FOOD STYLE Japan 2024に「ジビエト」がおすすめの6社と共同でブース出展 日本のジビエの現状を語るセミナーも大盛況!
外食・中食・小売業界の垣根を越えた日本最大級の食の商談展示会「FOOD STYLE Japan 2024」(主催:FOOD STYLE Japan 実行委員会)が2024年10月9~10日に東京ビッグサイトで開催され、ジビエトもブース出展とセミナー開催で参加したのでリポートします。
セミナーではジビエを取り巻く話題に飲食関係者も興味津々
「FOOD STYLE Japan」は農林水産省などが後援し、日本各地から約700社の出展者が集結する飲食業界注目の大イベント。会場をびっしりと出展者ブースが埋め尽くし、開幕と同時に大勢の来場者が訪れ、ものすごい熱気です。
そんな中でも一つの目玉が、会期中に会場内で開催される29件ものセミナー。飲食の専門家による貴重な話が聞けるとあって、どのセミナーも大勢が聞きに集まります。
ジビエトも、飲食関係者にジビエを取り巻く現状を広く知っていただこうと、セミナーを企画しました。
【セミナータイトル】
『食文化研究家、ジビエ料理人、処理施設事業者と語る新たな食材「ジビエ」』
【登壇者】
代表畑中三応子氏/オフィスSNOW
食文化研究家・料理本編集者として活躍。これまでにジビエ料理も含めて300冊を超えるレシピ本を手がけている。ジビエ料理コンテスト審査委員。
室田拓人氏/株式会社LATUREオーナーシェフ
複数のフレンチレストランを経て、2016年に表参道にLATURE(ラチュレ)を独立開業。ジビエに関心が深く、狩猟免許も取得。千葉のジビエ”房総ジビエ”の審査委員長。
河戸建樹氏/獣肉解体処理施設 わかさ29工房施設管理責任者
民設民営の「猪鹿庵(じびえあん)」を経て、2016年より公設民営「わかさ29工房」を指定管理施設管理責任者として運営。年間搬入頭数約3000頭を処理。
名越涼氏株式会社/agreee culture代表取締役社長
福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。アナウンサー業の他、農作業着ファッションショーなどの企画や醗酵飲料の商品開発などマルチに活躍。
鳥獣被害対策がきっかけだったが、外国人が日本のジビエを食べにくる新時代へ
セミナーは名越さんを聴き手に、現在の日本では野生動物による年間の農作物被害額が約156億円前後、森林食害面積が約5000haもあり、農家が廃業に追い込まれるなど深刻な影響があることの紹介から始まりました。
畑中さん「日本では野生の鳥獣が増えているのに、捕獲された獣のほとんどが捨てられているのが現状。ヨーロッパでは古くは特権階級が食べる“ごちそう”でしたが…」
室田さん「昔はきちんとした衛生管理がなされていませんでしたけど、今は血抜きや短時間での解体処理もされて、日本でも美味しいジビエが食べられるようになっています。僕の店では健康に気を配っている、美容志向な女性のお客さんが多いです」
名越さん「室田さんはシェフなのにハンターの免許も取っているんですよね?」
室田さん「良い肉を得るには自分で獲るのが早いと思って(笑)。狩って体温を感じる状態で接すると、より美味しく調理してあげないといけないなと思います」
河戸さん「うちの施設は365日稼働し、全頭受入れをしています。猟師さんが血抜きをして搬入したものを50分以内に処理することで細菌が増えにくくて肉質も良くなります。冬は狩猟で、それ以外は檻と罠にかかった獣が搬入されます」
畑中さん「以前は冬しか味わえなかったけど、今は夏も味わえて、季節によって味が違うのもジビエの魅力ね」
名越さん「ジビエをより身近に味わってもらうにはどうしたらいいでしょう?」
室田さん「ハンバーグやミートソースなど、子供たちに人気の料理にして給食で出すと、子供たちの記憶に残って大人になっても食べてもらえるのでは。栄養面で注目するアスリートも多いので、健康や美容面をもっと押し出していくのもいいと思います」
河戸さん「私のところでは鳥取県内のスーパーで生肉を販売する他、外食チェーンにも広げていく活動をしています」
畑中さん「社員食堂もいいわね。私は将来的には、ソーセージにしたりして、牛や豚と同じようにコンビニでいつでもジビエが買えるようになったらいいなと思うの」
室田さん「僕の表参道の店には中国など外国の方がジビエを食べに来るんですよ。寿司や和牛はもう中国にも入ってきているので、日本に来ないと食べられない「ジビエ」を食べたいっていうんです。この先は世界を目指していきたいですね」
河戸さん「外食産業が本格的に扱いだすと、処理施設一つではまかなえません。他の処理施設と連携をするプロジェクトを進めており、需要と供給のバランスを大事に提供していきたいと思います」
登壇者の話はジビエの豊かな将来性を感じさせる内容で、集まった飲食関係者も興味津々で耳を傾けていました。
東北から九州まで選りすぐりの6社が出展
ブースには次の6社が出展。代表的な商品をその場で調理して来場者に試食もしてもらいました。
【出展事業者】
■合同会社MOT(鹿肉加工品、ペットフード / 福井県)
豊かな里山や里海湖に恵まれた福井県若狭町。同社が運営する若狭ジビエ工房では、町在住の若者たちが、若狭町の自然の有効利用に積極的に取り組んでいます。取り扱うのは若狭の自然の山で育った鹿や猪を地元の猟師さんが捕獲したもので、生肉をお客様の要望に応じて、ブロック肉やスライスなどにして提供しています。
■株式会社サンショク<みえジビエ推進協議会>(鹿肉加工品 / 三重県)
三重県から加工処理施設と販売店舗の認定を受けて運営。コンテナ冷凍庫を完備することで一年中、解体施設から買い取れる受け入れ態勢を取り、大量注文に対応しにくいジビエのストックヤード機能も備えています。「鹿肉の味付け焼肉」「鹿肉の味付けミンチ」「鹿肉のハンバーグ」「鹿肉のつみれ」などの加工品を販売。
■MOMIJI株式会社(鹿肉加工品 / 岩手県)
三陸海岸の中央に位置し、北上山系の緑豊かな山林が広がる、海の幸と山の幸に恵まれた岩手県大槌町。北上山地でドングリなど広葉樹の実をたっぷり食べて育ったホンシュウジカは大型で肉も上質。特別講習を受けたハンターたちが鹿にストレスを与えないよう仕留めます。精肉、味付け肉、「しかめし」「大槌鹿のコク旨シチュー缶詰」などの加工品を販売。
■いなばのジビエ推進協議会<わかさ29工房>(鹿肉加工品・缶詰 / 鳥取県)
セミナーにも登壇した河戸建樹さんが運営する工房。鳥取県では10年以上前から食肉処理のガイドラインを定め、鳥取県HACCP(ハザード分析)適合施設に認定された施設で処理されたジビエを「とっとりジビエ」として展開しています。その中でも手軽に楽しめておすすめの商品は「鹿スモーク」「鹿肉の缶詰」「ウィンナー」など。
■合同会社大幸(鹿肉 / 鹿児島県)
日本最大の鶴の渡来地である鹿児島県出水市。鶴と共に渡来してくる鴨の食害がひどいため鴨猟を行ない、鹿や猪、穴熊なども捕獲するようになりました。商標登録ブランドとして大幸鴨、大幸鹿、大幸猪などを扱い、部位別にブロックやミンチで販売しています。鴨は1羽ずつ丁寧に人の手で毛抜きなどを行なっており、ペット用の鹿ジャーキーもあります。
■株式会社ありがとうサービス(ペットフード / 愛媛県)
愛媛県鬼北町でまちの鳥獣被害と誠実に向き合い、生きものの命を通して、ペットや町を笑顔にしたいと、「みんなにやさしい。」ジビエペットフードを作っています。「GIBIEVERY」のブランド名で展開し、低添加/無添加のペットフードとして、ジューシージャーキー、ミンチ生肉、ドライフードを販売しています。
栄養や美容面でジビエに興味を持つ人は年々増加している
ブース出展者に話を聞いてみたところ…。
「ブースでは『大槌鹿寒こうじ漬け』を試食していただいています。塩麹に漬けることでお肉自体が軟らかくなりますし、家で焼いてすぐに食べられるので、ジビエの入口として道の駅などで好評販売中です。一般の方はジビエを食べてみたくても、ブロック肉ではどう食べていいかわからないので、それを解消する工夫が大切なのかなと思います。今は捕獲が間に合わないくらい注文が来ていて、これからは岩手県の他の事業者とも連携して『岩手ジビエ』として盛り上げていきたいです。最近、熊や鹿の被害がメディアで頻繁に取り上げられているせいか、この会場でも皆さんが好意的に試食して話を聞いていただけるので、出展してよかったなと思っています」(MOMIJI・谷田川雅基さん)
「三重県も鳥獣は増えていると思いますね。私が小さい時は鹿や猪を見たことがなかったですけど、今は夜に会社から自宅に帰る時は必ずといっていいほど見ますから。弊社のハンバーグは赤身肉で鉄分やミネラルを多く含んでいることから体育大学の学食や化粧品メーカーの社員食堂などでも使っていただいています。展示会で召し上がっていただいて、ジビエの良さをお話しすると採用につながることが多く、ジビエは年々、関心を持つ方が増えていると感じています。このイベントでたくさん名刺交換もさせていただいたので、ここからまた新たなつながりが始まると思っています」(株式会社サンショク・中野和彦さん)
「弊社は元は牛豚鶏の精肉や加工品を作る会社でしたが、新しいことに取り組んでいきたく、SDGsにも貢献できるのではないかと、ジビエの取り扱いを始めました。今日試食していただいている『鹿肉のハンバーグ』は、地元のスーパーなどで販売したり、ギフトや業務用としても使用していただいています」(株式会社サンショク・関佳人さん)
会場では多くのブースで試食を実施していましたが、中でもジビエは物珍しさもあるのか、ジビエトのブースには特に多くの来場者が試食に立ち寄っており、ジビエに対する関心の高さを肌で感じました。
なお、今回の出展者さんたちには、自社サイトで通信販売などを行なっている事業者さんもあるので、興味のある方はぜひアクセスして、おうちでジビエを楽しんではいかがでしょうか。
FOOD STYLE Japan 2024
- 公式サイト: https://foodstyle.jp/tokyo/
- 開催日:2024年10月9日(水)~10日(木) 10:00〜17:00
- 主催:FOOD STYLE Japan 実行委員会(株式会社イノベント内)