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命の瞬間を熟知したシェフが魅せる“本気のジビエ”「LATURE(ラチュレ)」

フレンチ 東京 レストラン
2018.08.03

渋谷駅と表参道駅の中間、宮益坂をのぼった渋谷二丁目周辺は、人気のグルメを求めて夜になると続々と人が集まってくる食通の間では注目のエリアです。そのうちの1軒がフレンチレストラン「LATURE」。

2018年にミシュランの一つ星を獲得しており、味はお墨付き。でもなにより記者が気になったのが、「LATURE」という店名に込められた「自然の雫」という意味。「自然の雫=自然からの恵みへの感謝を忘れていませんか?」というホームページに書かれたお店からのメッセージに惹かれ、青山通りから閑静な並木の通りを入ったビルの地下、隠れ家を見つけたようなドキドキを感じながら、扉をたたきました。

店内は、シンプルながらも所々にこだわりが見られるインテリアで、大人の空間を演出しています。

席1つ1つに通常置かれるサービスプレートに代わり配置されているのは、ドライフラワーを使ったガラスの位置皿。中の草花は入れ替わるそうで、ここからも季節を感じることができます。

インテリアから料理の見せ方までこだわり抜いたプレゼン

いよいよお待ちかねの料理ですが、最初に用意された1品目で、心を撃ち抜かれてしまいました。美しすぎるアミューズ、まさにテーブルの上に再現されたジビエのアート。森に住む動物たちの様子を教えてくれているようです。右から、「鹿マカロン」「鳩のリエット」「猪のタルトレット」「鹿のケークサレ」。

ペースト状にした鳩肉がかわいい鳩型生地でサンドされていたり、タルトの中には猪のベーコンが入っているなど、それぞれにジビエをうまく取り入れています。毛皮や木型のオブジェを使った盛り付けもワイルドさをプラスして、生きているものをいただく贅沢を感じながら楽しむことができました。

オーナーシェフの室田拓人氏は、ジビエ料理ではフレンチの名店「 ヨシノ」の吉野健氏に師事したのちに独立。フランス料理では憧れの最高食材ジビエをもっと極めたいという思いから、自ら狩猟免許を取得しました。

「ジビエは1体1体異なる個性の強い食材。鳩ひとつとっても一つとして同じものは手に入らない、それがジビエです。だからこそ、そのジビエとの出会いを大切に、ここで過ごす時間を意味のある食事にしてほしい。そのために必要なのは、料理にストーリー性を盛り込むこと」だと室田シェフは語ります。例えば、千葉で獲った鳩に添える野菜には同じ千葉県産を選び風土を感じさせたり、小鹿が手に入ったら山菜を添え、野山を駆け巡る姿を想像させたり…。そして、そういった物語をお客様へ説明することも忘れません。シェフとの会話が弾んだ食事は美味しいだけではないより強い印象となって心に刻まれるのです。

続いて、チャーミングなシルエットの料理が運ばれてきました。2品目「ジビエのパテ・アンクルート」です。使われているのは、ヒグマ、鹿、猪、鳩の4種。おとぎ話に出てきそうな見た目に心も踊ります。そのお味は・・・? 個々のジビエが複雑に絡み合い、かなり濃密で野性味あふれる一品。中央のフォアグラを添えて食べればまろやかに、コンソメのジュレと一緒に頬ばればさっぱりとすがすがしい喉越しへと変化するのも、楽しい演出です。

ジビエ料理との一期一会を楽しめる場所

自然の恵みに感謝し独創性を大切にする室田シェフですが、訪れるお客様の経験値によって、提供するジビエの種類や部位、調理法を変えているのだと言います。「ジビエを初めて食べるという方には、あまり癖の強くない素材を選び、ジビエに対する負の警戒心を解くようにしています。ジビエ料理との最初の出会い次第で、ジビエファンになるか否かが決まるからです。一方、何度も食べたことのある方や以前フランスに住んでいたなどでジビエを食べ慣れている方というのは、逆に多少の獣臭さ、野性味がないと美味しさを感じられない。そこをどう見極めるかが、料理人にとってもっとも腕の見せ所だと思っています」。

なるほど、お客様一人一人の好みから体調に至るまで、会話の中から感じとって、フレキシブルに提供するからこそ、訪れた人すべてを笑顔にすることができるのでしょう。

最後にいただいたのは、「キジバトのロースト カカオの赤ワインソース」。こちらも、まるで巣の中を描いたような世界観がお皿の上で再現されています。キジバトは赤身肉でレバーに近い味わいと聞いていましたが、ひと口食べてびっくり。同じ鳥でもいわゆる鶏肉とはまったくの別物。レバーに近い食感はありますが、特有の臭みはまったくありません! 一羽を丸ごとローストしているので、もも肉も中央に添えられたささ身も旨味が凝縮、その弾力と噛むほどに染み出る深い味わいに、すっかりファンになってしまいました。そのままでも十分においしいですが、添えられた赤ワインソース、ナスのピューレ、カカオなどに付ければ、2度3度と違う味を堪能することができました。

ジビエを愛し、ジビエにこだわり、自らの狩猟した命を余すところなく料理につぎ込む室田シェフ。ジビエを一時のブームに終わらせることなく、“和食”のように日本の一つの文化として“日本で食すジビエ料理“を定着させたいと語ってくれました。

今回紹介した料理は、すべてコース料理に組み込まれるものの一例。「希望があればなんなりと♪」と笑顔を見せてくれた室田シェフの言葉から、お客様とのコミュニケーションをなにより大切にする心意気を感じ、店を後にしました。ジビエ料理との一期一会を楽しめる場所、それが「LATURE」。ぜひ最高のおもてなしを味わってみて。