レストラン、ショップを探す
レストラン

自然素材にこだわり創り上げたジビエファンの楽園「聚楽 創」富山県富山市

富山県 ステーキ・バーベキュー 創作料理 シカ クマ ランチ
2021.03.04

JR富山駅から富山市バスで八尾鏡町行きに乗り、約1時間。「おわら風の盆」で有名な旧八尾町に入ります。

バス停「東町」で、八尾コミュニティバス大長谷線に乗り換え、国道472号線をどんどん山奥に向かっていくと約20分で「正間(まさま)」に到着。こちらで下車すると、今回紹介する「聚楽 創(じゅらく そう)」(以下、ジュラクソウ)が目の前にあります。

富山の最奥、心休まる山小屋風の料理店

訪れたのは、ちょうど2020年12月に北陸の大雪が降り始めた日の午後。すでに30cmほど雪が積もり、辺りは一面の銀世界です。

真っ白な雪の中に山小屋風のお店がポツンとたたずんでいる、どこか幻想的な景色に見とれながら、鹿の角にかけられたのれんをくぐります。

コートに付いた雪を払って扉を開けると、薪ストーブの炎が揺れながら店内を温かく照らしていました。

テーブル席3つに、カウンター、小上がりと、店内も山小屋風の素朴な落ち着いた雰囲気です。

迎えてくれたのは、店主の井上 暁(あきら)さんと裕子さんご夫婦。横浜の中華街や、富山県のホテルなどで腕を奮ってきたご主人が、1996年に故郷でもあるこの地区で初めての飲食店を作ろうと開業したのが「ジュラクソウ」の始まりでした。裕子さんは調理師免許を取得し、ご主人のサポートをしています。

「ジュラクソウ」のこだわりは、うま味調味料や添加物をいっさい使わないこと。健康のためでもありますが、「なによりも自然なものの味が一番美味しい。そういう素材を使っているから、素材の味を引き立てる程度に、調味料はほんの少しだけ」とご主人。

食材も無農薬、新鮮さを追求し、野菜のほとんどが近くの畑で育てたものです。岩魚料理は、近くの山の湧き水で育ったので刺身も提供できます。ジビエも地元で獲れた自然食材という観点から創業時より提供しています。

旬のジビエの美味しさを心ゆくまで堪能できる豊富なメニュー

ジビエ目当てのファンも多く、鹿・猪・熊肉の鍋料理からラーメン、カツなど幅広いジビエメニューが目を引きます。前菜から〆のラーメンまでジビエでの提供が可能とは、ジビエ好きには“楽園”ですね。

今回はその中から、鹿と熊の人気メニューをご紹介します。

一品目の「シカチャーシューと昆布締め」は、2名以上で要予約の「ジビエセット」(3,300円・税込)と「ジビエコース」(5,000円・税込)の共通メニューです。

チャーシューには自家製玉ネギの中華風ネギソースが添えられています。1枚をひと口で一気に頬張ると、鹿肉のあっさりした旨味が焼き目の香ばしさと一緒に心地よく広がり、タレの酸味がそれを引き立ててくれます。

昆布締めは、肉に火を通してから昆布で締めています。こちらは山わさびでいただきます。昆布からじっくりと染み出したほのかな甘味と鹿肉は相性よく上品にまとまっています。そこにわさびの鮮烈な香りが加わって、やわらかな旨味をキリッと引き締め、気持ちよい余韻を残していきます。これらはお酒の肴にもぴったりです。

二品目の「鹿肉ステーキ」(1,870円・税込)は、丁寧に焼かれた鹿肉と無添加ソースに、自家製のブロッコリーやニンジンが添えられています。ご夫婦で丹精込めて育てた野菜は本当に色鮮やか。まるで野菜たちが里山の土の豊かさを物語っているようです。

鹿肉の焼き加減も言うことなしです。旨味と香ばしさが感じられ、上質な赤身ステーキになっています。

次の料理を待っている間、裕子さんが「熊の手」を見せてくださいました。中華料理では最高級食材のひとつで、「熊の手姿蒸し」は時価(15,000円〜)で1週間ほど前に事前予約が必要です。※写真は調理前のもの

最後に紹介するのは、寒い時期に一番の人気メニュー「熊鍋定食」(2,200円・税込)です。

この辺りで捕れるジビエで一番旨いのは熊だとご主人。お肉を見せていただくと、脂がたくさんのった立派な熊肉です。

今から20年ほど前に、知り合いの猟師さんから「食べてみられ」(※富山弁で「食べてごらん」の意)と言われて、たいへん美味しかったことからメニューに取り入れることにしたんだそう。
「ジビエは料理のアイデアがいろいろ浮かぶんで、うちにはジビエメニューがたくさんあります。個人的には、熊肉と鹿肉が好きですね。この辺りで捕れる熊の肉は脂がしっかりあり、でもサラッと溶けていくところが美味しい。鹿肉はしつこくない味が気に入っています」

ジビエについて思うことは?との質問に、
「自分が狩りをするわけではないけれど、命を扱うんだから美味しく作って食すことが一番の供養だと思っています」

煮えるのを待っていると、出汁に熊肉の脂がじわじわと、たっぷりと染み出していきます。一緒に煮込まれる大きな原木ナメコや野菜の旨味も加わり、出汁がどんどん美味しくなっているのだろうと想像すると、待ちきれません。

「熊鍋定食」には、ご飯と自家栽培した野菜の漬物、小鉢が付いてきます。

「これも全部塩だけで漬けた漬物なんよ」と、裕子さん。富山県名物の赤カブは、家庭によって味付けがそれぞれ違います。裕子さんが雪をかき分けて採った野菜はとっても甘く、優しい塩味が心にじんわりと染みていきます。

熊肉は濃厚で豊潤な甘味たっぷり。 肉汁があふれ出してきて、口の中の温度でもトロトロに…。これは美味!
「ここらの山は木の実もたくさんなっているから、それを食べる熊もよく肥えて美味しくなるんですよ」とご主人。
確かに、この甘味はいろいろな自然の木の実や果実が凝縮されたような、例えるなら複雑なフレンチソースが最初から肉に織り込まれているような風味です。それをシンプルな無添加の出汁が優しく包んでいます。

遠方からのファンも虜にする土地の味の魅力

あっという間に肉を平らげてしまったところへ、ご飯を投入し、〆のおじやを作ります。出汁の染み込んだご飯が、熊肉の脂と肉汁をまとってツヤツヤです。白菜と一緒に口へかき込むとあふれる旨味に、お腹も心も大満足。

自然のものをその土地で食べることのよさに、改めて気付かせていただきました。

すっかり満腹で温まったころ、外は雪が降り続き、到着時からさらに15cmほども雪が積もっていました。この時期に来るのは少し大変かもしれませんが、毎年、季節のジビエ料理を楽しみに遠方から来てくれるお客さんも多いというのもうなずけます。ジビエ好きならずとも、おふたりが生み出す飾らない自然の味は、一度食べに行く価値は十分あります。きっと、「来てよかった」「この道中と景色も味の一部なんだなぁ」と、思い出の味になることでしょう。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
続きを見る

エリアからジビエ料理のレストランを探す