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路地裏の暗がりで灯をともす京風和食の実力店「博多 ひさご」福岡県福岡市中央区

福岡県 和食 焼肉・ロースト イノシシ
2020.03.27

福岡の天神と中洲の間にありながら、喧騒とは無縁の福岡市中央区春吉。もともと集合住宅の多い土地ですが、独特のひそやかな雰囲気に惹かれるのか、路地のあちこちに個性派・実力派の飲食店が見られます。市内でも独特の色を持つグルメエリアと言えるでしょう。

京都時代の味を受け継ぐ、小さな大人の隠れ家

大通りからさほど距離はないものの、「博多 ひさご」もまた人目を偲ぶ場所にありました。

窓から覗くと、仕事に励む店主・坂本好弘さんの姿が。

女性デザイナーが手がけた内装は、シンプルかつ清潔感ある仕上がり。温もりのある親密な空間です。

京都の名店「熊魚菴 たん熊」で8年間研鑽し、2007年に独立した坂本さん。比較的濃いめの味付けが特徴の九州料理ですが、坂本さんは今でも修業時代の淡く繊細な味を大切にしています。

「和食屋というよりウチは居酒屋です」と笑いますが、素材に出汁を含ませる技術を始め、随所に感じられるのは和食の品格。1品料理には700~1,000円代も多く、リーズナブルな楽しみ方ができるのもうれしいポイント。最近は20代の若い客も増えたそうです。

さっぱりした味だからこそ、重要なのは食材の見極めと、その持ち味を最大限に引き出す技術。
「そのためにもよい食材に巡り合う機会は逃せません。生産者が集まる交流会にはよく顔を出しますね」。

料理の喜びは、よき食材との出合いにあり

坂本さんが納得のジビエに出合ったのも、そんな交流会を通してでした。

仕入れ先は福岡県糸島市。産学官連携でジビエ普及に努める注目の若手生産者から、良質な猪の部位が届けられます。こちらは県産猪の肩ロース。

今日はそれを「猪肉と春野菜の生姜焼き」(1,200円・税込)にしていただきました。

タケノコなどの春野菜を炒めたら、一旦それを取り出し、猪肉を自家製生姜醤油でグツグツ炊くように加熱。立ちこめる甘やかな香りがたまりません!

そこに再び春野菜を加え、一緒に和えれば出来上がり。器にセレクトしたのは、地元福岡で400年の歴史を持つ高取焼です。最大の特徴は七色の釉薬を使うこと。そこから生まれる深い色合いがなんとも美しいです。

ぎゅっと咀嚼するのが楽しい歯応えはジビエならでは。猪そのものの高品質さもうかがえます。シャキッとした春野菜の食感も、楽しい音のハーモニーを奏でます。

ジビエメニューは基本的に日替わり。これまでにもハンバーグ、カツレツ、治部煮風などいろんなスタイルで提供してこられたそうです。「よいものだけを取り寄せるため、狩猟シーズン以外は入荷が減ります。ジビエご希望の方は、事前にご連絡いただけるとありがたいですね」。

ジビエ以外にも美味しい料理の多い「博多 ひさご」。名物の「鯛の土鍋ごはん」(1,500円・税込)もご紹介しましょう。

鯛の骨で取った出汁などを加え、注文後に炊く人気料理。これも京風のさっぱり味ながら、じんわり広がる滋味にウットリさせられます。

豊かな香りと、お焦げのパリパリ感が楽しい1品。余った分は持ち帰りOK。

持ち帰りといえば、手土産に人気なのが「自家製チーズ豆腐」(1,100円・税込)。国産鶏ミンチとクリームチーズを冷やし固めたもので、クセになりそうな珍味です。豆腐を使わないのに、なぜか豆腐の味がするのがなんとも不思議。

確かな腕前で、間違いのない時間を楽しませてくれる坂本さん。料理にひらめきをもたらすような、優れた食材に触れることが一番の楽しみだと話します。

「もちろんジビエもそう。私、昔から大好きなんですよ、ジビエ。絶対に優れた食材なので、ジビエにはもっと広く普及して欲しい。それには普段から均質で値ごろな肉を流通させる環境が必要ですね」。

料理と食材をこよなく愛する坂本さんは「いつか猪しゃぶしゃぶの専門店を開こうかな」と笑います。ちなみに日本酒もレア銘柄が多いので、左党の方も気軽に扉を開けてみてくださいね。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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