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“イノチヲツナグ”蝦夷鹿レザーグッズ「手作り鞄の専門店 水芭蕉」北海道小樽市

北海道 シカ エゾジカ お土産・テイクアウト 革製品
2021.02.11

北海道開拓の玄関口として発展した小樽港の程近くにあり、観光客でにぎわう堺町通り商店街。旧銀行や旧商店などの歴史的な建造物や土産店などが立ち並ぶこの通りの一角に、「手作り鞄の専門店 水芭蕉」(以下、水芭蕉)があります。

「水芭蕉」は1997年に開業、北海道の職人が生み出す革製品を販売しています。扱うのは牛、馬など…、そして蝦夷鹿の皮革を使った鞄です。

「鹿革の最大の特徴は軽くてやわらかいこと。もともとは牛革をメインに取り扱っていましたが、『革は重たい』というお客様の声があるなかで、軽くてやわらかい鹿革の特性を生かした商品を手掛けるようになりました」とは、店長の丹伊田(にいだ) 晋也さん。

とはいえ当時、店で扱っていたのは海外産の鹿革を使った製品のみ。
「北海道の企業として蝦夷鹿の革製品を作りたいとずっと思っていましたが、そもそも蝦夷鹿の皮革の流通がほとんどない状況でした」と言います。

上質な蝦夷鹿の革との出会いで長年の思いが結実

「水芭蕉」が手掛けるオリジナルブランド「エゾシカレザー」のシリーズは、蝦夷鹿の革を使ったレディースバッグです。

「ワンスターポシェット」(34,100円・税込、写真左)は、長財布がすっぽり入るサイズ感が便利なショルダー掛け。サイドに星型をあしらっています。重さはたったの210ℊ。クリの実をイメージしたコロンとしたフォルムがかわいいのは「マロンショルダー」(69,850円・税込、写真右)。正面にデザインされた「Deer=鹿」の「D」から顔を出しているバンビが洒落ています。縦23×横20~32×奥行き23cmと大きめでも重さ480ℊというのは、鹿革ならでは!

牛革と比べてやや値が張りますが、それは蝦夷鹿の皮革の流通量の少なさが影響しているから。北海道全体で60万頭以上の蝦夷鹿が生息しているといわれ、年間10万頭以上の蝦夷鹿が捕獲されています。しかし活用されているのはまだほんの一部で、主に食肉への活用にとどまっているのです。

「我々が取り扱っている革製品は食肉の副産物です。海外では食肉用の鹿農場があるため、海外産の鹿革は傷が少なく品質が安定したものが入手しやすい。しかし蝦夷鹿は“野生”です。森で生きている中で、または捕獲される際などに受けた傷が多いことが、製品化するのにひとつの壁になることも」(丹伊田さん)

ジビエが注目されたことから鹿革の流通量も微増したものの、納得した品質のものはなかなか出てこなかったそう。そんな状況を変えたのが、エゾシカレザーメーカー「EZOPRODUCT(エゾプロダクト)」との出会いでした。

失われた命を受け止め、レザー製品として新しい命を紡いでいく

「EZOPRODUCT」は、北海道にある蝦夷鹿専門のレザーメーカー。皮革の物流、製造、企画などを手掛け、蝦夷鹿の皮革利用の分野では最も古いメーカーの一つです。

「初めてEZOPRODUCTの革に触れた時、鹿革の長所“軽さ・やわらかさ”にこだわっていて、品質もよく、今まで見た蝦夷鹿の革とはまったく違うことに驚きました。また、“イノチヲツナグ”という事業コンセプトにも感銘を受けています」(丹伊田さん)

「EZOPRODUCT」は失われた命を大切にし、革製品として新たな命を吹き込み“イノチヲツナグ”ことを信条に、野生動物との共生を目指して16年前から活動。代表の菊地 隆さんはNPO団体「エゾシカ利活用協議会」の代表も務め、全国の自治体や企業・学校などで講演も行っています

品質のよい革製品を作るには、野生である蝦夷鹿の原皮(なめす前の状態の皮)をいかによい状態で調達できるかがカギとなりますが、こうした活動が認知され「理念を理解してくださっている10か所ほどの食肉処理施設から原皮を仕入れているので、蝦夷鹿の中でも傷が少なく状態のいいものが入手できています」と菊地さん。

また「ウエア、バッグ、家具など用途によってなめし加工の仕上がりを変えている」ことも、品質が高い理由の一つ。「蝦夷鹿の皮革はやわらかくて軽く、触った時の質感がフワっとしているんです。丸みがふっくら出るので、女性向けのデザインによく合うんですよ」(菊地さん)

信頼と技術力で上質な皮革を提供するレザーメーカーとの出会いがきっかけとなり、「水芭蕉」が商品の企画を立て、「EZOPRODUCT」がデザイン、サンプルを作り、細かな調整を加えながら製品が2018年に完成。「エゾシカレザー」シリーズの誕生です。

現在の商品はブラックが主ですが、写真のラベンダー(左)とミントグリーン(右)も店頭販売のみで展開中(オンライン販売はブラックのみ)。このカラーのオーダーは「難しかった(笑)」と菊地さん。「蝦夷鹿の革はその繊維構造上、色がぼけやすく、ムラも出やすい」とのことで、自然の染料を使ったタンニンなめしにこだわり試行錯誤を繰り返したとか。
「実際に触れるとその軽さ、やわらかさ、手触りのよさに驚かれるはず。蝦夷鹿革を知っている方からは、こんなよい革を見たことがないと絶賛されます」
そんな丹伊田さんの言葉からも、商品への自信が表れていました。

北海道発の2つの企業が共鳴し合い、鞄として生まれ変わった鹿の命。思いの詰まったこのアイテムをあなたの愛用品にも加えてみませんか?

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