ジビエに魅せられたシェフが独学で極めたフレンチに心躍る「idematsu」大阪府大阪市北区

大阪駅や梅田駅界隈の繁華街を指す「大阪キタ」。その中心エリアから東に10分ほど歩いた西天満に、一年を通じてジビエを味わえるお店が2020年10月にオープンしました。フレンチレストラン「idematsu（イデマツ）」では、ジビエに魅せられた出口 泰正シェフが独学で培った、ジビエ料理がおまかせコースで堪能できます。

日が暮れると、窓には料理に向き合うシェフの姿が浮かび上がります。スタイリッシュでありながら、温もりを感じる木製の扉をくぐって中へ。

席はシェフとの距離が近い6席のカウンターのほか、4人掛けのテーブルも。内容はおまかせとあって、どんなジビエ料理に出会えるのかワクワクします。

おまかせのジビエコースで供する、火入れの光る前菜とメイン料理

「ジビエコース」（8,800円・税込）は全6皿で構成。付き出し、前菜2品、魚料理、肉料理、デザートのうち、2～3皿がジビエ料理という設定です。

今回は、そのなかから2品をご用意いただきました。まずは猪肉を使った前菜から。

猪肉は、塩をふったあと乾かして、少し寝かせたものをフライパンでソテーします。さらに、エリンギとキャベツを加えて白ワインで蒸し焼きに。

猪肉は薄めにスライスしていきます。程よく火が通った断面は美しい色目。猪肉は筋肉質なので、加熱しすぎてかたくならないよう意識しているとのこと。

蒸し焼きにした野菜を入れた器にスープを張り、猪肉とレンコンをのせて仕上げます。さっそくいただくと、猪肉は歯切れがよく旨味たっぷり。脂の甘さもじんわりと広がります。

その時々のジビエの骨で出汁をとるスープですが、今回使っているのは鹿、猪、カラス、アナグマ、タヌキ。複数を合わせるからこその、深みのある味わいが醍醐味です。

「猪肉は通年扱っています。前菜のテリーヌに使うこともありますね」と出口シェフ。

次はメイン料理、「鹿肉のロースト」をご紹介。猪肉と同じく塩をふって乾かし、少し寝かせたあと、フライパンで油をかけながらソテーしていきます。鹿肉の状態を見極めながら、火を止めて余熱を利用したり、弱火にして調整。最後は、弾力を確かめてベストな状態かをチェック。

鹿肉ならではの見るからにしっとりとした肉の質感が伝わってきます。ソースは、さまざまなジビエの骨と香味野菜で仕立てたフォン・ド・ジビエがベース。赤ワインやフランボワーズのビネガーを合わせて奥深くほのかに酸味を感じる味わいに仕上げています。

鹿肉は、品を感じるしっとりとした食感と共に力強さを感じる味わいで、香りのいいソースが重なって美味。じっくりと噛みしめながらその余韻に浸ることができます。ソムリエでもあるシェフによると、ワインを合わせるなら熟成感のあるピノノワールやメルローがおすすめとのこと。

鹿肉は、フランスの南部料理のカイエットにして温菜で提供することも。カイエットとは、ミンチ肉を野菜と共に丸めて網脂で包んで焼く料理。おまかせコースだからこそ、訪れるタイミングごとに、出会えるジビエ料理が変わるのも大きな魅力です。

「ジビエ初心者にこそ楽しんでほしい」とジビエの裾野を広げたい思い

出口シェフに、お店で扱う鹿肉と猪肉について伺いました。
「鹿肉は北海道より蝦夷鹿のフレッシュを一頭または半頭で仕入れています。夏の鹿肉も美味しくておすすめです。猪肉は、今回は長崎産のものを使いました。九州のものを好んで使っていますね。脂が美味しいのが気に入っています」。

大学生の時のアルバイトがきっかけで料理の世界へと進んだ出口シェフ。これまで修業したお店ではジビエを扱っていなかったものの、フランス料理について文献に触れるうちにジビエへの興味が高まったそう。ジビエについて調べ、食べ歩き、独学で扱いや調理法を学んできました。

「フレンチと言えばジビエ。数世紀前の本にも登場し、神話のようなレベルで語られているんです。来店される方は、ジビエを日ごろから食べ慣れている層が多いのですが、ジビエに『クセがありそう』などマイナスなイメージを持っている方にこそ、ぜひお召し上がりいただきたいです」

さまざまなジビエ料理に出会える「idematsu」で、出口シェフが素材の持ち味を生かして構成するおまかせコースを味わいませんか？