千葉県の房総半島南部に位置する鋸南(きょなん)町。鋸南町の名前の由来になった鋸山(のこぎりやま)をはじめとする豊かな自然に囲まれた場所に、ジビエが味わえるユニークなカフェが誕生したという噂を聞き付け、JR保田(ほた)駅へ。
保田駅の目の前に2022年1月にオープンした「パクチー銀行」は、房総ジビエを使ったパクチー料理が楽しめるカフェ&交流スペースです。
オーナーの佐谷 恭(さたに きょう)さんは、2007年に日本初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を立ち上げた人物で、同年からパクチーの種を融資(配布)するシードバンク「パクチー銀行」という活動も展開。2018年に惜しまれつつ閉店したあとは、イベントなどを通じてパクチー料理を普及しながら世界を旅する生活に。その活動のなかで鋸南町と縁がつながり、かつて銀行だった建物と運命的な出会いを果たし、「パクチー銀行」の実店舗を構えました。
銀行時代からの大きな金庫は残しつつ、ギャラリーを併設したアートな空間に店内をリノベーション。駅前という立地から電車を待つ間に利用する人も多く、地域と旅人の交流を生む場としても親しまれています。
ジビエと相性抜群!スパイスが香るパクチー料理を提案
以前の店でもパクチーが主役の料理を提案していましたが、「パクチー銀行」ではパクチーと房総ジビエを組み合わせた料理が楽しめます。
「2007年にパクチー料理専門店を始めたきっかけは、パクチーは世界中で食されているポピュラーなハーブなのに、当時、日本ではほとんど食されていなかったから。しかもパクチーは、葉や茎だけでなく、花や根、種まで食べられて、それぞれ味や食感が違うことも知ってほしいと思い、薬味ではなく主役として楽しめる料理を考えました」と佐谷さん。
個性のあるパクチーに合わせる食材として、以前からジビエに目を付けていたという佐谷さん。新しい店舗は「館山ジビエセンター」に近く、鋸南町産の新鮮なパクチーも手に入ることから、ジビエとパクチーを使った名物を考案しました。
看板メニューの「猪パク(いのパク)」(890円・税込)は、お皿を覆い尽くすパクチーの上に、炒めた猪肉をのせた野趣あふれる一品。生のパクチーで作るパクチーソースとパクチーシードがアクセントになり、猪肉の旨味を滋味深くさわやかに引き立てます。
「猪ワンタン」(890円・税込)は、猪肉とパクチーで作る自家製ワンタンを使用。醤油ベースのスープにパクチーの葉と根を浮かべて、食感よくさっぱりと仕上げています。
パクチー好きにはたまらない「生春巻」(500円・税込)は、たっぷりのパクチーの中に、キュウリとミニトマトを潜ませたベジタリアンメニューです。
生春巻きのタレは、醤油と粒マスタード、ピーナツバターを合わせたコクのある味わいで、野菜だけでも食べ応え十分です。
パクチー×ジビエ料理を存分に楽しみたい人は、おまかせのランチコース(2,200円~・税込)もおすすめです。
パクチーの種を融資してブームから文化へと根付かせたい
こちらでは「ペイフォワード」も実施していて、店内の壁には「パクチー銀行券」(1,100円・税込)と「コーヒー回数券」(5,500円・税込)を掲示。これは「誰かのために先払いをする」というシステムで、購入した飲食チケットを店に置いて行くことで、次に来た誰かがそのチケットを使って自由に食事ができるという素敵な取り組みです。恩を享受した人は、次の見知らぬ誰かのために“ペイフォワード”をして、善意をつないでいくのです。
現在も「パクチー銀行」本来の活動である、パクチーシードの配布も継続中。パクチーの苗も販売していて、家庭菜園でも育てやすいと評判です。
「保田駅は鋸山の登山口に近く、下山後に立ち寄ってくださる方もいらっしゃいます。たまたまこの店に寄った人にも、“また来よう”と思ってもらえるように、地元の食材を使った料理や地域の魅力を紹介しながら、町と人をつなぐ交流の場になれたら…」
東京方面から鋸南町へは電車だけでなく、バスやフェリーを使ってアクセスする方法もあるので、移動の時間も楽しんでほしいという佐谷さん。小旅行気分でたどり着いた先には、ここでしか味わえないパクチー×ジビエ料理が待っています。
パクチー銀行
- 公式サイト: https://www.paxi.coffee/
- 住所:千葉県安房郡鋸南町保田65-2
- TEL:080-3700-8900
- 営業時間:昼前〜日没 ※夜の営業は要予約
- 定休日:火~金曜 ※毎月の営業日はSNSで告知
- ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
- 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。