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唯一無二のイタリアンの陰にたゆまぬ努力がある「PRESENTE Sugi(プレゼンテ スギ)」千葉県印旛郡酒々井町

イタリアン 千葉 シカ イノシシ
2020.11.08

京都、大阪、名古屋、はたまた海外からも目当てに訪れるグルマンが絶えないという「PRESENTE Sugi」(以下、プレゼンテ スギ)。最寄り駅は千葉県のJR総武本線佐倉駅、または京成本線京成佐倉駅で、駅から歩くと約30分。すぐ近くにバス停はあるものの、本数が少なく、決してアクセスがいいとはいえないロケーション。なのに、なかなか予約を取りづらい人気店です。10台ほどが停められる駐車場があるので、訪れるなら車がおすすめ。

広々とした駐車場の奥に立つ一軒家。その扉を開けると目の前に厨房があり、その左手奥に客席が用意されています。

窓側に4人掛けのテーブルが2卓、その奥に6人掛けのテーブルが1卓ありますが、新型コロナウイルス対策として以前よりも席数を減らしているそう。また完全予約制をとっており、最大でも12名までしか入れないようにしているとのこと。

「ジビエ料理」のイメージを覆す斬新な創作料理

「プレゼンテ スギ」ではランチは平日4,000円、土日祝6,000円、ディナーは10,000円のおまかせコースのみ(各税抜・サ込)。今回はコースの中から“房総ジビエ”(※千葉県内で捕獲された鹿や猪の肉)を使った料理を出していただきました。それがこちら。

「シカ節のコンソメスープ」です。そう、鰹節ならぬシカ節。

塩漬けにした鹿のモモ肉を3か月、薪火でじっくりといぶしてシカ節に。そこから出汁をとりコンソメスープに仕上げた一品。いわゆるスープ皿ではなく、ワイングラスで提供するのは、繊細な香りを堪能してもらうため。

目の前で注がれる瞬間、グラスの中から立ち上る香りにウットリ。口に含むと深みのある旨味がたちまち広がります。

使用しているのはシカ節だけではありません。スッポンや牛で作ったコンソメに、追いガツオならぬ“追いシカ節”をしているため、多角的にコクが感じられる仕組み。あっさりしているのに旨味成分を強く感じることができます。

次なるジビエ料理はこちら。猪のラードを使用したフィナンシェです。モアイ像を象ったフィナンシェは「プレゼンテ スギ」の定番焼き菓子で、鴨や黒ゴマなど、その時々で素材が変わるそうで、この日は猪のラードをバター代わりに使用しています。色が黒いのは、シェフ自ら焼いた竹炭も入っているため。しっとりとした生地の中にかすかにシャリシャリと炭の歯応えが感じられますが、正直、猪が使われていると気付くことはなかなか難しそう。それだけ違和感なく、焼き菓子として成立しています。

畑を耕し、野山の幸を採り、川へ漁にも出かける。すべては美味のために

「プレゼンテ スギ」でこんな斬新な料理を生み出しているのは、オーナーシェフの杉岡 憲敏さん。東京生まれの佐倉育ち。調理学校を卒業後、千葉・佐倉にある「リストランテ カステッロ」にて修業。その後、イタリア料理店のシェフや店舗の立ち上げ支援などを経て、2016 年2月に独立、この店をオープンさせました。

「リストランテ カステッロ」の山田 直喜シェフからは、多大な影響を受けたそう。
「衝撃を受けたんです。カルボナーラを作る時に(山田シェフから)『キミ、ベーコン作れる?』と訊かれて、(ここでは)そこからなんだ!と」
ベーコンはもちろんのこと、野菜の種子を取り寄せて自ら畑で育てるということも山田シェフから教わったそうで、「草刈り機や耕うん機の使い方も身に付きました」。
その経験から自身の店のオープン後も、3か所の畑でレタスやローズマリー、ニゲラ、ペンタスといった野菜・ハーブ・食用のエディブルフラワーなどを栽培しているほか、近隣の野山で山菜やキノコ類、果実などを採っては保存食に加工しているそうです。

「今日はこのあと利根川へ行って、スッポンやウナギを獲りに行くんです」と話す杉岡シェフ。調理や接客、畑仕事などの合間を縫うため、2~3週間に一度程度だそうですが、「漁師さんの生の声を聞けるので、行く意味があるんですよね」

また、店の細部にも杉岡シェフのこだわりが詰まっています。例えば特注のカトラリー。海外からの評価も高く、今では5年待ちになるという福井県越前市の「龍泉(りゅうせん)刃物」でオーダーしました。特にナイフの切れ味は抜群。
「一般的に肉料理用のナイフは刃にギザギザが付いていて、肉をギコギコと切る感じですが、これだとスッと刃が通って切れるんです」
カトラリー置きも鹿の角を使ったお手製、というこだわりよう。

杉岡シェフのコースでは、牛肉か豚肉のステーキがメインとなることが多いのですが、特に牛肉のステーキはノードリップ、つまり肉汁が流れ出ることがないというから驚きます。肉汁が逃げないということは、旨味が逃げないということ。そしてその魅力を楽しむためには、切れ味の鋭いナイフが必須だったとのこと。

とはいえ、ステーキをノードリップで仕上げるのは至難の業。10回以上の試作が必要だったそう。きめ細かな温度管理が必要な調理法で、一般的なステーキよりもはるかに手間がかかりますが、それだけの価値が美味しさとして反映されています。

また、この店では料理はすべて杉岡シェフが一人で作ります。それだけにランチもディナーもコースのみになっていて、予約時間は厳守。また、コース料金とは別に1ドリンクのオーダーが必要です。これは「食前に飲み物をとることで、唾液を増やす効果があるから」という考えによるもの。

ワイン以外にも、自家製のユズやショウガを使ったソフトドリンクもあり、水やお茶一つとっても手間がかけられたものばかりです。房総ジビエ、千葉県産「錦爽(きんそう)どり」(※銘柄鶏の一種)、佐倉の天然クレソンなど、食材はほとんどが千葉県産で、旬を尊重しているためコースの内容は随時変更していくとのこと。

人間工学を考慮した、ゆったりとくつろげるデザインの椅子、九十九里で職人が仕上げる菅原工芸硝子のグラス、イタリアから取り寄せた大理石タイルをシェフ自らが貼った内装など、さまざまに杉岡シェフの思いがたっぷり詰まった美食空間「プレゼンテ スギ」。ほかにはない魅力をぜひゆったりと楽しんでほしいと思います。

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