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人がいいお肉を作る。職人チーム、古座川「山の光工房」の秘密

和歌山
2019.02.14

クセがなく、赤身肉ならではの旨みがあふれ、後味は意外なほどさっぱり。今までのジビエのイメージに付きまとう、独特の獣臭さはみじんも感じられず、生の肉に鼻を近づけても、嫌な臭いはまったくなし。紀伊半島南部にある和歌山・古座川町の逸品、「古座川ジビエ」の肉は別格のおいしさを誇ります。

その秘密の一つが、2015年4月に古座川町内にオープンした、食肉処理加工施設「山の光工房」。そして同施設を中心に、細やかに組み上げられたジビエの処理加工、管理体制にあります。

「こういった施設の要望は、15年ぐらい前から、各方面から寄せられていました」と、古座川町地域振興課・細井孝哲さんは話します。同時期から増え始めた、鹿や猪などによる農作物への被害の対策として捕獲が促進されるなかで、特に猟師からの声が数多くあったと言います。

「古座川は年間、鹿と猪を合わせ、1300頭ほどが捕獲されています。それまでは、捕獲された鹿や猪は猟師さんが家庭で食べる以外は消費されず、ほとんど山の中に埋設されていた状況がありました。猟師さんたちは、誰よりも命の重さを知っている方々です。猟師小屋では捕獲の後、神棚に手を合わせ、お酒を回し飲み、『いただきます』と声に出し、祈る伝統が今でも受け継がれています。農業被害などのために捕獲するのは良いが、埋設するだけでは自分たちも心が痛む、と嘆かれていた方も多くいました」(細井さん)。

また、観光資源としてのジビエ肉の力にも期待が多く集まっていたそう。10年ほど前から施設建設のプロジェクトは動き始め、全国各地の同様の施設を視察し、国内最高水準の高い管理基準を達成するために、最新設備を整備。

肉の形にする流れも、非常にシステマティックでスムーズ。猟師からは、捕獲されてから2時間以内の鹿や猪のみを運び入れるようにしてもらい、施設内で即座に毛皮や内臓などを取り除く1次処理を施して枝肉の状態にし、熟成庫へ。旨み成分を引き出した後、「背ロース」や「外モモ」など、細かな部位に切り分ける2次処理を行い、真空パック後、マイナス30℃のアルコール液で瞬間凍結。鮮度が高く、安全な肉を提供しています。

ここで処理された鹿の精肉は、ブランドジビエ「金もみじ」として主に都心のフレンチ、イタリアン、最近はスペイン料理や日本料理のレストランに卸され、高い評価を受けています。また、「里山のジビエバーガー」など地元のレストランで提供されるメニューの素材にもなり、人気を集めています。

最高のジビエを送り出す環境を実現しているのは、やはり「人」。熟練の猟師によるハンティング、元料理人や畜産系の大学出身者など高い技術を持つ職人による解体・加工、観光学科で学んだスタッフによる商品企画やPR、そしてこだわりを持った料理人の協力など、優れたチームワークにより「山の光工房」の万全の体制が維持されています。

「最近ではカフェやバーなど、本格的な調理施設を持たないお店でも提供できるような、ジビエ肉の加工品の商品化をしています」と、細井さん。ジビエの新たな魅力を発信する「山の光工房」。今後の「古座川ジビエ」の展開がますます楽しみです。