飲食店、ショップを探す
飲食店

白山信仰の中心で150年守り続ける山のご馳走を堪能「和田屋(わたや)」

旅館 石川 シカ クマ
2020.10.17

JR金沢駅から車で1時間ほど。石川県白山市の旧鶴来町(つるぎまち)地区は、富士山、立山と共に「日本三霊山」とされる白山の入口となる山あいの小さな町です。この町の中心にあるのが、創建2100年を数える白山信仰の総本社「白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)」です。

そんな歴史ある境内の一角にあるのが、今回ご紹介する料理旅館「和田屋」。宿泊はもちろん、食事のみでも利用することができます。白山比咩神社の北参道の大鳥居をくぐると、広大な駐車場の真正面に表玄関が見えてきました。

神社の境内は起伏の大きな丘陵地になっていて、門から入り中庭に沿ってなだらかにカーブを描く坂を少し下りた先に「和田屋」の本館があります。参拝者が行き交う神社のにぎわいもここまでは聞こえず、ひっそりとした山の静けさに包まれた空間です。

「和田屋」が暖簾を掲げたのは慶応年間のこと。それから150年余、時代が移っても変わらない静かなたたずまいで、川魚や山菜料理など山の恵みを味わわせてくれます。ジビエも古くから地元の郷土料理として提供。近年では『ミシュランガイド富山・石川(金沢) 2016 特別版』で、白山市の旅館では唯一の一つ星店として掲載されるほど。

暖簾の前で、和田屋6代目女将の和田 智子さんがお出迎えをしてくださいました。

受付は広く、日本的な建築物に癒されます。

窓側には、「和田屋」がおすすめするオリジナル商品が陳列されています。

素敵な文字や絵が添えられているポップをはじめ、お席で出されるお品書きなども、すべて女将さんが書かれたもの。子どものころから書を学んでいたそうです。

館内の待合には、庭を楽しめる囲炉裏スペースなどがあります。

お料理をいただくお部屋は、創建時から最小限に手を入れて維持してきたという落ち着いた和室で、鮎などを目の前で焼いてもらうこともできる昔のままの本物の囲炉裏が備わっています。

窓一面に広がるのは日本庭園。聞こえてくるのは風の音、鳥の声、木々のざわめきだけ。都会の喧騒を忘れ、四季の移ろいを感じさせくれます。

今回の料理を担当してくださったのは、料理人歴18年目という「和田屋」の料理長、関 直斗さんです。白山の地元の素材を生かした料理を、多くの人に味わって楽しんでほしいと語る関さん。ジビエの研究にも熱心で、白山市にある県内初の食肉処理施設にも足繁く通い、施設の方々とも協力してさまざまな意見を出し合いながら、白山ジビエの新たな魅力の創出に取り組んでいます。

さっそく調理場へお邪魔し、見学させていただきました。

無駄のない動きで、美しい料理の品々が手際よく盛り付けられていきます。

今回ご用意いただいたのは、3品。ジビエ会席コース(1人前15,000円・税抜・サ別)とリクエスト可能なコース(1人前20,000円・税抜・サ別)を希望した場合のメニューの一例です。料理は完全予約制でコースのみですが、予算と料理内容の希望にきめ細かく対応してもらうことができます。
※別途、席料1名500円(税抜)が必要です

伝統料理の枠を超えた白山ジビエ

一品目は涼しげなスイレンの葉に乗った宝珠をイメージさせる印象的な「月の輪熊煮こごり」(1人前)です。伝統的な味を生かしつつも、枠にとらわれない創造性に富んだアレンジで舌でも目でも楽しませてくれます。氷でキリッと冷やされた出汁と熊肉のハーモニーが食欲を掻き立てます。

そしてメインは「鹿のロースト夏野菜サラダ仕立て」(1人前)です。厚めにスライスした鹿の内モモ肉を温度を保ちながらじっくりとローストすることで、旨味をギュッと閉じ込めています。

しっとりとやわらかく仕上がった鹿肉は、スッとほどけるような噛み心地。噛むほどに鹿の赤身肉の濃厚な旨味がたっぷりと口内に広がっていきます。美しく盛り付けられた色鮮やかな夏野菜は、ツルムラサキ、ナス、クロイチジク、ハナオクラと、そして白山市の名物の固豆腐(木綿豆腐よりもはるかに硬くてどっしりとした豆腐)です。鹿肉と野菜を一緒に頬張ると、鮮烈な味わいの夏野菜と、どっしりした鹿肉の旨味を、山菜ドレッシングのフルーティな酸味でまとめ上げ、全体を一回りも二回りも豊かな風味に引き上げてくれます。

〆には、豪快な「子熊のスペアリブ」が運ばれてきました。こんがり焼けた肉の強い旨味があふれ出して口いっぱいに広がり、鼻腔からほのかな野趣の香りが抜けていきます。ジャガイモと山菜のソース、白山市の山間部で栽培されている大きな「木滑なめこ」のソテーが添えられています。

三品とも日本料理に裏打ちされたしっかりとした味と、美意識を感じさせる盛り付けが魅力的で、「ジビエを食べたことのないお客様に美味しさを伝えたい」という関料理長の真摯な姿勢と情熱が伝わってくるようでした。

ほかにもお肉を囲炉裏で焼いたり、ジビエのいろいろな楽しみ方を提案してくれたりするとのことですので、予約の際、それぞれの好みを相談してみるとよいでしょう。

白山ではお正月やお祝い事などの大切な席で、昔からジビエがご馳走として並んできたそう。伝統を守りながらも、常に新しい味を生み出してきた「和田屋」のジビエ料理。金沢を訪れた際などには少し足を伸ばして、静かな自然の中で「和田屋」のおもてなしと美味しいひと時を味わってみてはいかがでしょうか?

続きを見る