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世界を渡り歩くスゴ腕料理人が太鼓判!日本ジビエの豊かな味わい

ハンバーグ 和食
2020.03.31

「日本のジビエは世界に誇れるおいしさだと思います。シンプルに調理してこれほどの味になるのは世界で唯一でしょう。帰国して初めて日本の鹿や猪を食べた時、『なにこれ!? めっちゃおいしいやん!』と驚きました」

そう話すのは、日本や海外で料理人として腕を振るい、ジビエ料理の専門家としても活躍する「Nook’s Kitchen(ヌックス キッチン)」主宰の西村直子さん。予約がとれないジビエレストランを手がけた名シェフとしても知られ、日本のジビエシーンで最も注目を集めるキーパーソンの一人です。

西村さんは20歳の時から世界60カ国を訪問。ニュージーランドでは調理師としてレストランに勤務し、料理教室の講師も経験し、12年間生活していました。2008年に帰国し、故郷の高知県に戻り、大ヒット商品「シカドッグ」を開発したり、多くのメディアにも取り上げられ話題を集めた「四国ジビエグルメフェスタ」を企画・開催したりなどパワフルに活動。

2014年には高知市内にジビエ料理専門店「Nook’s Kitchen」を3年間限定でオープン。世界各国で身につけた食の知識と調理の技術を生かしたジビエ料理が人気を呼び、連日予約で満席。一方で同時期の2011~15年、西村さんは毎年ヨーロッパへ渡り、ジビエの最新動向も調査していました。

2017年末に惜しまれつつもお店を閉め、現在は、高知県香美市香北町に拠点を移し、物部川の近くにあり祖父母が和菓子店を営んでいた、大正時代建造の古民家で田舎暮らしをしながら、主な事業として「ジビエビジネスアカデミー(G-B-A)」をスタート。ジビエをビジネスとして成功させるためのノウハウを、飲食店の経営者や料理人などに教えることで、全国のジビエに携わる人たちの事業や周辺地域を盛り上げ、地域活性化や食害問題解決を目指しています。

 

 

世界随一の高品質ジビエ

そんな西村さんが鹿肉の魅力を深く知ったのは、ニュージーランドでのことだそう。

 

「ニュージーランドでは鹿肉は家畜化されていて、一大産業です。鹿肉は晴れの日にレストランで食べるお肉で、牛フィレと1,2を争うほど人気でした。そもそも向こうの鹿はアカシカという、日本のニホンジカと異なる種類で、体格が大きくて肉の量も多く、肉質はややねっとりとしているような印象です。それが鹿のスタンダードだと思っていたところ、日本に帰ってきて鹿肉を食べたら、ものすごくおいしかった! 種類の違いもあるけれど、野生の鹿で、コンディションが良い状態の肉はサクサクした食感だし、お魚と同じで天然ものはこんなに違うのかと驚きました。野山を自由に駆け回り、木の実や果物などの好きなエサを食べ、ストレスなく健康に育ったジビエは肉が程よく締まり、でも硬いわけではない。肉そのものがおいしく、多彩な調理法に使えます」

一方で、その時に西村さんが感じたのは、鹿や猪肉を食べる文化が、西村さんが旅し、暮らしてきた海外の国々ほど日本では成熟していないこと。実際、良い鹿や猪の肉が手に入っても、調理の仕方がわからない人は多い。

「たとえば、ロースなど本来はステーキに適した部位を煮込みに使い、パサパサになってしまうなど、最初の出会いでジビエに対して悪い印象を持つ人も少なくないです。『あ、みんな食べ方を知らないんだな』と思ったことが、日本でのジビエの仕事に面白さを見出したきっかけのひとつです。あと、料理人としては、やはり日本のジビエのフレッシュな肉質が興味深い。日本の鹿や猪は加工施設で適切に処理されるのが大前提。この食の衛生的な意識の高さは、世界でも日本が随一でしょう。新鮮な食材を適切に調理し食す、私たちの和食文化に合わせたレベルで、ジビエも処理がされているということです。だから海外のジビエとは全く別物だと思います。もちろん、きちんとした加工施設から購入するなどした品質が良い鹿・猪肉に限りますが、凝った濃厚なソースを使ったり、複雑な調味料で煮込んだりする必要はなく、シンプルに塩で味付けし、焼いたり煮たりして食べていい。それが日本のジビエなんです」

 

シンプルな味付けで家庭でも手軽に調理できる!

日本の鹿や猪の肉は、肉自体の味が伝わるようなシンプルな調理法を心がけ、味付けは塩のみが基本という西村さん。そこで家庭でもできる簡単な料理を教えていただきました。おすすめの一つが、「鹿のアヒージョ」。

 

「日持ちもするし、ちょっとしたホームパーティーにもぴったりです。お店でも大人気のメニューでした。肩肉はロースなどに比べて手頃ですが、この調理法に最適な部位で、程よく筋が入ってかみ応えもあり、旨みがたっぷり。私はアヒージョをスペインで現地のおばちゃんに習ったんですが、アヒージョは元々は肉を使う料理なんですよ。そして、おばちゃんに伝授してもらった最大のコツは、肉を必ず4日間以上、塩で漬け込むこと」

作り方は、ひと口大に切った鹿の肩肉と、つぶしたニンニク、オレガノ、パプリカ粉末、オイルを適量、用意(西村さんのおすすめはクセがなく冷やしても固まらないグレープシードオイル)。鹿肉に塩をまぶし、ニンニク、オレガノ、パプリカ粉末と和えて、オイルに浸して密封容器に入れ、冷蔵庫で4日間以上、寝かせておきます。

 

「重要なのが塩の量です。アヒージョは鹿肉の重量に対して2%の量の塩がベストと、試行錯誤の末に見出しました。ハンバーグやポトフなど他の料理でも塩漬けや塩で和えるテクニックは使いますが、こうすることで肉の旨みを凝縮し、程良く締まって食感も良くなり、肉の色合いもきれいになります」

 

アヒージョは保存容器の中でも空気が入らないように、クッキングペーパーを落し蓋のように施すこと。このように密閉して保存できるなら1週間寝かせることも可能だそう。

 

「後はこの鹿肉を、食べたい時に保存容器から取り出し、スキレットなどに入れて適量のオリーブオイルを注いで加熱するだけでOKです。他の具材は、シイタケなどのキノコ類やジャガイモ、皮つきのニンジン、トマトなどがぴったり。卵を落とすと、なおおいしいですよ。密封容器はガラス製などの熱を加えられるものだとさらに便利で、容器のままオーブンで150℃ぐらいで30分ほど熱すると、アヒージョのもとになる鹿肉は完成し、容器のまま保存しておくこともできます。既に火が入っているので、作り置きしておけば時短にもなります」

 

アヒージョの鹿肉は嚙むほどに旨みがジュワッと染み出し、キノコや野菜などとの相性も抜群。鹿肉やニンニクの風味が溶けたオイルと、半熟の卵をパンに絡ませて食べると、思わず無言になるほどのおいしさです。

2品目のおすすめメニューは、「鹿と猪のハンバーグ」。加工施設などでも一般的に購入できる鹿肉のミンチに、猪のバラ肉を包丁で叩いて粗く刻み、混ぜ合わせて作るハンバーグで、なんと肉の調味料は塩のみ。

「お肉自体にしっかりとした味があるから塩で十分なんです。鹿と猪の割合は2:1から3:2ぐらいで、お好みで。猪は豚バラ肉でも代用できますよ。塩で肉が締まるので、つなぎがなくても固まります。ハンバーグの塩の量は、全体の肉の量に対して1%に。混ぜ合わせて成形したら、後は焼くだけです。強火で表と裏に焼き目をつけますが、表面が焼き固まるまでは絶対に触らないこと。何度もひっくり返すと、肉汁が流れ出て失敗します。両面が焼けたらオーブンへ。家庭用のオーブンなら210~220℃ぐらいで10~15分ほど加熱。これでハンバーグ自体は完成なので、あとは付け合わせに野菜を添えたり、おろしポン酢をかけたりなどしてどうぞ」

西村さんはハンバーグの下にローストした野菜を敷き、上に優しい風味の野菜のチャツネとマスタードをのせてアレンジ。早速試食させていただくと、ハンバーグは肉のごろっとした食感と、鹿の赤身由来の旨み、猪の脂が程よく感じられ、ジューシー感も格別。箸が止まらなくなる旨さです。

 

鹿・猪は貴重な資源!ジビエの食文化を育む

3品目は「鹿もも肉のポトフ」。こちらも鹿肉を塩で一晩漬け込むのがポイントです。

「食べ応えのあるサイズにもも肉をカットしたら、肉の量の3%の塩を和え、密封容器に入れて冷蔵庫で保存しましょう。3%と濃いめなのは、ポトフのスープに塩の味が溶け出すため。味付けは基本的にこれだけです。あと、できれば骨付きの鹿のすね肉や、鹿の骨などをカットして一緒に煮込むと、スープに骨髄から旨みが溶け出し、ぐっと深みが出るので、ぜひ用意してほしいですね。もちろん購入できる加工施設もあります」

 

一晩を経て鹿のもも肉の下ごしらえができたら、いよいよポトフ作りに。鍋につぶしたニンニクを入れ、オイルを加えて香りが出るまで、焦げないように火を入れ、その後、ざっくりと食べやすいサイズに切ったセロリや玉ねぎ、にんじんなどを順に加え、軽く炒めます。油が周り、火が通ったら白ワインを加えて煮詰め、野菜の分量の2倍程度の水を加えて煮込み始めます。

 

「沸騰したら鹿肉を加えます。ここからがこのポトフで最も大切なポイントで、絶対にグツグツと沸騰させないこと。沸騰させるとスープが濁り、荒々しい雑味が感じられるようになってしまいます。アクを取りつつ、弱火で優しくコトコト煮るのが肝心。1時間ぐらい煮込んだら、ジャガイモを加え、火が通ったら最後にキャベツを入れましょう。味をみて、足りなかったら塩を少し加える。でも基本的に肉の下味の塩で十分だと思います」

パセリを振って完成したポトフをいただくと、ごろっと入った鹿のもも肉はサクッと心地良い嚙み心地で、旨みもたっぷり。何より、鹿と野菜の風味が溶け込んだスープの味わいがどこまで優しく、滋味豊かで、西村さんが「このポトフは澄んだスープのおいしさを味わう料理」というのが良くわかります。

他にも、塩で和えて寝かせた肉を使った「鹿と猪肉の炭火串焼き」や、「鹿肉のコロコロステーキ」など、多彩な料理を作っていただきました。西村さんが作るジビエ理はどれも手順は簡単で、シンプルな味付けと調理法なものばかりなのに絶品の味わい。ジビエの肉のおいしさがダイレクトに伝わり、満足度も満点です。

「鹿や猪は、確かに農業被害をもたらす面もありますが、一方で、こんなにもおいしい食材、つまり貴重な資源でもあるんです。地元のレストランがおいしい料理として出すことで、食材の供給先である加工施設はもちろん、周辺の宿泊や観光施設も、さらに地域の経済も盛り上がります。多くの人に鹿や猪が資源であることを考えながら、上手な付き合い方、扱い方を知ってもらい、日本各地にジビエが食文化として根付いたらうれしいですね」

 

 

<西村さんサイト情報>

Nook’s Kitchen(ヌックス キッチン)

https://www.nookskitchen.com/

https://www.facebook.com/nookskitchen

 

 

 

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