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郷土の味を盛り込んだジビエ料理と、うだつの町と伝統工芸体験も満喫する徳島の旅

徳島県 和食 ホテル・旅館 焼肉・ロースト ハンバーグ 天ぷら・揚げ物 シカ イノシシ ランチ コース
2019.03.29

四国の東端、徳島県。剣山をはじめとした山々には緑があふれ、雄大な吉野川が流れ、自然の恵み豊かな土地に文化と産業が息づく、魅力あふれる地域です。今回、旅をするのは、世界25カ国以上を旅する経験を持つ、モスクワ出身、イギリス在住のアナさん。ジャーナリストとしてもBBCやForbesなどイギリスの主要メディアに、サイエンスをテーマにしたものなどをはじめ、多数の記事を掲載し、幅広く活躍しています。ブログやInstagramも知的な文章と美しい写真による情報発信でファン多数。

そんなアナさんは日本の大ファンで、ロンドンの語学学校の日本語上級コースに通い、昨春は桜の季節の日本を満喫するために京都や東京を周遊したほど。日本文化への理解、関心も高いアナさんが、1泊2日、歴史と伝統が息づく徳島をめぐり、ご当地ならではのジビエ料理も味わう旅へと向かいます。

 

歴史ある伝統芸能・阿波おどりを体感する施設へ

瀬戸内海に面する、徳島市の中心市街に到着したアナさん。日本の文化に触れる旅の始まりとして、徳島発祥、日本三大盆おどりの一つで、約400年の歴史があるといわれる伝統芸能、「阿波おどり」を体感すべく、「阿波おどり会館」へと足を運びます。「春に訪れた京都では『都をどり』を見ました。阿波おどりはどう違いがあるのか知りたい」と、アナさんは言います。

まずは館内の3階にある「阿波おどりミュージアム」へ。展示されている衣装や鳴り物、資料に興味津々のアナさん。続いて、阿波おどりの体験もできる2階の「阿波おどりホール」で行われる公演を見学。にぎやかなお囃子の響きとともに踊り手がステージ上に現れ、100年ほど前に踊られていた古い型の阿波おどり、戦後の混乱期の阿波おどり、進化した現代の阿波おどりと、3種類の踊りが披露されました。

「『都をどり』の優雅さに比べて、『阿波おどり』はパワフルで陽気ですね。女性の衣装もユニークで、とんがった笠やつま先の土台部分がない下駄のデザインは、すべて踊りを格好良く見せるためというのも面白かったです」と感想を話し、満足した表情を浮かべていました。

「阿波おどり会館」の5階は、市街を見下ろす眉山へと続くロープウェイの駅にもなっており、山頂駅までは約6分。瀬戸内海を望む開けた景色も楽しむことができます。

阿波おどり会館
住所:徳島県徳島市新町橋2-20
TEL:088-611-1611
公式サイト:https://awaodori-kaikan.jp/

 

「うだつの町並み」を人力車に乗って散策

次に向かったのは、先ほど眉山山頂から眺めた吉野川をさかのぼった先にある、徳島県西部の美馬市。国の重要伝統的建造物群保存地区になっている、脇町の「うだつの町並み」が目的地です。

「うだつ(卯建)」とは「うだつが上がらない」のことわざでも知られていますが、江戸時代などの古い民家の建物の両側に張り出した、小さな屋根付きの壁のこと。当初は防火目的、ただ設置に多額に費用がかかることから装飾の意味が強くなり、だんだんその家の富の象徴になっていきました。豊かな家でなければうだつを上げられなかったことが、「出世ができない」といった意味になったといわれています。脇町の「うだつの町並み」は、そんなうだつのある、江戸時代中期からの風格を感じさせる家々が立ち並び、壮観。街を少し歩くだけで、まるでタイムスリップしたような気分に誘ってくれます。

アナさんがこちらで体験したのは、人力車で見どころをめぐるプログラム。人力車は東京・浅草が本拠地の「福ろう屋」が美馬市の脇町に進出し、2019年春から本格的に始動する新しい試み。うだつの町並みはもちろん、近くの吉野川の潜水橋なども案内してくれます(1km約12分・税込4,000円~。うだつの町と潜水橋を回るコースは約45分・税込1万3,500円)。

「非日常的な体験ができてとっても楽しかった! うだつの町並みはもちろん、山と川が映える自然も美しかったですね」と、乗車後にアナさんは感動を伝えてくれました。

うだつの町並み
住所:徳島県美馬市脇町大字脇町45-1
TEL:0883-53-3066(美馬市観光交流センター)
公式サイト:http://www.city.mima.lg.jp/kankou/kankouannai/miru/kouryu-center.html

 

農村のお母さんたちが作る絶品鹿肉料理

本日のディナーとして予約していたのは、「交流促進宿泊施設 美村が丘」。雄大な阿讃山地を望む丘の上に立つ施設で、「今は料理作りをはじめ、地域のお母さんたちがみんなで管理運営しているんですよ」と、代表の祖父江利江さんは話します。4年ほど前から始めた鹿肉の料理が評判を集めています。

今回味わうのは「鹿肉の炭火焼きと竜田揚げ定食」(税込2,000円)。使っているのは、県内の主に剣山などの山間地でとれた新鮮な鹿肉です。徳島県では「阿波地美栄(あわじびえ)」と名付け、ジビエ料理の普及と消費拡大に取り組んでおり、鹿や猪の肉の処理衛生管理ガイドラインも厳しく設けています。県内には処理施設が5つあり、こちらで仕入れているものもその施設から届く鹿肉です。

テーブルの上一面を彩る数々の料理に、アナさんは感嘆。まず箸を伸ばしたのは、「鹿肉の炭火焼き」です。「鹿肉はロースやももなどの塊肉から、提供直前に切り出して、家の畑で育てたバジルをまぶし、オリーブオイルでコーティングしてあります。こうすると香りが良く、柔らかくなるんですよ。焼肉のたれは醤油や味噌、すりおろしたリンゴや玉ねぎを使った自家製です」と、祖父江さん。焼き上がった鹿肉をほおばるアナさん。「熱々でおいしい!このソースが良く合います」と言います。

続いてもう一つの鹿肉メニュー、「鹿肉の竜田揚げ」をパクリ。片栗粉と小麦粉を混ぜ、生姜やニンニク、お酒、卵などを加え、生地を一晩寝かせているのがポイント。油でカリッと揚げています。「日本の天ぷらなど揚げ物料理は大好きなんです。カツレツに似ていて食べやすいですね」とアナさんは言います。

鹿肉のメニュー以外にも、ひと口大に切って塩でもみ、洗って水を切って甘酢で和えた「レタスのもみ菜」、地元産の阿波尾鶏でだしを使い、そばの実や根菜で作る郷土料理「そば米雑炊」、もっちり感が絶妙な「小キビご飯」など、地元ならではの美味が揃います。

「鹿や猪の肉は、仕事でスカンジナビア圏に行くことがあり、現地でよく食べます。炭火焼きは北欧のような分厚いステーキではなく、薄く切ってあって食べやすく、こちらのほうが好み」とアナさん。祖父江さんはじめお母さんたちのおもてなしを受け、おなかも心も満たされる夕食を満喫しました。

交流促進宿泊施設 美村が丘
住所:徳島県美馬市脇町字東大谷18
TEL:0883-52-5650
公式サイト:http://www.chidori.co.jp/mimura/

 

ディナー後、脇町に戻り、うだつの町並みの中にある旅館「うだつの縁が和 ぜにや」にチェックイン。もともと旅館を営んでいた「うだつの縁が和 ぜにや」は、代表の銭谷辰也さんが明治時代から続く建物の、阿波産の杉をふんだんに使った梁と柱をそのまま生かして改築し、2年前にオープン。部屋は3部屋のみの贅沢な造り徳島の夜はゆったりと過ぎ、アナさんは旅の疲れを癒しました。

うだつの縁が和 ぜにや
住所:徳島県美馬市脇町大字脇町170
TEL:0883-52-8655
公式サイト:http://udatsu-zeniya.com/

 

徳島の伝統産業・藍染の体験に夢中に

明くる日、アナさんは宿からも近い「美馬市観光交流センター 藍染工房」へ。実演とガイド役を務めるのは、根本ちとせさん。「徳島は藍染に使う染料、『蒅(すくも)』の一大産地。もともと吉野川は暴れ川で、台風が来る前に刈り入れができる、原料のタデ藍が広く栽培されていました。江戸時代に需要が高まり、徳島の『蒅』は『阿波藍』と呼ばれ、日本中で人気に。藍の商売でうだつの町が栄えたんですよ」と、歴史も解説してくれます。

今回アナさんはハンカチーフの藍染を体験(税込1,500円)。藍染の鍵になるのは、蒅に灰汁や酒などを混ぜ、約10日かけて作るアルカリ性の染料液です。その液に生地を浸し、絞った後に、空気中や水中の酸素に当て、酸化還元反応を起こすことがポイント。この反応により、繊維に青の色を定着させます。

まずはハンカチーフの柄として、アナさんは渦巻き柄を選択。生地の好きな場所に中心を決め、そこをつまんでグルグルと渦巻くように生地を丸めて、その状態のまま、染料液に浸し、1分ほどしたら上げて絞ります。今回はこの工程を5回繰り返します。液から上げた際は、空気がより生地の中に入り込むよう、生地を少し動かした後、整え直すなどの細かい作業をすると、よりきれいに染められます。

「空気に触れない部分が白くなるんですね」と、科学が専門とあって理解も早いアナさん。「手つきが細やかでとっても丁寧ですね。良い色が出ています」と、ガイド役の根本さんも太鼓判。自分で染め上げた阿波藍のハンカチーフをおみやげに、アナさんはうだつの町を後にしました。

美馬市観光交流センター 藍染工房
住所:徳島県美馬市脇町大字脇町45-1
TEL:090-3188-3711
営業時間:9:00~16:00
定休日:第2水曜
公式サイト:http://www.city.mima.lg.jp/kankou/event/h29-p/2017-0621-1142-313muryouaizome.html

 

山間の農家レストランでジビエランチ

藍染を終えて、ちょうどお昼時。ランチに向かったのは、山間にある民宿兼、農家レストラン「民宿 うり坊」。狩猟免許を持つご主人の木下正雄さんが捕獲し、処理施設で加工した、猪や鹿肉を使った料理が味わえます。

「民宿 うり坊」の前に広がるのは、木下さんの一族が代々、数百年にわたって受け継いできた畑です。畑のうねを等高線上に沿って作り、水を巧みに畑の中の土にめぐらすことで、土の中の微生物が活性化。「できた野菜は格段に風味が良く、甘くなり、日持ちもするんですよ」と木下さん。この「傾斜地農耕システム」は「世界農業遺産」にも認定されたと言います。

そんな木下さんの手による猪や鹿肉、野菜をふんだんに使った「ジビエコース」(税込4000円~)のメインが、「猪のしゃぶしゃぶ」。「このあたりの阿讃山地は山が豊か。ドングリやキノコをたくさん食べて育った猪は臭みがまったくなく、昆布だしのシンプルなしゃぶしゃぶにするのがおすすめです」と、木下さんは言います。お肉は薄く切ったロースを使用。スダチの自家製ポン酢をつけていただきます。「豚などの他の肉に比べて、フレッシュな味わいでおいしいです」とアナさんも絶賛。

すると、ご主人の木下さんがいきなりのクイズを出題! 「この2つのハンバーグ、片方は猪で、もう一つは鹿が材料。当てられるかな?(笑)」という問題を受け、アナさんはそれぞれ一口味わった後、比較的、中の肉の色が濃い方を指し、「こちらが鹿ですね」と回答。

「正解!すごい!! 気に入ったから君、今日は泊まっていきなさい(笑)」と、木下さん。北欧諸国などでジビエを何度も食べたアナさんには易しい問題だった様子。会話にも花が咲き、「民宿 うり坊」オリジナルのワインもいただきつつ、楽しい時間を過ごしました。

民宿 うり坊
住所:徳島県三好郡東みよし町東山内野29
TEL:0883-79-5226

最後に向かったのは、「阿波和紙伝統産業会館」。和紙漉きの体験ができる施設です。案内をしてくれたのは、施設のスタッフで英語も堪能な阿部拓直さん。伝統ある「阿波和紙」の成り立ちや、原料から完成にまで至る実際の和紙の製造工程を、阿部さんの丁寧なガイドとともに、見学しました。

もちろんアナさんは和紙漉きにもチャレンジ(はがき判3枚、または半紙判2枚・各税込500円)。色が入った和紙を組み合わせるなどして自由に半紙を作る体験では、「家でよく料理をするんですが、クッキー作りにちょっと似ています。この星の型なんてそのままかも」と楽しそうに話し、作業に没頭。自分で漉いた完成品の和紙を、こちらでもおみやげとして持ち帰りました。

阿波和紙伝統産業会館
住所:徳島県吉野川市山川町川東141
TEL:0883-42-6120
営業時間:9:00~17:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
公式サイト:http://www.awagami.or.jp/

 

充実した旅を終えたアナさん。「2日間、堪能しました。都会の東京や歴史ある京都とはまた違う、日本の魅力を知りました。体験を通じ伝統や文化を知ることができたのはもちろん、観光客向けに作られたツアーにはない、リアルな日本の日常の姿を垣間見られた気がします」と、振り返ります。

また、ジビエについては、「ジビエは他の国でも食べますが、個人的に日本の料理の仕方は大好き。特に今回は2つのお店どちらでも家庭料理や郷土の味で、ジビエを楽しめました。ジビエを含めたこんなにたくさんの種類の肉が日本で食べられるとは思っていませんでした」と、新鮮に感じたことを話すアナさん。最後に、「ジビエってフランス語ですよね。英語ではワイルドミート、またはゲームミートと言います。日本でジビエの方が浸透しているのも面白いなと思いました」と言う、アナさんならではの知的な視点での感想も印象的でした。

・アナ(Anna)Instagram

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