉が「ほんの少し前まで生きていた鹿の肉」ということを実感した様子だったそうです。「食べ物や生き方に対する意識が変わった」という感想も寄せられました。

「命をいただくことは生きる力をいただくこと」

美味しいジビエ料理を味わいながら、捕獲から調理まで一貫して行っているシェフやスタッフから、いただいた命のストーリーを聞いてみませんか。「生きる力」が不思議と湧き上がってくることでしょう。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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