軽くてやわらかな猪革を使った愛らしい小物を展開する「ino DATE」福島県伊達市

福島県伊達市で、猪の革を使った多彩な小物を製造・販売している「ino DATE（イーノ 伊達）」は、2015年に誕生したブランドです。通称は「イーノ」。そもそもは、猪肉を扱う予定だったところ、原発事故の影響により現在の取り組みに方向転換していったそう。その背景や、バラエティに富んだ魅力的な商品についてご紹介します。

東日本大震災による原発事故の影響で猪肉ではなく猪皮を活用することに

方向転換の経緯や背景についてお話をしてくれたのは、「イーノ」の企画・制作・販売を担当している齋藤 知世さん。
「伊達市は自然が豊かで農業が盛んですが、阿武隈山系に生息する猪が農作物を荒らしてしまうのが問題だったんです。そこで、市では有害鳥獣の捕獲駆除に努める一方、イノシシを地域資源として何か活用できないか検討を重ね、イノシシ肉の食品加工販売による有効活用を進めるべく「いのしし公社」の設立を目指していました」
ところが、翌年の原発事故の影響で、捕獲した猪を食肉としては扱えない状況になってしまったと言います。

侵入防止柵を設置するなどの鳥獣被害対策をしながら、猪を少しでも有効活用できればと革製品の制作が始まりました。
「今では毎年、捕獲された中から約100頭分の皮を、なめし加工業者で皮から革になめしていただいています」と齋藤さん。

「猪の革の特徴は、豚の革に似ているんです。牛革と比べると1/10の軽さです。そして質感がやわらかいのが魅力ですね。3つずつ並んだ毛穴が開いているので、通気性にも優れています」と教えてくれました。厚みは1.2mmにそろえるすき加工を施してもらいますが、その作業が必要のない薄さの革も多いそう。色は9色から指定できます。

干支のキーホルダーやファーストシューズのキットなど愛らしいアイテムづくし

齋藤さんが制作しているのは、伊達市役所梁川（やながわ）総合支所の3階にある工房です。数あるアイテムのなかから、人気の商品をピックアップしていただきました。

まずは、愛らしい猪のキーホルダー「イノキー」(1,300円・税込）です。

毎年制作している干支のキーホルダーの一つで、2023年の「卯」は、現在制作中とのこと。中央の浅めの色は、ナチュラルと呼んでいる着色していないものだそうです。バッグも販売しているので、チャームとして着けると目を引くはず。

カラフルなバリエーションが愛らしい「ファーストシューズ」（13,700円・税込）は、受注制作の商品。イタリアでは猪の夢を見ると幸運が訪れると言われているそうで、子どもの成長を願う贈り物にもぴったりです。本体に猪革を使い、厚みが必要な靴底の部分には牛革、内側には豚革を使用しています。

思いを込めながら、一針ずつ手縫いする「ファーストシューズ作成キット」（10,400円・税込）も大人気です。

実際に作られたお客様からのうれしいエピソードも。
「赤いシューズを注文していただいた方のお孫さんがとても気に入って、ボロボロになるまで履いてくださったそうなんです。履けなくなったものを、思い出として家に飾るため縫い直しを依頼していただき、とてもうれしかったですね」
キットには材料と共にレザークラフト用の針も含まれているので、初心者でも説明書に沿って問題なく、手縫いで仕上げることができます。

商品は「道の駅 だての郷 りょうぜん」や温泉旅館の売店でも取り扱っており、公式サイトからも購入できます。猪革ならではのやわらかな手触りや、使うごとに出る風合いを楽しんでみては？

猪革に触れながら制作ができるワークショップも開催

「イーノ」では、いろいろな場所でワークショップを開催しています。地元だけでなく全国各地でも開催するなど、エリアを限定せず猪革に触れられる機会を設けています。ワークショップの内容により、1～2時間コースで600～5,000円が目安とのこと。

「地域の子育て支援の集まりで、お母さん方にリフレッシュしていただくためのワークショップも行いました。写真がその時の様子ですが、革2枚を合わせてキーホルダーを作り、喜んでいただけました。打刻することもできるので、オリジナルの商品が生まれます」

キーホルダーのほか、財布やカバンなどのワークショップも。
「例えば親子で会話をしながら作るとより思い出につながると思いますので、猪の革を利用しながら、楽しく体験していただければと思います」と齋藤さん。

猪革の認知UPに日々尽力している「イーノ」の商品や今後の活動に注目です。