ジビエト×NPO法人チルドリンによる初の親子ジビエイベント「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」を開催!子どもから大人までジビエを知り・食す楽しい一日に
「家族でジビエを楽しく学ぶ」というコンセプトのもと、1月18日、横浜市開港記念会館で「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」が、2025年1月18日(土)に開催されました。未就学児から小学生の親子を中心に約200名が参加したイベントをレポートします。

森の動物クイズや紙芝居のステージ
土曜日に開催された「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」ではお父さんやお母さんと一緒に家族で参加している方が多くいました。中でもステージで行われた、森の動物クイズや紙芝居は、小さいお子さんも多く参加していました。

登壇した鵜沼明香里さんは、鹿解体師でありながら、ジビエ料理人、そして保育士の資格を有し、イラストレーターとしても活動しているマルチプレイヤー。何が始まるのか少し緊張気味の子どもたちの前で、まずは楽しく動物クイズ。動物のイラストを掲げ「この動物は何でしょう?」と質問をすると、手をあげる子どもたち。マイクを向けると「ウサギ!」「イノシシ!」と元気に答える子、「シマウマ?」「キリン…」と恥ずかしそうに答える子。鵜沼さんクイズを進めていくうちに、子どもたちはみんな笑顔になっていきます。いつの間にか緊張した様子もほぐれ、次は紙芝居「昔から日本に暮らす動物たち」が始まりました。

「牛や豚などを食べるようになった歴史はそれほど古くはなく、縄文時代から人間が食べていた肉は鹿や猪が中心でした。この時代、狩猟した鹿や猪の肉を食べるだけではなく、毛皮を傘や敷物にしたり、靴や兜の裏地に活用していました。また骨は釣り針や槍にするなど、殺めた生き物を余すことなく活用していたそうです」と鵜沼さんがジビエの歴史について話します。また、「鹿は夏と冬では毛皮の柄が違うことは知っていますか。夏はバンビのような斑点柄、冬はねずみ色のようになります。これは、山に暮らす鹿が敵から身を守るためのカモフラージュで、夏は木漏れ日、冬は落ち葉の色味に馴染むような色になると言われています」などといった豆知識も数多く教えてくれました。
子どもたちは集中して紙芝居を見入っていて、日本に暮らす野生動物について学んでしました。
その後の鵜沼さんへの質問コーナーでは、ジビエの流通問題や美味しいジビエの見分け方、鵜沼さんのジビエで好きな料理についてなど多くの質問があがり、予定時間を上回る大盛況のステージとなりました。
山に暮らす動物の生態も知れた、アップサイクルブランド「Recovery and Reload」によるトークショー「小田原の新しいジビエのかたち」

次に行われたステージは、猟銃免許等を有し、一般社団法人全日本鹿協会の評議員であり、自身のアップサイクルブランド「Recovery and Reload」の代表を務める宮本亮さんと、宮本さんの弟子として鳥獣の捕獲・解体を行う傍ら、ジビエの出張料理なども行う栗原すみれさんによるトークショー。
まず最初に宮本さんから参加者に「今日このイベントが終わり、家に帰って家族で食事をするときに、号令としての『いただきます』ではなく、肉をはじめ食するすべてのものの命をいただくという感謝の意味を込めて『いただきます』と言ってもらえたら」とメッセージがありました。この意味を感じさせる宮本さんと栗原さんの興味深いお話が始まりました。

全国に772か所のジビエ解体処理施設(2024年時点)があり、神奈川県には5か所、そのうちの1つである小田原市役所の前にある解体施設で宮本さんと栗原さんは、小田原周辺で捕獲したジビエの解体をしているそうです。小田原の街から箱根に抜ける林道付近に150~200個近くのくくり罠を仕掛けており、今回はその仕掛け近くに設置している「トレイルカメラ」に映った動物の様子を動画とともに紹介してくれました。
鹿、猪、ハクビシンなど様々な生き物の生態を知る

くくり罠を紹介する栗原すみれさん
「トレイルカメラ」は、センサーが付いていて、動くものに反応して作動し、自動で録画してくれるのだそう。そこには様々な動物たちの様子が映っていました。
鹿の大好物である「アオキ」という木の葉を親子でぱくぱくと食べる様子、雌よりも大きな体格で角がしっかりと生えた雄鹿が歩く姿。ハクビシンや猪など、普段は見ることのできない野生動物たちの動く姿が次々と映し出され、参加した皆さんは真剣に見入っていました。映像とともに、宮本さんが「雄鹿は角の形でだいたいの年齢がわかる一方、雌鹿の年齢は、研究機関で歯を調べることによってわかります」「猪は頭が良くて鼻が利くため、山で育てたタケノコが一番おいしいタイミングがわかり、人が収穫する目前に掘って先に食べてしまいます。これでは、農家が何のために育てたのかわからなくなってしまう」など、動物の生態、動物による農作物被害についてわかりやすく解説してくれました。
農作物被害を解決するために行う捕獲活動。その捕獲方法などについてもより詳しく教えてくれました。
「ハクビシンは甘いものが好きなので、バナナを仕掛けたり、タヌキは押し麦を好むので、押し麦を置きます。動物たちは主にくくり罠で捕獲していますが、例えば雨などにより泥土が罠の上にかかってしまうと、その分、高さが上がってしまい、動物の足が罠の上に乗っても反応しなかったり、罠がひづめのあたりでくくられ、擦り抜けてしまうことがあります。そのため、定期的な点検とメンテナンスが必要になります」と宮本さん。
会場では、実際に使っているくくり罠に鹿の足に見立てた棒を乗せて、罠が作動する様子を実演してくれました。普段は見ることのできないくくり罠の実演に、後方に座っていた方たちは立ち上がって覗き込むほど、皆さん興味深々の様子でした。
殺めた命はすべて大切に活用する

農家などに被害をもたらす鹿や猪ですが、大切な命であることに変わりはなく、肉を食すだけではなく、骨や皮まですべてを活用することで命を無駄にしないと考えている宮本さん。「Recovery and Reload」では、子どもも参加できるように、針を使わないジビエレザーのクラフトができる「ジビエワークショップ」を開催したり、猪の毛皮で作った名刺入れやキャッシュトレーなどを販売する「ジビエレザー事業」、また鹿の頭蓋骨を使った「スカルトロフィー事業」や、毛皮を活用した「ファーワイルド事業」など、ブランドコンセプトである「Recovery=回復」「Reload=更新・再生」を様々な事業を通して行っているそうです。
栄養満点、美容と健康を意識するならジビエが最適
宮本さんと活動する栗原すみれさんは、調理の専門学校を卒業後、フレンチの鉄板料理店で働いたのち、ジビエの世界へ進んだそうです。料理の知識も豊富な栗原さんからは、ジビエの栄養についてのお話がありました。
「鹿肉は、タンパク質が豊富で、低脂質・低カロリーでさっぱりとした赤身のお肉です。肌や髪の再生に必要であり、代謝を上げる効果があるビタミンB2・B6がたくさん含まれているので、免疫力が上がりやすいと言われています。さらに鉄分や葉酸も多いため、妊婦さんやお子さんにも食べてもらいたいと思います。猪肉はタンパク質や脂質、カロリーは豚肉と同様なのですが、鹿肉同様ビタミンB群と鉄分が非常に豊富です。ストレス過多、疲れ気味な人、偏食・飲酒や喫煙をする人は日常的にビタミンB群が不足しがちなので、ジビエを積極的に取り入れてほしいです」と栗原さん。
会場には、乳児を連れているお母さんの姿も見られ、栄養面でのお話にも関心が集まっていました。
最後に行われた質問タイムでは、ジビエはどこで買えるのかといった質問が。宮本さんから「ジビエの安定供給は現在のところ難しい面もあり、スーパーなどに並ぶことはあまりないのですが、ジビエ専門のインターネット通信販売や小田原の解体所でソーセージなどジビエの加工品が販売されています。またふるさと納税の返礼品としてもジビエがあるので、こうしたところで入手してもらえたらと思います」とお話がありました。
そのほか、童謡歌手・井上かおりさんによる「みんなでうたおう!森のなかまたち」のステージもあり、お子さんが一緒に口ずさむなど、リラックスした雰囲気の会場となっていました。

ジビエ満載のランチBOXや猪キーマカレーも!ジビエの美味しさに触れる試食コーナー

会場の1階ステージで様々なイベントが行われている一方、2階には、実際にジビエを食べることができる試食コーナーがありました。
多くの参加者たちがTSUBAKI食堂の椿直樹シェフが提供するランチBOXや丹沢ジビエを使った猪キーマカレーを受け取り、美味しそうに食べていました。ランチBOXの中には、鹿肉のハンバーガー2つと猪肉のミニコロッケ2つ、また開催地である横浜の新鮮野菜のサラダが入り、ジビエの魅力と横浜の地産地消が「食」を通して体験できる、美味しい機会となりました。

家族3人で参加していた方に感想を伺ったところ「初めてジビエを食べました。もっと臭いのかなって思っていたけど、匂いもなくて美味しいです。特に鹿肉はさっぱりしていて好みです」と答えてくれました。猪キーマカレーを提供していた方に、会場の様子を聞いたところ「皆さん、想像よりお肉が柔らかいって言ってくれます。少しスパイシーに仕上げていますが、挽き肉なのでお子さんでも喜んで食べてくれていますよ」とうれしい反響があったそうです。

試食コーナーがあるこのフロアでは、NPO法人ハッピーマザーミュージックの方による絵本の読み聞かせが行われたり、株式会社Woo-By.Styleがジビエ料理に合う野菜の提案をする「夕方マルシェ」を出展していました。また鹿皮で作るキーホルダーのワークショップが開催されるなど、イベント時間中は常に賑わっていました。

ジビエについて様々な角度から知り、また子どもでも楽しめる企画があり、学びと遊びを通じてジビエの魅力を体験できました。家族でSDGsを考えたり話し合ってみる良いきっかけになったイベントでした。
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「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」
公式サイト: https://www.child-rin.com/note/6153/
開催日:2025年1月18日(土)11:00〜15:00
主催:ジビエト(株式会社テレビ東京コミュニケーションズ)