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その食材がどう育ったのかを自らの目で確かめ、それぞれの食材で物語を紡ぐ「Vin et cuisine ヒヒヒ」宮城県仙台市

宮城県 フレンチ 焼肉・ロースト シカ スープ 煮込み パテ ミシュラン
2021.03.10

宮城県のJR仙台駅から徒歩15分、仙台市営地下鉄東西線青葉通一番町駅からは徒歩8分。駅前の喧騒から離れた閑静な北目町交差点にたたずんでいるのが、「Vin et cuisine ヒヒヒ(ヴァン エ キュイジーヌ ヒヒヒ)」(以下、ヒヒヒ)。2017年には『ミシュランガイド宮城(仙台)』で、ビブグルマンの評価を得ています。

「ヒヒヒ」という一度聞いたら覚えてしまう個性的な店名には、「訪れる人がみんな、ヒヒヒと笑顔になれる店にしたい」との想いが込められています。

お店の中へ入ると、真っ白な壁に木目調のカウンターや家具、点在する観葉植物などが気取らないナチュラルな印象を与えます。

通常は、テーブルが5卓20席、カウンターに5席が設けられていますが、新型コロナウイルスの影響で席数は減らして営業しているとのこと。

鹿の特性を理解し、その魅力を引き出す手腕

2016年6月に「ヒヒヒ」をオープンさせたのは、オーナーシェフの伊藤 久之さん。宮城県出身ですが、大学進学で移住した静岡や東京で調理経験を積み、32歳の時にUターン。自然派ワイン(※限りなく自然に近い状態、人為的操作をしないように作られたワイン)が人気のビストロなどで腕を磨き、40歳にして自らの店、「ヒヒヒ」を立ち上げました。
「当店では地場の食材を使ったフランスビストロ料理がメインです。季節の食材に合わせて、毎日少しずつメニューが変わります」

さっそく伊藤シェフに、おすすめのジビエ料理を出していただきました。

こちらは「夏鹿のロースト ポワブラードソース」(3,400円・税抜)。夏鹿の肉は、秋の繁殖期に向けて蓄えた脂特有の香りが特徴の一つ。そんな夏鹿の脂にクロモジ(※クスノキの仲間)の葉の香りを移して、優しく焼き上げています。

ポワブラードソースは鹿のフォン(出汁)や赤ワインで仕上げたフランス料理の伝統的なソースで、「アクセントになっているカヤの実は、ピスタチオのようなナッツで鹿料理によく合うんですよ」と伊藤シェフ。付け合わせの鹿肉のラグー(※ミートソースのような煮込み)は、シイタケに詰めてオーブンで焼き上げていて、赤いピューレは県内産ビーツを使用。
「土の香りがソースとお肉にマッチします」

「鹿のコンソメスープ オオイチョウ茸」(800円・税抜)は、一晩水にさらした鹿の骨をオーブンでこんがり焼き、その骨を水から煮出してフォンを抽出。そこに鹿肉の端材となるスジや首肉などのミンチによってさらに旨味をプラスすることで、クリアで滋味あふれるコンソメスープに仕上げているそう。

「鹿ばら肉の煮込み」(3,000円・税抜)は、脂をしっかり蓄えた夏鹿を使用。2週間ほど赤ワインでマリネしたあと、フライパンで香りをじっくり引き出しながら焼き色を付けます。こんがりと焼けたバラ肉を赤ワインと鹿のフォン、水で3時間ほどゆっくり煮込んで仕上げます。皿の奥に見える付け合わせは、県内産のバターナッツ(※カボチャの一種)のピューレ。まるでバターやナッツのような濃厚な味のするバターナッツは、鹿肉の重厚な味わいに甘さや香りを加えてくれます。

この日に出していただいたジビエ料理の4品目は「鹿のパテ」(900円・税抜)。言わずと知れたフランス料理の定番です。「ヒヒヒ」のパテは鹿の赤身肉(主に肩肉やモモ肉の赤身)が主体。

ブランデーやワインで一晩マリネし、鹿肉の臭みを出さないようにするのもヒヒヒ流。テリーヌ型に詰め、低温のオーブンでゆっくりじっくり火入れをして焼き上げたのち、2週間ほど寝かせて、味わいが落ち着いた頃合いで提供しているとのこと。しっとりとした口当たりながらも、鹿の赤身肉の味わいを存分に感じられる冷前菜となっています。

さて、「ヒヒヒ」の魅力はジビエだけではありません。例えば「スープド ポワソン」(約2人前1,000円・税抜)。オープン当初からつぎ足しながら作っている通年の定番メニューで、塩釜市場で買い付けた新鮮な魚介を使用。磯の香りと魚介の旨味が濃厚に感じられます。
「アナゴをベースに、夏ならヒラメやカレイ、冬なら根魚(※海の岩場の周りを好んで生息している魚の総称)を使用するので、時期による味や香りに変化も楽しめます」

豚の血、脂に大量の玉ネギ、ミックススパイスや唐辛子などを使ったソーセージ「ブーダンノワール」(1,200円・税抜)も、「ヒヒヒ」の定番メニューの一つ。フランスでは伝統的に食べられている「ブーダンノワール」は、血を使うということで敬遠する人も少なくないですが、「ヒヒヒ」では豚の脂、たっぷりの玉ネギが甘味をもたらし、上品な味わいです。

オーナーシェフ自ら生産現場を訪れて厳選した食材を生かす

「生産現場に行くのが好きなんですよ」と話す伊藤シェフ。今回ご紹介した鹿肉も宮城県の牡鹿半島にある「FERMENTO(フェルメント)」の食肉処理施設へ赴いて仕入れてきたもので、その他の肉類や魚介類、野菜、果物などもできる限り現地へ足を運んでいるため、「仕込みの時間が足りない!」と笑います。

そんななかでも交流を深めているのが、宮城県牡鹿半島でジビエを加工・卸販売する「Antler Crafts(アントラークラフツ)」の主宰者、小野寺 望さん(写真上)。小野寺さんの猟に同行し、解体現場を見せてもらったり、イベントに参加して鹿料理を提供したり、ときには仲間のシェフと一緒に処理場周辺の環境整備することも…。

どうしてそこまでするのでしょうか?

「いや、単純に『この食材ってどういう土地で育っているんだろう』って、気になるじゃないですか」と疑問に答える伊藤シェフ。実際に生産現場へ行ってみたからこそ、見えるもの、見える景色、生産者との繋がり方がどんどん変化していったとのこと。

そうしたなか、小野寺さんが命に対して敬意を払う姿勢を間近に見ることで、「骨の1本まで無駄にしない」「命が循環していくサスティナブルな環境作りが大切だ」と伊藤シェフは考えているそうです。

食材がどう作られるかを知り、生産者の想いまでをくみ取って、その魅力を最大限に引き出す調理を施す。そんな伊藤シェフの姿勢は、ワイン選びも同様。
「インターネット、SNSでの情報発信が当たり前の今の時代、ワイナリーがどんなふうに、どんな苦労をして作っているか、知ることができるし、できるだけ知ろうとしています」

フランス産を主にイタリア産も含め、自然派ワインの品ぞろえは約1,200本。季節ごとに変わる料理と共に、ぜひ生産者の顔が見える自然派ワインも楽しみたいところです。

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