日本の古き良き文化に触れる、高感度なツアー! 鳥取・中部をめぐり鹿・猪も味わい尽くす旅
山々に紅葉が残る冬目前の時季に山陰の鳥取へ、日本の伝統に触れ、ジビエを味わうツアーへ。旅をするのは、フランスで人気のライフスタイルコミュニティウェブサイト「Paris Insider」のライター、クロエさんとクレアさん。「Paris Insider」では世界各地の最新トレンドから穴場スポットなどの情報を発信。Instagramでもファンが多く、人気を集めています。今回2人は日本初訪問。古き良き文化を体験する旅をコンセプトに、1泊2日、鳥取県の中部を中心にめぐります。
幻の海老も味わえる、人気の海鮮料理店で名物丼
「鳥取といえば『デューン』。砂丘がきれいですよね」と事前に調べたことを話すクロエさん。他に鳥取はシーフードも有名というリサーチから、まずは琴浦町にある道の駅「ポート赤碕」へ。地元でとれた海産物の直売所があり、この時季は鳥取県西部の境港から届くズワイガニが所狭しと並べられています。
時間はちょうどランチタイム。道の駅の隣にある人気店「魚料理 海」にうかがいます。店名通り、ここから海側に下りたすぐの場所にある、赤碕漁港の新鮮な魚介を使った料理が自慢。なかでも名物は「鳴り石丼」(税込1,650円)。近くの名所「鳴り石の浜」の名を冠した海鮮丼は、鳥取と兵庫の一部でしかとれない幻の海老・モサエビをはじめ、ハマチやサワラなど旬の魚介を5種類ほど盛り込んだ一杯。醤油ベースの特製のたれがあとを引きます。2人ともそのボリュームとおいしさに驚いていました。
魚料理 海
住所:鳥取県東伯郡琴浦町別所267−1
TEL:0858-55-0889
営業時間:9:30~21:00(LO20:30)
定休日:無休
公式サイト:http://www.toraz.jp/~akasaki/pg136.html
レトロな湯の街の風情に浸れる三朝温泉を散策
おなかを満たした後は一路、南東へと車を走らせます。車中からは紅葉と常緑樹のコントラストが鮮やかな山々が眺められ、「ビューティフル。ヨーロッパより木々の色合いがカラフルですね」とクレアさんは言います。
40分ほどして到着したのは、約850年もの歴史がある三朝温泉。温泉街の中心を三朝川が流れ、街のシンボルでもある三朝橋と、本日の宿泊先である「旅館大橋」など2つの旅館、南苑寺というお寺が国の登録有形文化財に指定されており、歴史を感じさせる街並みが広がります。クロエさんとクレアさんの2人は、どこかレトロな、日本ならではの湯治場の雰囲気が漂う街の風情を新鮮に感じ、自然とカメラを構える回数も多くなります。
ここで2人のガイドをしてくれたのが、三朝町役場観光交流課で国際交流員として勤務するフランス人のアラン・マリーさん。18~20世紀の珍しい床屋グッズを展示する「梶川理髪店・理容資料館」や、射的などが楽しめる「泉娯楽場」、椋の木のご神木があり静けさに満ちた「三朝神社」など、彼女が案内するスポットに興味津々。「藤井酒造」では国際コンテストで高い評価を得た日本酒の試飲も楽しみました。
三朝温泉
住所:鳥取県東伯郡三朝町三朝
TEL:0858-43-0431(三朝温泉観光協会)
公式サイト:http://spa-misasa.jp/
鹿肉を絶品和食のフルコースに
夕闇が迫る頃、2人は本日のディナーをいただく「国民宿舎 山紫苑」へ。味わうのは、いなばのジビエ堪能和食フルコース「鹿の会席」(税込3,564円)です。実は鳥取県は、鹿肉の食肉利用量が北海道に次いで全国2位(平成29年度・農水省調べ)。特に、鳥取県東南部の森林に囲まれた若桜町にある「わかさ29工房」は、全国でも4指に入る鹿肉の処理量を誇る施設で、徹底した衛生管理と高い処理技術でニホンジカの肉を加工。東京や大阪の有名レストランからも高い評価を受け、注文も数多く舞い込んでいます。
「わかさ29工房」から仕入れる上質な鹿肉を、巧みに調理するのが、料理長の大羽賢さんです。大羽さんは、2人の本日の宿泊先の「旅館大橋」の料理長であり、「現代の名工」や「黄綬褒章」を受賞した知久馬惣一さんに師事した経歴がある、熟練の和食料理人。試行錯誤を重ね、鹿肉を8品で使った全10品の和食コースに仕立てます。
最初の一品、先付は「鹿のぬた和え」。「外もも肉をマイタケで挟み、真空パックして4日間寝かせています。マイタケに含まれるタンパク質分解酵素にお肉を柔らかくする作用があるんです。切り出して片栗粉を打ち、油で揚げ、辛子酢味噌と和えました」と、大羽さんが料理について細かく解説すると、クロエさんとクレアさん、ともに感心した様子。
続いて、台物「鹿肉のつみれ鍋」、凌ぎ「鹿ローストの握り寿司」と続きます。「鹿肉は表面に焼き目をつけ、湯煎をかけています。低温調理による最適な温度の火入れで、とにかく柔らかく仕上げました」(大羽さん)。次の蒸し物「鹿肉茶碗蒸し」ではかみ応えのあるシキンボウという部位を、そして蓋物「鹿と野菜の炊合わせ」ではロース肉を使用。
「炊合わせのロース肉はすりおろしたリンゴや醤油などの調味料と一緒に、蒸し器で加熱し、じっくり蒸し煮込みし、味を含ませています。鳥取の方言では『ごちそう』を『ごっつお』と言いますが、鹿肉というのは『森のごっつお』ともいわれていまして、地元のキノコや野菜との相性も良いんですよ」と、大羽さんは続けて説明してくれます。
焼物として提供されるのは「鹿のロースト」で、大羽さんが「柔らかい肉質で、個人的にも好き」と話す、お尻の上部分のランプ肉を使用しています。最後の鹿肉メニューが、特別に作られた吸物「鹿節の清汁」。20キロの内もも肉を鹿児島県・枕崎のかつお節生産者に頼み、鹿節にしたところ、完成品はなんと10分の1の2キロ。その希少なだしを使った、上品な旨みの一杯に、2人は舌鼓を打ちました。
クロエさんは、「日本の鹿肉はフランスに比べ、あっさりしている印象があり、味付けは全体的に甘め。食文化の違いが興味深かったです」と感想を話します。ワインも楽しみ、美食に大満足の2人でした。
国民宿舎 山紫苑
住所:鳥取県鳥取市鹿野町今市972−1
TEL:0857-84-2211
公式サイト:https://www.sanshien.jp/
重要文化財に宿泊し、蔵のある街へ
夕食の後は、三朝温泉に戻り、「旅館大橋」に宿泊。客室一つ一つ造りが異なり、例えば「南天の間」には南天の木、「桜の間」には桜の木など、部屋ごとに銘木を使っているのが特徴です。ラジウム泉に加え、珍しいトリウム泉の温泉も噴出しており、粋人がこよなく愛した旅館として知られています。日本の伝統的な建築を目の当たりにした2人は、「今度は家族と来たい」と話していました。
旅館大橋
住所:鳥取県東伯郡三朝町三朝302-1
TEL:0858-43-0211
公式サイト:https://www.o-hashi.net/
翌朝、2人が向かったのは、鳥取県のほぼ中央にある倉吉市。室町時代に城下町として形作られ、江戸時代には商業の街として栄えた歴史があります。街の中を流れる玉川沿いには、白い漆喰壁に黒の焼き杉板、そして屋根には赤い石州瓦を使った、「白壁土蔵群」と呼ばれる建物が立ち並びます。
独特の美しい景観の中、散策を楽しむ2人。フランスでは倉吉の「白壁土蔵群」を題材とした谷口ジローの漫画『遥かな町へ』が評価され、映画化もされており、多くの人に知られています。途中、インド風のモダンな本堂がある「大蓮寺」で鐘を鳴らしたり、手織り伝統工芸品の工房「くらよし絣」を見学したり、石臼珈琲が名物のカフェ「久楽」でひと休みしたり。2人は気ままな寄り道をしながら、のんびりとした時間を過ごしていました。
白壁土蔵群
住所:鳥取県倉吉市魚町2568-1(倉吉観光マイス協会)
TEL:0858-43-0211(倉吉観光マイス協会)
公式サイト:https://www.kurayoshi-kankou.jp/shirakabe/
贅沢な猪ぼたん鍋をランチで楽しむ
昼食は鹿肉と並ぶジビエの代表食材、猪肉を味わうため、35年前から名物として「猪ぼたん鍋」を提供している、同じ倉吉市の「松風荘旅館」へ。使用する猪肉は、もちろん県内産。捕獲してから1時間以内に処理施設に運ばれて加工された、新鮮で質の良い肉にこだわっているそう。
「うちの猪ぼたん鍋は、脂身が甘いバラと、柔らかいロースの2種類を使います。特製の味噌だしでぜひ味わってみてください」と、「松風荘旅館」3代目・矢嶋健二郎さん。このだしがまた絶品!かつお昆布のだしに酒を加え、砂糖、薄口しょうゆ、みりんで味付け。決め手の味噌は、近くの味噌蔵「坂田味噌糀食品」の田舎味噌と白味噌を混ぜて使用しています。
鍋にはまずゴボウを入れ、良く煮込んでから、猪肉と野菜を加えていきます。白ねぎに春菊、水菜、キノコ類など盛り沢山。相性抜群なのがほっくりとした大根と、豆腐ではなく厚揚げ。猪の甘い脂と旨みを吸い、格別のおいしさです。
この「猪ぼたん鍋セット」(税込3,780円)のほかに、その時だけの猪料理を盛り合わせた、「猪アラカルト3種」(税込・1,620円)も名物。粉チーズのパルミジャーノとパン粉をまぶして揚げたロース肉のカツレツや、バラ肉のハーブ焼き、もも肉のコンフィなどが楽しめます。
「フランスでは、日常的にジビエを食べるファミリーも多くいます。自分の家族も鳥類を食べることがありますね。日本の猪のこの鍋は味付けが濃厚ですね」と、クロエさんは言います。
松風荘旅館
住所:鳥取県倉吉市瀬崎町2751-1
TEL:0858-22-6363
公式サイト:https://www.sirakabe.jp/
贅沢なランチを堪能した後、2人は日本の伝統的な酒造りを見学するため、「梅津酒造」を訪問。5代目の梅津雅典さんが酒蔵の中を案内してくれました。梅津酒造の最大のこだわりの一つが、日本酒は、原料に米と水だけを使い、醸造アルコールや糖類などを添加しない、純米酒のみを造っていること。
「アルコール添加したお酒を飲むと、頭が痛くなるという方は多く、自分もその一人。見学を受け入れているのは、純米酒と、お燗することでさらに増す、そのおいしさを伝えたいだけなんです」と、梅津さんは優しい笑顔で話します。近年まで、日本酒はフルーティーな香りを持ち、主に冷やで楽しむアルコール添加されたものばかりにスポットが当たっていましたが、最近は燗することで旨みが花開く、純米酒もブームになりつつあります。「鳥取は全国的にも純米燗酒の聖地として評価されているんですよ」と梅津さん。小さなタンクで優良な清酒酵母を造る「酛(きもと)」の工程や、その後、大きなタンクで仕込まれる「醪(もろみ)」などを見学しながら、酒造りや日本酒の現状をうかがう、有意義な時間。
梅津酒造が造る、清酒の代表銘柄の「冨玲」のほかに、特産物の長芋を使った本格焼酎「砂丘長いも焼酎」、地元の農家でしか栽培されていないジューシーな梅で仕込む良熟梅酒「野花」など、数々のおいしいお酒の試飲もさせてもらいました。
梅津酒造
住所:鳥取県東伯郡北栄町大谷1350
TEL:0858-37-2008
公式サイト:http://umetsu-sake.jp/
この2日間を振り返り、「伝統的な文化が残る日本の一地方である鳥取を訪れてみて、あらためて日本の豊かさに驚きました」(クレアさん)、「魅力的な観光資源の一つとしてジビエがあることが、今回の旅でわかりました」(クロエさん)と、2人は感想を話してくれました。
今回の旅はここで終わり。けれど、2人はフライトまでの時間を有効活用して、鳥取砂丘まで足を伸ばすとのこと。パリの女性ライターの好奇心は、とどまるところを知らないようです。
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協力:鳥取県フィルムコミッション(JFC) 、鳥取中部観光推進機構
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