信州上田発！地ビールとジビエの地産地消アラカルト「天神BREWERY」

長野県上田市にある上田駅は、JR東日本・しなの鉄道・上田電鉄の3路線が乗り入れ、JR北陸新幹線も停まる主要駅です。その上田駅から徒歩1分。どこか懐かしさの漂う路地を曲がるとすぐ、全面ガラス張りの店があります。

中には一枚板のカウンター席と大きなステンレスタンクたち。2021年秋にオープンしたばかりの「天神BREWERY（てんじんブルワリー）」（以下、天神ブルワリー）です。

地域のモノや人の縁など、あらゆるものを循環させて生かすことを基本理念に

以前は鮮魚店があり、その後長らく使われていなかったそうですが、そんな面影はまったくありません。店内は、木の風合いを生かしたナチュラルさと、黒や艶々の樹脂コーティングのスタイリッシュさを併せ持つ設えとなっています。

これらのカウンターやテーブル、椅子は「天神ブルワリー」起ち上げプロジェクトメンバーによる手作りで、使われている木材の一部は、 2019年に日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号で倒れひび割れてしまった樹木を利用し、表面とひび割れの部分に樹脂コーティングを施すことで、新たな命を吹き込んだものだそうです。

そして、ガラスの壁の向こう側には地ビールの醸造タンクが並びます。

“飲み飽きないビール”をテーマに、さわやかな苦味の「ピルスナー」やフルーティな甘酸っぱさをもつ「エール」、コーヒーのような深みのある「スタウト」などのビール（グラス660円・税込～）を醸造しているほか、今後は桑の実など地元産の農産物を副原料として使用する特色豊かな醸造も行っていくそうです。

また、フードメニューにもこだわりが。野菜、魚、チーズ、肉など、地元上田市を中心に県内各地で生産された食材をふんだんに使い、もちろん“信州ジビエ”を使った料理も！

地域を想う気持ちがジビエメニューを提供するきっかけに

お話しを伺ったのは、「地産地消アラカルト」をコンセプトに、地域色満点のビールに合うオリジナルメニューの開発と調理を担当している石井 芙美香さん。
「地元にはこんなに美味しいものがあるんだということを知ってもらい、地元を盛り上げていきたい」と瞳を輝かせます。

ジビエを扱うことになったきっかけは、「なるべく多くの食材を地元産、信州産とすることにこだわったから」とのことです。

「学生のころ、地元の環境学習イベントで、猟師さんから『農作物を守るために畑を荒らす鹿を駆除する』という話を聞いたことがきっかけとなり、捕獲した鹿も大切な地域資源として捉え利活用をしていこうという考えに至りました。きちんと処理をされたジビエは臭みもなく、適切な調理法を用いれば肉の弾力も含めて美味しくいただけます。」
親しみやすく、ジビエ料理の開発や調理に長く携わってきた石井さんが自信を持って提供するジビエ料理。この店で初めてジビエを食べたというお客様からの評価も上々だとか。

環境への配慮もちりばめられた美味しさ…。地ビールを片手に召し上がれ

ではさっそく、地ビールとの相性抜群なジビエ料理をご紹介しましょう。

まずは、「鹿肉とキノコのピザ」（1,200円・税込）。信州産の鹿肉とたっぷりのキノコをトッピング。ピザソースには地元産トマトを使用。

鹿挽き肉にはわずかな胡椒以外の下味はいっさいなし。肉質のよさ、肉そのものの力強い旨味がダイレクトに感じられます。

このピザは生地にも特徴があり、発酵を促しているのはなんとビール酵母の再利用。知恵を使い、手間を惜しまず。身の回りにあるものを大事に使い尽くす…。環境への配慮が感じられます。

こちらは「オリジナルソーセージ」（880円・税込）。信州産ジビエを含む3種のソーセージを堪能できます。この日は「鹿」「馬鹿合挽き」「鶏」の組み合わせ。それぞれの味わいの違いを楽しむことができます。入荷状況により、「猪」のソーセージが入ることもあるそうです。

カウンターに置かれたこの瓶は、オリーブオイルにビール醸造後のホップを入れてその風味を移したもので、油を用いるほとんどの料理に使われているそうです。廃棄物をできるだけ減らし循環させる工夫は、このほかにもあり、例えば醸造に使われたあとのモルトは乾燥させて、自家製バゲットの生地に練り込んでつぶつぶの食感を出したり、唐揚げの衣に使うなど、あらゆる利用がされています。

醸造タンクの眺めを楽しめる1階のほか、2階にはテーブル席もあります。パーティ対応可。

地産地消の食材、倒木を利用したテーブルや椅子。地元を想う仲間が力を結集させ、ご縁の輪が広がって産声を上げたブルーパブ「天神ブルワリー」。ビールを片手に“地域の恵み”を味わいつくしてみてはいかがでしょうか？