猪肉が誰にでも好かれる定番の国民的料理に変身!「ボタン」京都府京都市左京区
日本全国に約3,000社あると言われている熊野神社のひとつ「京都 熊野神社」からすぐのところにあるのが、今回紹介する「ボタン」。店名のとおり、猪肉が名物のカジュアルなダイニングです。
8年前にオープンした当初は猪肉とワインが楽しめるお店でしたが、現在では猪肉以外に、肉や魚料理も提供しています。
京都の建物らしく、間口は狭いものの、奥行きが長くゆったりとして、思ったより席数やテーブルが多いのにも驚きます。2階には個室も用意されています。
あちこちに置かれた猪の人形たちもキュート。
調理を担当するのは、上羽(うえば) 浩介さん。大学卒業後から飲食業に携わり、ありとあらゆるジャンルのお店で調理やホールを担当。イタリア料理店に勤務していたころ、鹿や猪に触れたことをきっかけに、自らもジビエが好きになったそう。
その後独立を考えていた時、上羽さんが以前から常連客だった「ボタン」の初代店長に誘われました。そして、猪とも深く関わるようになったのです。
現在使用している猪肉は、主に島根県美郷町の、行政・民間・地元民が一体になって鳥獣被害のマイナスをジビエ利活用でプラスにする活動を盛り立てている「おおち山くじら」から仕入れています。
猪肉の風味はふんわりと香る程度。親しみやすい料理で提供
誰もが好む人気のメニュー「猪のハンバーグ」(1,700円・税込)と、「猪のボロネーゼ」(1,500円・税込)の2品を作っていただきました。
「猪肉を使ったハムやソーセージ、パテも作っているのですが、猪肉そのものの味わいが強すぎると敬遠する人もいます。そこで、ハンバーグやパスタなどの親しみやすいメニューもお出ししています」と上羽さん。
ハンバーグの材料は、猪肉ミンチ、玉ネギ、卵、パン粉、キャトルエピス(ミックススパイス)、ナツメグ、塩、胡椒などいたって普通。あまり多くの食材を使わず、猪肉の持ち味を生かすレシピで作ります。
材料を混ぜ合わせたタネを丹念にこね、何度も叩いて空気を抜くのが重要なポイント。これで焼いた時に旨味と肉汁を逃しません。
フライパンでしっかり焼き上げて、最後は弱火で蒸し焼きに。
さらにフライパンに残った肉汁に、醤油、みりん、酒などを加えて、和風ソースを作ります。
熱々のハンバーグにソースをかければ、出来上がり! 空気をしっかり抜いたおかげでハンバーグがひび割れず、カットした時に肉汁がジュワーッとあふれ出てきます。“猪感”は言われなければわからないほど。しかし味わいが深く、そこはかとないワイルドな香りが鼻に抜けていくことに気付きます。
ドライな自家製レモンサワー(600円・税込)をお伴に。甘くないので、ハンバーグの味を邪魔せず、あっと言う間に平らげてしまいました。
体によい梅やスダチなどを使った酵素サワーの用意もあり、おすすめとのこと。
平打ちパスタによく絡むボロネーゼ。豚ミンチよりも濃い味わいに
続いて、2品目の「猪のボロネーゼ」もいただきます。
こちらのボロネーズソースの作り方も一般的。ホールトマト、赤ワイン、キャトルエピス、玉ネギ・ニンジン・セロリなどの香味野菜のすりおろし、醤油、みりんを入れ、猪肉ミンチを数時間煮込みます。仕上げにバターを加えて、味を引き締めたら完成。
使う麺は生のタリアテッレを。平打ちなのでボロネーゼがよく絡みます。皿に盛り付けたあとは、たっぷりとパルミジャーノ・レッジャーノを振りかけて。
豚肉のミンチよりも歯応えのある肉質で、パルミジャーノがボロネーゼに溶け込み、深い味が際立ちます。仕上げのバターも効いています。
上羽さんにとってのジビエの魅力について伺いました。
「やはり味と香りのインパクトでしょう。牛肉や豚肉にはない、強い存在感があります。今後は猪だけでなく、ほかのジビエにも挑戦したい。さらに腕を上げて、もっと美味しいジビエをご提供していきたいです」
ジビエへの可能性とその抱負を語ってくれた上羽さん。これからどんなジビエ料理を届けてくれるのか、若きシェフが生み出す一皿に期待が高まります。
- ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
- 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。