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伝説のわな師が仕留めた鹿を懐石料理でいただく「伊勢すえよし」東京都港区西麻布

東京都 焼肉・ロースト 和食 シカ 天ぷら・揚げ物 コース
2021.12.08

東京都港区、東京メトロ・広尾駅から外苑西通りを北へ徒歩10分。西へ折れる路地のビル入口に、夜になるとほのかに灯る看板があります。割烹料理店「伊勢すえよし」です。
※日中など営業時間外には看板が出ていません。上記写真は店舗の建物外観となります。ご来店時の参考にしてください。

3階のドアを開くと、そこには美しい白木のカウンターが5席。洗練されたプライベートな空間が広がっています。

6人掛けのテーブルが配置された個室1室の用意もあります。

こちらでは、店主・田中 祐樹さんの出身地である三重県の食材をふんだんに使った懐石料理を楽しめます。メニューは12,000円と16,000円(税・サ込)の2コース(約10品、値段により食材が異なる)。そのコースで、懐石には珍しくジビエが楽しめるのです。

伝説のわな師・古田 洋隆氏の鹿肉に真摯に向き合った一品

登場するのは“伝説のわな師”と言われる三重県津市美杉町の古田 洋隆氏が仕留めた鹿肉の料理。懐石料理にジビエは珍しいですねと問うと、「鹿肉料理を出したかったわけではなく、古田さんの鹿肉に出会ったから出しているんです」と田中さん。「古田さんの鹿肉を知ると、もうほかの鹿肉では満足できない」と言い切ります。

コース内では、ジビエを使った料理が1品、月替わりで登場しますが、今回はそれらの中から2品を用意していただきました。

一つ目は、取材をした10月のコースの中から「炙り紅葉 春菊の素揚げ」。低温調理した鹿モモ肉を、葛でとろみを付けた赤味噌仕立てのソースと共にいただきます。

見惚れるほど美しい紅葉色の鹿肉を口に運ぶと、ジビエに対するイメージが一変。やわらかでありながらも噛むほどにジワジワと口の中で広がる旨味。それを引き立てる上品なソースの甘味と和がらし。香り、食感、味…、何もかもが極上の味わいです。

店内には田中さんが生産者を訪ねて作った三重の食材を紹介する本があり、猟師の古田さんの姿も。月1回は三重各地の生産者のもとへ足を運んでいるそう。

「古田さんは“想い”がすごい」と田中さん。
「人間のせいで増えすぎた動物が、人の都合で駆除されてしまう。それならば減らすだけでなく命を一番美味しい状態で届けたいというこだわりを持っている」

わなで猟を行うのもそのため。技術ももちろん素晴らしく、動物にストレスをかけないよう独自に編み出したわなで鹿や猪を捕り、心臓を傷付けずに左心房の動脈2本を切っていっきに放血します。
「だから肉が美味しい。それを自宅に併設された食肉処理施設で衛生的に、かつスピーディにさばいていくんです」

二品目は、1月ごろにコースに加わることが多いという「鹿肉の東寺揚げ」。“東寺(とうじ)揚げ”とは湯葉を用いた揚げ物のこと。塩麹に漬けた鹿モモ肉に湯葉をまとわせて揚げ、余熱で中まで火を通します。

サクッと衣を切る心地よい音がカウンターから届き、出来上がったのがこの一皿。

牛ヒレ肉のようなやわらかさで、旨味たっぷり。温泉卵が入った出汁と一緒にいただくと、黄身がコクをプラスしてくれます。

季節によっては、やはり古田氏が仕留めた猪をメニューに加えることもあるそう。コースは月替わりなので、毎月にどんなジビエに出会えるか楽しみです。

最低限の調理で100%を目指す日本料理の素晴らしさ

店名の「すえよし」は、田中さんの父親が営んでいた割烹料理店の名前を引き継いだもの。幼いころから料理人に憧れていた田中さんは料理の専門学校を卒業後、「赤坂 菊乃井」で4年ほど修業。その後、人として見聞を広めたいと1年半ほど海外を放浪。言葉がわからずとも料理を通じてコミュニケーションが取れることに魅力を感じ、醤油と昆布をバックパックに担いで14か国を巡ったそう。24~25歳のころのことです。

「国によって食材はもちろん、気候によって調理法や味付けも変わる。“食=文化”なんだと気付きました。でも、海外で日本のことを聞かれても答えられない自分がいたんです。そこで、まずは生まれ育った『三重』のことを知ろうと、帰国後は父のもとで働きながら1年かけて県内の生産者を巡りました」

生産者を訪ねる時、話を伺うだけでなく、可能な限り作業を手伝わせてもらい「生産者と同じ目線で見る」ことを心がけているそう。

「巡ってみて、三重県ってすごいな!って思いましたよ。素晴らしい生産者、食材の宝庫」と痛感。こうした出会いの積み重ねで、三重の食材をメインに扱う「伊勢すえよし」が誕生しました。

コースには三重の食材が満載。八寸には三重産のハモなど旬の食材が盛り込まれ、椀ものには「伊勢えびの具足煮」なども登場します。

海の幸が豊富な三重は刺身も絶品。地酒も豊富にそろい、コースに合わせて7、8種が楽しめる「地酒ペアリング」(5,000円・税込)もあります。
「日本料理は旨味を基調に素材を生かした料理で、ほかの国にはないもの。最低限の調理でその食材の美味しさ100%を目指すんです。刺身はその最たるものですよね」

田中さんはコロナ禍で生産者の苦境に接し、ウェブサイト「三重の恵み」を立ち上げて三重の食材を広める活動を始めました。生産者の紹介や食材を使った商品を販売するほか、三重県立相可高校の調理クラブの高校生たちと未利用魚を活用するプロジェクトも行っています。

バックパッカー時代から変わらない探求心と情熱。古田さんをはじめとする生産者の思いがこもった食材に、田中さんが真摯に向き合い料理に仕上げていく。そしてその料理をいただく私たち。生産者から料理人へ、そして消費者へ、その想いはつながっていくのです。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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