真摯に、丁寧に生み出される和光の町の上質イタリアン 「Fattoria S（ファットリーア エッセ）」

東武線と東京メトロが乗り入れるベッドタウン、埼玉・和光市駅界隈。2020年春の駅ビルオープンを前に、街の再開発が進められています。さらなる発展が期待される街で、駅から徒歩３分の場所にあるのがイタリアンレストラン「Fattoria S」。ビルの1階に多くの緑を配した落ち着いた佇まいです。

扉を開けるとすぐ、赤いソファが目を引くウエイティングスペースがあります。

白を基調とした広い店内は、大きな窓から光が降り注ぎ、温かみのある雰囲気。ゆったりとテーブルが配され、ワインを傾けながらゆっくりと食事を楽しむ人たちの姿が目に浮かぶようです。

地元に美味しい料理の文化を届けたくて

こちらで腕を振るうのは、オーナーシェフの安田 智さん。都内のレストランでキャリアをスタート。「味や技術だけでなく、シェフの料理に対する理論も学びたくて」と言葉少なに語る職人気質なシェフは、イタリアに渡り2年間武者修行。帰国後に都内有名店のシェフを務めた後、2012年に同店をオープンしました。

ここ和光市は安田さんの地元。駅界隈は昔から飲食店というとチェーン店が主流で、「美味しいものを」「ちょっと特別なものを」と思ってもなかなかお店がないことを憂いていた安田さん。「都内まで行かなくても美味しいものが食べられる、本格的な料理を居心地よい空間で楽しめる、そんな場所を地元に作りたくて」と、この店を開きました。

季節の食材を味わってほしいからと、メニューのうち約半分は季節によって変わり、野菜のほか、彩の国の黒豚など地元食材もふんだんに取り入れています。

さらにパスタはすべて自家製。７種類のパスタをソースによって使い分けています。

店の隅にあるオブジェのようなこちらも、実はパスタを作る機械「トルッキオ」。イタリアから持ち帰ったもので、現在も現役で働いてくれています。

確かな技術に裏打ちされた味わい深い料理

こだわりが詰まった安田さんの料理から、まずは「鹿肉のロースト」（3,000円・税抜）を。美しいワイン色をした熊本県産の鹿肉をフライパンで焼き付けた後、オーブンでじっくり火を通していきます。

しっとりと焼きあがった鹿肉には、フランボワーズとピスタチオ、2種類のソースを添えて。

フランボワーズはビネガーの酸味が効いた甘酸っぱいソースで、鹿肉との相性は抜群です。そして「鹿肉ととても合うんですよ」とおすすめのピスタチオのソースを肉に絡めていただきます。

こちらはまるでバターのように濃厚！　ナッツの香りが包み込み、旨味が凝縮した鹿肉にさらに深みをプラスしてくれます。

2品目はパスタから「“ビーゴリ”フランス産鴨肉のラグーときのこ」1,680円（税抜）

こちらはオープン当初からある定番のメニュー。ビーゴリとは、ヴェネト州特有の太い麺で、先ほどのトルッキオを使って安田さんが仕込んだもの。

「ソースは鴨肉を骨付きのまま煮込んで、骨から肉を除いてその骨を加えてさらに煮込んで…と旨味を凝縮しています。モチモチの食感のビーゴリとの相性抜群です」

ラグーは細かく切った肉で作られることが多いですが、こちらのソースは骨付きのまま煮込んだ鴨肉をほぐしているので、存在感もたっぷり。

さっそくいただくと…ん～っ、なんとモッチリした麺でしょう！ 絶妙な茹で加減で食感がよく、表面が少しザラリとしているのでソースがよく絡みます。奥深い味わいの濃厚なソースと、それに負けない存在感のあるパスタが一体となった贅沢な一皿です。

「手間はかかるけれど、手は抜けないですから」と真摯に向き合う安田さんの料理は、本格的な味が楽しめると地元でも評判。

例年、秋冬には猪肉もメニューに登場し、上記のようなラグーパスタに変身するほか、肩ロースの炭火焼きやテリーヌなども予定しています。

ディナーはアラカルトのほか、おまかせパスタ2種類の軽いコース2,600円、おまかせコース5,000円、シェフのおまかせコース（要予約）8,800円～（各税抜）もあり、ワインも豊富に取りそろえています。

普段使いで通うご夫婦、ちょっぴり背伸びをして訪れる若いカップルなど客層は幅広く、「“美味しい”と言っていただけるのが、やはり一番うれしいですね」と笑顔を見せてくれた安田さん。オープンから7年、これからもこの街で、上質な料理と、それを味わう幸せな空間を提供し続けてくれるに違いありません。