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有名人も多数来店。大槌ジビエと三陸産海の幸の絶品コラボ料理「割烹 岩戸」岩手県上閉伊郡大槌町

岩手県 和食 創作料理 シカ ランチ
2021.01.16

「鮭とひょうたん島の町」として知られている、三陸鉄道リアス線・大槌駅から車で約5分のところにある「割烹 岩戸」。ジビエ料理と割烹料理をコラボさせた料理が食べられると聞き、訪れました。

調理師学校を卒業後、東京や千葉など関東近郊の和食店7〜8店舗で修行後、四代目店主となった佐藤 剛さん。店を継いだのは東日本大震災の4年ほど前のこと。その後被災し、食材への意識がガラッと変わったと言います。

「食材はこれまで“あって当然”でしたが、そうではありません。限りある自然の産物を大切に調理し、多くの人に美味しさを味わってもらいたいという思いが強くなり、自然に恵まれた地元・大槌をはじめ、県内産の食材を使って料理を作りたいと意識するようになりました」

試行錯誤しながらジビエを割烹メニューに取り入れる挑戦を

通常は三陸の魚介や野菜を使った割烹料理が楽しめますが、1年ほど前からジビエを取り入れた料理を提案できないかと、メニュー作りに取り組み始めました。

そのきっかけとなったのは、岩手で唯一の鹿肉加工工場「MOMIJI株式会社」の兼澤 幸男さんの「大槌町のジビエを多くの人に味わって欲しい」という熱い思いに触れたこと。しかし、そこからは試行錯誤の日々…。本来、日本の伝統食「懐石料理」に肉は使わないため、それを極めた和食の調理人にとってはなかなかの難題だったそう。

「ただ、脂分が控えめな鹿肉は旨味が強く、意外と和食に合わせることができるという新しい発見もありました。ジビエと懐石のコラボでのこだわりは、まずは地元食材を徹底研究し、自分の腕を信じて最大限に表現することです」

さっそく、懐石料理「和のジビエコース」(6,000円・税抜 ※要事前予約)より、一品目「大椎茸二見揚げ」を運んでいただきました。

脂分を補うため、鹿挽き肉に豚挽き肉を3割ほど加えています。

岩手県遠野産の大椎茸に詰め油で揚げたあと、さらに炭火でサッと焼き、香ばしさをプラス。
「岩手県産の木炭を使っています。表面がパリッとするだけでなく、炭火焼きにすることで椎茸に染み込んだ余分な油が落ちるので、さっぱりとした食感でいただけますよ」

肉厚の椎茸に鹿肉の旨味がギュッと閉じ込められ、スダチの酸味も相まって、揚げ物なのにさっぱりとした食感が印象的。添えられた赤カブの甘酢漬けが口休めにもなり、拳のように大きな椎茸×鹿肉ですがサラリと食べられます。

2品目は「鹿ロール グリーンサワーソース」。薄くスライスした大根とキュウリで、鹿の即席ハムを巻いた一品です。

大槌の海をイメージした素敵な円形皿に、豆乳クリームと自家製ホウレン草オイルを加えたソースと共に飾り付けられ、彩り豊かな美しさは食べるのがもったいないほど。
「ソースの上に柚子の輪切りと鹿肉のロールをのせ、大槌の海と山のコラボレーションをイメージしました。この柚子を使って、お客様自身に調理に参加していただくサプライズがあるのでお楽しみに」と佐藤さん。

食べる直前に鹿肉のロールを端によけたら、柚子をソースの上に絞ります。

すると、柚子の酸味でソースが凝固し、サワークリームのようになるのです!

そこへ鹿肉のロールを戻し、一緒に添えられているサラダ(玉ネギやミョウガのスライス、岩手県花巻市から取り寄せているマイクロハーブ3種のミックス)を盛り付け、最後に柚子ポン酢をかけたら鹿肉のサラダの完成です。

柚子の香りに刺激されながら自分で最後の仕上げをすることで、食欲はますますアップ! 鹿肉をロール状にし、サラダで提供するという佐藤さんならではのアイデアと演出には驚きを隠せません。数々の野菜と共にいただくと、鹿肉と野菜のコンビネーションが本当に美味で、ソースを絡めると何口でも食べたくなる美味しさ。お酒を飲む手も止まらなくなりました。

常に頭に置いていることは“大槌の山と海のコラボレーション”

三品目は、朴葉(ほおば)に覆われたまま登場する「鹿の炭火焼わら燻(いぶし) としろソース・香茸ソース」。※写真は3人前

仕込みに時間がかかるこのメイン料理は、まずオイル漬けにした鹿ロースを低温調理し、その後、炭火で表面をカリッと焼き上げたら、わらで燻製にします。

「鹿肉をわらで燻製にすることで、香ばしさが肉に備わり、美味しく仕上がるんです」

添えられている玉ネギは、朴葉で包み、200℃で50分焼き上げたもの。甘味がたっぷり引き出されています。

松茸よりも貴重と言われる大槌の香茸(こうたけ)をはじめ、スイートポテトのように甘い岩手県遠野市産のサツマイモなども炭火で焼き上げています。

「朴葉をめくるとゴロゴロと野菜や鹿肉が見えるよう、“森の中のBBQ”をイメージしながら、鹿肉と旬の野菜の旨味を引き出す調理法で作り上げました。まずは何も付けずに召し上がってみてください」

鹿肉を食べると、わらで燻した香りが口の中に広がりとても美味しい! 野菜もそのままで素材の味が十分楽しめますが、2種のソースをそれぞれ付けることでまた違った味わいに。

アワビの肝の塩辛「としろ」を使った、さっぱりなのにコクがある“としろソース”(写真左)と、風味が豊かで食材の味を引き立ててくれる“香茸のソース”(写真右)。どちらもそれぞれの味わいがあって甲乙つけ難いですが、赤ワインと共に味わうなら香茸ソースがおすすめ。ビールや日本酒党ならばとしろソースがお似合いです。

最後は、口にした瞬間に海と山のコラボが感じられる「SANRIKU 豊年クラムチャウダー」。※写真は2人前

岩手県山田町の赤皿貝と、岩手県釜石産の“しうり貝”(ムール貝)に酒と水を加え出汁をとる一方、鹿の・スジや肩などの端材を圧力鍋で1時間煮込んでとった出汁を合わせ、さらにヤーコンやゴボウ、ニンジン、セロリ、ニンニク、トマトなどの野菜とアサリを加えて煮込んだ一品です。

鹿肉と貝から取った出汁が見事にコラボレーションした芳醇な味わいは、最後の一滴まで飲み干してしまうほど。鹿肉や貝の食感を堪能していると、やわらかいすいとんのようなものが顔を出します。
「自家製の“ひっつみ”(※小麦粉をこねて薄く伸ばしたものを手でちぎり、季節の野菜と共に出汁で煮込む岩手の郷土料理)を入れているんです」と佐藤さんが教えてくれました。

盛りだくさんの「和のジビエコース」では、さらに前菜と、浅草のそば店でも修行を積んだ佐藤さんの手打ちそばが楽しめます。仕入れる野菜や季節等でメニューが変わっていくのも楽しみですね。

多くの著名人が訪れたことがある「割烹 岩戸」。

三陸を代表する和食の達人、佐藤さんが振舞ってくれた料理はどれも発想豊かで、彩りよく盛り付けられた一皿一皿が実に魅力的。ところどころに感じられる三陸の味とジビエとの融合…。シンプルに素材の個性を引き出すことで、美味しさは自然と生み出されるのだと実感できる、感動的なコース料理でした。大槌駅から歩くには距離がありますが、タクシーなどを利用してでもぜひ足を運んでいただきたいお店です。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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