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鹿のコンソメスープとローストをセットで、鹿を丸ごと味わう「レストランチッチ」栃木県那須塩原市

栃木県 焼肉・ロースト 煮込み スープ シカ エゾジカ ランチ
2021.11.27

豊かな自然や名湯で知られる栃木県那須塩原市。同市のJR線黒磯駅から車で8分ほどの場所にある「レストランチッチ」(以下、チッチ)は、今年で開店13年目を迎えます。

フレンチと和食が程よくミックスされたスタイルで、特に新鮮な那須野菜をメインにした料理が人気です。

神戸市出身の熊見 悦伸(よしのぶ)さんは、フレンチ料理歴30年、このうち和食料理歴も2年半あるベテランシェフ。那須に縁もゆかりもありませんでしたが、偶然にもこのエリアのホテルで働く機会があり、「ひと夏だけいるつもりが、土地の水やその水で作られた野菜の美味しさにすっかりハマってしまって…。とうとう自分の店を出すことになってしまったのです」とのこと。ちなみに店名の“チッチ”とは「父」のこと。幼かった3人の子供たちの、熊見さんへの呼び名を店名にしました。

店内はダークブラウンを基調とした、重厚な木製のテーブルと椅子が並びます。また、那須楮(なすこうぞ)を原料とした烏山和紙が貼られたエントランスが印象的。夜になると、その和紙を通して店内の光が透過し、幻想的で温かみのある外観に変わります。

さて、熊見さんとジビエの付き合いの年数は、料理人歴とほぼ同じ。初めてジビエと関わったころと比べると、国産ジビエはどんどん進化していると言います。
「真面目できちっとルールを守るハンターさんが増えており、猟も処理も味も、全般的に質が向上していっている」とその理由を語ります。

熊見さんがセレクトしている本州鹿は、兵庫県但馬産がメイン。わな猟で仕留めた鹿を丁寧に処理しており、いつも肉がよい状態で入ってくるそうで、
「仕込みの手数が最小限で済むような、状態のいいジビエなのです」と、品質の高さには太鼓判。骨もスジもすべて使い切ります。

“香り”と“弾力”が命の、鹿のコンソメスープ

「チッチ」では、ランチ・ディナー共に那須野菜をふんだんに使ったコース料理を提供しています。ランチは4,300円~11,800円、ディナーは4,800円~11,800円(各税込)。

さっそく、「チッチ」ならではのジビエの味を確かめさせていただきました。

まずは「鹿のコンソメ」(11,800円・税込のコースの1品)から。器を揺らすと、プルンプルンとスープが動きます。スープにとても弾力があるのは、鹿スネ肉のアキレス腱などから染み出たゼラチンが豊富に含まれているから。

鹿スネ肉、季節の香味野菜、ハーブスパイスを細かくミンチ状にし、胡椒をたっぷり効かせて煮込みます。さらに、煮詰めてこすといった作業を10時間ほど続けます。すると、最初は濁っていたのに、徐々にクリアな黄金色に変わっていきます。

手間暇かけて作られたコンソメスープは、喉越しがよく、ほんのりと上品な鹿肉の香りがします。もちろん臭みはありません。

「火にかける直前にミンチにしていることで香りを引き出しています。山の中のいい実を食べて育った鹿の香りが、私は大好きです」と熊見さん。

蝦夷鹿と本州鹿、食べ比べてみるのもいい!

贅沢なご馳走スープを飲み干したら、メイン料理「蝦夷子鹿 ロースとヒレのロースト モワル入りの煮込みを添えて ソースボワブラード」(コース料理の1品)をいただきます。

塊で仕入れた鹿肉の脂やスジを取って塩・胡椒をし、フライパンでロースト。オーブンでさらに火を入れたら、肉を取り出して休ませます。「ソースポワブラード」は、フランス料理ではポピュラーな鹿肉ソースで“胡椒のソース”という意味。骨やスジに、赤ワイン、コニャック、胡椒などのスパイスを加えて作ります。

さらには、鹿の端肉、ムアル(骨髄)などを入れた煮込み料理も添えて、鹿を余すところなくいただきます。小玉ネギのロースト、紫ジャガイモのピュレなど、「チッチ」自慢の野菜料理が華を添えて美しい一皿に。

そのお味は…?
熊見さんの言葉どおり、さっぱりさらりと仕上がっています。それでいて、鹿肉と肉汁の旨味が舌の上で溶けていくような深い後味も堪能できます。お客様の中には「今まで食べた鹿肉の中で、一番美味しかった!」とおっしゃる方がいらしたという自慢の一品です。

そして「本州鹿ロース 和栗の赤ワイン煮込みピュレ 鹿コンソメスープ添え」(コース料理の1品)もおすすめ。鹿肉一つ一つの上に乗せられているのが和栗のピュレ。栗を一晩赤ワインでマリネし、香味野菜やハーブと共に煮込みにしてから、丁寧に裏ごしをして味を整えます。栗の甘味と赤ワインの酸味が、蝦夷鹿よりもさらに脂が少ない本州鹿によくマッチ。季節によっては、和栗ではなく、赤すぐりやベリーを使うこともあるそう。

オープン当初から生産者とのつながりを大切にしてきた熊見さん。野菜はもちろん、肉や魚など提供者の顔が見える食材を使って作り続けてきたのは、うっかり食べ過ぎても苦にならない、体にしみ込む優しい料理。
「お店を始めたころは、調理法や素材などで冒険をすることが多かった。でもお客様にとっては、それよりも料理が健康的で美味しいかのほうが大事。和食料理の経験をしたことで、“医食同源”、つまり食べるもので私たちの体が作られることも痛感したのです」

その点では、鹿肉は美味しいうえに、牛肉や豚肉と比べ、低カロリーで鉄分豊富など、とてもヘルシー。お客様が「チッチ」で食事をして帰られるころには、来店時よりも元気になってほしい…。そんな思いを込めて、今日も熊見さんは料理を作ります。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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