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地元地域の活性化×狩猟ビジネスで、鳥獣被害問題へ挑む「猟師工房ランド」代表 原田祐介

2020.03.30

千葉県君津市に2019年7月に誕生した「猟師工房ランド」。廃校になった旧香木原小学校をリノベーションし、市内で捕獲された野生動物の冷凍肉や加工品、工芸品や狩猟関連商品を販売するショップのほか、バーベキュー場、ソロキャンプ場、ドッグラン、クラフト教室などが利用できます。

そんな猟師工房ランドを運営しているのが、認定鳥獣捕獲等事業者に認定されている株式会社TSJ(本社:奈良県奈良市)の専務取締役・原田祐介さん。

「ここは千葉県君津市が実施する旧香木原小学校跡地の利活用事業として、昭和63年に閉校になった校舎やグランドを利用しています。その目的は鳥獣被害問題解決と廃校リノベーションによる中山間地域の活性化です」。

現在、君津市内各所に罠を仕かけて自分たちで猪や鹿を捕獲するだけでなく、地元の猟師、農家と協力して、捕獲個体を効率よく自社で運営する施設に持ち込める仕組みを作りました。

駆除した獣を無駄にしないための取り組み

「猪や鹿を駆除したとしても、使い道がなければそのまま山に捨ててしまう。山に獣を捨てるとどうなるか。共食いするんですね。肉は栄養価が高いので、食べた獣は繁殖力が上がり、子供が増える。鳥獣被害が悪化するんです」。

だから、駆除した獣をきちんと処理することが大切。そしてそのためには、「ビジネスとして狩猟を成立させなければならない」と原田さんは語ります。

そこで害獣駆除に協力してくれる猟師には補助金が得られるように、持ち込まれたものは自分たちで解体処理をして利活用できる食肉処理施設を整えたそう。

そうして処理をされた食肉は、部位ごとにブロック肉やソーセージなどの加工品として「猟師工房ランド」で販売、訪れた人は誰でも購入ができます。

ランド内には、鹿の骨を使ったキーホルダー作り体験ができるコーナーも。

駆除した鳥獣を100%利活用する

実は原田さん、以前は狩猟やジビエとは無関係な外資系アパレル会社に勤務していて、唯一の趣味が狩猟だったそう。退職後、林業に取り組もうと樵(きこり)の修業をし、埼玉県の飯能で事業を始めましたが、軌道に乗せるのは難しかったとのこと。そんな折、埼玉県よりも千葉県で鳥獣被害がひどいことを知り、君津市から地方創生交付金を受けて、さまざまなプロジェクトに取り組むようになったと言います。

その一つが「君津市狩猟ビジネス学校」。君津市から事業委託を受け、狩猟の知識・技術・狩猟ビジネスを学ぶ場として、実習および講義を年間全10回開校しています。「現在、害獣駆除を行っているのは高齢者が中心で、若手事業者を育てることが必要なんです」と原田さん。

また、高校生を対象に鳥獣被害の現状やジビエ、命をいただくということなどについて、わかりやすく伝える「命の授業」を実施。さらに「ちびっこ猟師プロジェクト」として、志願してきた子供たち5名に狩猟に必要な知識やスキルを教えているそう。

依頼を受ければ、小学生に猪や鹿の生態などをボランティアでレクチャーすることも。

「それから君津市では様々な名産品が生産されており、例えば、綺麗な水と豊かに育ったお米を使った日本酒が生産されています。そこで大量に廃棄される酒粕とジビエを組み合わせた“捨てちゃうもの×捨てちゃうもの=美味しいものプロジェクト”を開始。地元酒造メーカーさんの協力のもと、ジビエを利用した新たな商品開発なども行っています」。

実に多岐にわたるプロジェクトだが、原田さんは「最終目的は一つ」と断言します。

それは駆除した鳥獣を100%利活用すること。

肉、革、骨などを食肉や加工品として、余すところなく利用する。そのためには、ジビエの新たな流通網を作ること、そして狩猟をビジネスとして成り立たせることが必要だと。「君津市狩猟ビジネス学校」が単なる“狩猟学校”ではなく、“ビジネス”を含んだ名称であるのには、原田さんのそんな思いがこめられているのでしょう。2年後には奈良県宇陀市に新たな食肉処理施設をオープンさせ、年間1,700頭の処理が可能になる予定です。

「猟師工房ランド」や「君津市狩猟ビジネス学校」は、原田さんの大きな目標の中のほんの一部。今後の事業展開も楽しみにしたいと思います。

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