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ジビエバーガーとバーベキューで地域貢献を目指す 「猟師工房 千葉店」

千葉 シカ イノシシ
2019.12.27

千葉県の館山自動車道君津ICから房総スカイライン経由で約30分。緑に囲まれた静かな環境にあるのが「猟師工房 千葉店」です。

敷地が広々としているのは、1988年に廃校になった旧香木原小学校の跡地を利用しているから。

敷地全体は認定鳥獣捕獲等事業者を営む株式会社TSJ(本社:奈良県奈良市)の専務取締役原田祐介さんが運営する「猟師工房ランド」として、市内で捕獲された野生動物の冷凍肉や加工品、工芸品や狩猟関連商品を販売するショップのほか、ソロキャンプ場、ドッグラン、ジビエの加工設備、クラフト教室などが整備されていて、その一角が今回紹介するバーベキュー場&バーガーショップの「猟師工房 千葉店」となっています。

いかにも小学校にありそうな池の奥に、こぢんまりとした店先を発見。バーベキューの受付もハンバーガーの注文もこちらで行います。

改良に改良を重ねたジビエバーガーとは?

さっそく「ジビエバーガー」(各800円・税抜)を注文。種類は、肉の種類には「鹿」「猪」の2種類があります。

それぞれパテのほかにはたっぷりのキャベツ、スライスチーズ、トマトソースとチーズ系ソースがバンズに挟まっていて、なかなかの迫力。

肝心のパテは玉ネギや小麦粉などのつなぎは一切使用していません。そしてなんとこのパテ、ただ焼くだけではありません。「肉を成型したらフライパンで両面を焼き、その後、低温調理器具の中で約65℃、4時間かけて、じっくりと熱を入れているんです」。

そう教えてくださったのは、店主の北嶋貴弘さん。
「ジビエは普通に焼くと冷めたあとに硬くなってしまうし、香りも変化してしまうんです」。

ハンバーガーという料理は、その場ですぐ食べる人だけではありません。持ち帰る人ももちろんいます。冷めてもやわらかなままで、臭みの出ない加熱方法はないか。開業後も試行錯誤を続け、ようやく今の低温長時間加熱という方法にたどり着いたそうです。

では味はどうかというと、猪は肉そのものの味がしっかり感じられる中に、脂の甘味も広がります。一般的に豚肉に近いと言われる猪ですが、鼻腔にのぼる香りで猪だと判断できます。
鹿は猪よりもややあっさり目で、女性に好まれているとのこと。

どちらもパテがやわらかく仕上がっているため、バンズと一体化して味わうことができ、またたっぷりの玉ネギとトマトを長時間煮込んで作った自家製トマトソースとの相性も抜群です。

ジビエをバーベキューで楽しむことは、肉の質を知ること

ジビエバーガーをいただいている間に、バーベキューグリルの炭火がいい感じに仕上がってきました!お待ちかね「手ぶらジビエバーベキューセット」1人前3,500円(税抜※人数分の注文が必要)の登場です。

こちらは基本的に猪肉&鹿肉とジビエソーセージがセットになっていて、1人前で肉約400gと食べ応え十分(写真は2人前)。

猟師工房ではメニュー名のとおり、必要な道具類はすべてそろっているので、手ぶらで行っても本格バーベキューでジビエを楽しむことができます。
「なるべく遠火で、ゆっくり火を入れるのが美味しく焼くコツです。一気に火を入れると硬くなりますからね」。
北嶋さんのアドバイスを受けて、はやる心を抑えつつ、こまめに肉を返しながら焼き上がりを待ちます。

塩コショウ、タレと調味料は好みで選べますが、肉の違いを感じたいならば、塩コショウでシンプルにいただくのがおすすめです。

実食してまず感じたのは、きちんと下処理がされているために肉本来の味がきちんと伝わってくるということ。焼くだけというシンプルな調理だけに、肉の旨味をダイレクトに感じることができる。それこそがジビエバーベキューの本懐ではないでしょうか。

「今日はたまたまキョン(時価)もあるので、召し上がりますか?」と言いながら、北嶋さんがグリル台に肉を置いてくれました。
「キョン」は、もとは中国南部や台湾からきた特定外来生物で、レジャー施設から逃げ出したことがきっかけで野生化し、現在も増えて続けている鹿の一種です。

丁寧に裏返しながら火を入れたキョンを口へ運ぶと、鹿肉とは違った独特の香りや肉の弾力が感じられ、噛むほどに甘味がにじみ出てきます。
「キョンは醤油を少し付けると、甘さが際立ちますよ」と北嶋さん。

さて、ここまで案内してくださった北嶋さんの前職は、実は東京都内の金属加工会社の社長。実力と実績が認められ、とある人気ドラマのモデルにもなるほどでしたが、体調を崩して社長を退任することに。セカンドキャリアを考えた時、20歳からずっと続けてきた狩猟を生かしたことができないかと考えました。

「自分が幼稚園児だったころから親に連れられて山に入っていましたし、趣味で続けてきた狩猟も26年。交流のある農家の方々から鳥獣被害の話もよく聞いていたんで、なんとかしないといけないと…」。

特筆しておきたいのは、北嶋さんのこの事業が、決して「(狩猟という)趣味の延長」に留まらないということ。「ジビエを食べてもらえばいい」だけならば何時間もかけてソースを自作したり、パテの改良を重ねたり、キッチンカーを作り自分の子供を巻き込んでまで、普及に努めたりはしません。ジビエを本当に美味しいと思ってもらいたい。その結果、鳥獣被害が食い止められるともっといい。

転職前にも地元農家さんの悲鳴に応えて、猪の駆除活動にもできる限り取り組んできたという北嶋さん。余裕がある時にはキッチンカーでジビエバーガーの販売に出かけることもあるそうで、「このピンクの車を見たら『ジビエバーガーだ!』とお客様に思ってもらえるよう、ジビエバーガーが浸透するといいなと思っています」。

「鳥獣被害は深刻な問題なんです。だから、ジビエを食べてもらうことで被害を少しでも食い止めたいんですよ」。
彼が目指しているのはジビエの利活用と地域貢献。そんな心意気を聞きながら食べるジビエの味は実に美味しく、そして応援したいと思わされるものでした。

房総ドライブがてらにジビエを味わい、そしてそれが地域に貢献できる場所。そんな「猟師工房ランド」をぜひ多くの方に訪れてほしいと思います。

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