特集
ジビエペットフード

愛媛県鬼北町におけるジビエ利活用 ~ペットフード編~

愛媛県 シカ イノシシ ペットフード
2024.12.06

24時間対応で鹿と猪を受け入れ可能な冷凍庫(「鹿ポスト」と「猪ポスト」)を設置

愛媛県鬼北町では、減容化処理施設と新鮮な鹿と猪を活用するペットフード加工処理施設を併設し、24時間搬入可能な体制を整備しました。それらの施設を運営する株式会社ありがとうサービスの西原口航さんにお話を伺いました。

ジビエペットフード開発で大切にした3つの「やさしい」

プロジェクトの目的やコンセプトについて教えてください。

「このプロジェクトの目的は、資源の有効活用を通じて持続可能な社会を目指すことです。コンセプトとして大切にしているのは3つの『やさしい』です。一つ目に、ペットにやさしい。栄養価の高いジビエを主な原材料として、無添加で低カロリー、高タンパクなドライフードや、素材を活かしたジャーキーやミンチ肉が愛犬の健康をサポートします。二つ目に、まちにやさしい。鳥獣被害の軽減を図り、環境保護と地域経済への貢献を目指しています。三つ目に、環境にやさしい。捕獲された動物を適切に処理することで、山林に放置されることによる川の水質悪化を防いでいます。」

令和5年10月から稼働した鬼北町ジビエペットフード加工処理施設ですが、どのようなスケジュールで進行しましたか?

「10月の運用開始後、12月から本格的に商品開発を始めました。ジャーキー、ミンチ生肉、ドライフードの商品化を目指し、試行錯誤を繰り返しました。特に苦労したのはジャーキーとドライフードです。ジャーキーは、フレーカーで削り取って肉を乾燥させます。ちょうど良い加減で乾燥させる工程が難しく、調整するのに時間がかかりました。ドライフードは国産の食材を使用することと添加物無添加にこだわったため、成形に苦労しました。今後も無添加・低添加のやさしい商品にこだわっていきたいです。」

施設で製造されるペットフードの製造プロセスとこだわりを教えてください。

「製造プロセスは、一次処理、二次処理、ペットフード加工、充填、金属検査と進みます。衛生管理と在庫管理の改善を日々行い、少人数体制での作業でも高品質を保つよう心がけています。また、鹿や猪の搬入時にはカメラや番号で個体を識別できる仕組みを整え、HACCPに準じた衛生基準を維持するため、作業環境を日々改善しています。」

鬼北町で捕獲された猪や鹿の安全性について教えてください。

「安全性については、施設をエリア分けし、清潔エリアでは衛生服を着用しています。鹿と猪の2種類の肉を扱うので、それぞれ製造ラインも分けています。また、このような仕組み全体を月に1度、衛生管理のプロによる確認を受けながら見直し、改善を続けています。」

個包装で新鮮さにこだわったジビエペットフード

販売している商品について教えてください

「現在販売しているのは3種類です。まずジャーキーは独自の香りが良く、ちぎりやすい製法で、与えやすい小分けタイプになっています。またミンチ肉は鮮度が大切なので、注文を受けてから製造しすぐに発送しています。こちらは大袋と小袋があり、用途に合わせて使い分けることができます。フライパンや鍋で3分ほどの加熱(30gの場合)で与えられます。愛犬用の手作りご飯に使用していただけます。またドライフードについては鹿肉60%に愛媛県真鯛と野菜をブレンドしており、総合栄養食と混ぜて毎日のごはんがさらに美味しくなる一品です」

どのような点にこだわっていますか?

「まず、全商品に共通するのが個包装であるという点です。新鮮かつ肉々しい香りを愛犬に感じて欲しい、また飼い主さんの手が汚れないなど扱いやすいよう試行錯誤した結果、個包装に辿り着きました。また、パッケージデザインにもこだわりました。鬼北町にある川の写真をパッケージに用いて爽やかさや豊かな自然を表現しています。実はこの川は四万十川の支流でもあるんです。」

おすすめの与え方を教えてください

「ジャーキーは、出先でも手軽に与えられるのが特徴です。ごほうびのおやつとしてもいいですし、ちぎりやすいのでほんの少し手に取ってトレーニング用のおやつに使っていただいてもいいと思います。ミンチ肉は手作りご飯に使用されることが多いですが、必ず加熱してから与えるようにしてください。ドライフードはそのまま与えることができますが、体調に合わせて量を調整していただければと思います。」

お客様からはどのような反応がありますか?

「『食いつきが良い』『食後のトラブルが少ない』といった声をいただいています。実際のアンケートでは『ペロリと完食しました』『便もきれいでした』といったコメントも多く、嗜好性に対する評価が高いです。岡山理科大学獣医学部と連携して行った試験では52件のうち8割の犬が好んで食べ、かつ、お腹を壊すことが少ないという結果が得られました。」

このプロジェクトを通じて、印象に残っているエピソードはありますか?

「猟師さんから『この施設ができて良かった』『ペットフードを楽しみにしている』という声をいただいたときは、本当に嬉しかったです。また、イベント出店時に『ニュースで見ました』と言っていただいたことや、ミンチ肉を購入した方から『よく食べてくれたので、また買います』と言っていただいたことも印象に残っています。直接的に人の役に立てていることを実感しています。」

今後の製品展開や施設の改善・拡充について、新しい取り組みや目標があれば教えてください。

「今後は、さらに受け入れ体制を整えて、より多くの資源を活用できるようにしたいと考えています。また、まだ活用しきれていない部位の精肉量を増やし、解体時に発生する皮や骨といった廃棄部分も有効活用できるようにしたいです。そして、より多くの方に知っていただけるよう、イベント出店にも力を入れていきます。」

最後に伝えたいことはありますか?

「鬼北町や私たちの仕事に関心のある方は、ぜひ全国からお越しください。皆さんと一緒に『えひめ鬼北やさしいジビエ』のブランドと取り組みを広めていけることを楽しみにしています。」

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