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“特別なのに普段使い”のジビエ料理「朝日屋亭」長野県上高井郡高山村

長野県 和食 シカ イノシシ その他ジビエ
2021.03.11

長野県北東部に位置し、県庁所在地である長野市街地からおよそ20kmの距離にある高山村。村域の約85%が山林・原野という自然豊かな村は、松川渓谷沿いに点在する温泉と美しい景観で知られており、西向きで日当たりのよい扇状地ではリンゴやブドウなどの果樹栽培が盛んで、近年では高品質なワインの産地として脚光を浴びています。

今回ご紹介するのは、そんな高山村の温泉街にたたずむ小料理屋「朝日屋亭」です。

趣きのある建物の暖簾をくぐると、目の前に大きなテーブル席が1つ。その横には広いお座敷席。囲炉裏を囲める席は、料理が熾火の上で仕上げられていく様子を見て楽しむこともできる特別な空間です。

この「朝日屋亭」を営むのは田中 裕美さん。大阪あべの調理師専門学校の日本料理班の助手を経て、和食の料理人に。その後、名古屋と静岡の蕎麦店での蕎麦打ち修行と、伊豆の旅館での料理長を経験したのち、高山村の地域の食材の豊かさに魅せられ、「朝日屋亭」を開きました。

顔の見える生産者との付き合いから得られる感動

都会にいたころは調理技術の習得・研鑽に夢中だった田中さん。初めて地元ではない場所で仕事に就いた時、“その地域の食材を知る”ことの重要性に開眼したそうです。
「高山村は村内でも標高差があるため、自生する山野草などが採れる時期、農作物の収穫時期や栽培する品種などが場所により異なります。生産者と付き合うことで、時期・場所ごとに異なる食材の旬がわかってくると楽しみが増えるんです」と目を輝かせます。

「朝日屋亭」で扱うジビエについても、“胃袋の中にリンゴが詰まっていた猪“や、”たわわに実った柿の木の下にいた熊“など、仕入れ先の食肉処理施設を通じ、手元に届いた食材のストーリーを聞くのはとてもおもしろく、深く心を動かされるもので、「その感動を伝えたい」と微笑む田中さん。それは、”今だけ、ここだけ、そのお料理をいただく人だけ“が味わえる、とっておきのストーリーなのです。

田中さんは、高山村に来る前はジビエに対して特別な関心を寄せてはいなかったそうです。しかし村産の食材を求めるうちに出会ったジビエは、それまで漠然と抱いていた “獣肉=臭い”という概念を覆すものでした。それからは、“ジビエだから”と力むことなく、村産食材として普段使いへ。ジビエへの苦手意識のある人も思わず手が伸びてしまう美しい肉、そして「まったく臭くない! 固くない! 美味しい!」と感動を与えられる、それが、田中さんが目指すジビエ料理です。

「普段使い」のなかに「感動」がある。村のジビエ料理を召し上がれ!

“村産食材”にこだわる「朝日屋亭」では、その時々に手に入れた食材で料理を提供するので、まさに料理との一期一会の出会いが体験できます。

今回は、コース料理に組み入れられることの多いジビエを使った料理をいくつかご紹介。

取材当日、降雪に見舞われた高山村。「まずは温まって」と差し出されたのが「猪汁」。どこまでも優しく上品な味わいで、頭の片隅のどこかで想像していた獣の猛々しさは微塵も感じられません。ただその滋味深さに、しみじみ、ほっとするお椀です。

厨房から田中さんが囲炉裏へと持ってきたのは、コースのメイン料理となる鹿肉の背ロースのロースト。仕上げる様子を目の前で見せてくれます。

メイン料理の仕上げを目で楽しんでいる間にいただいたのは「猪の角煮」。箸で簡単に切れて、口のなかでホロホロとほどける食感です。厚い脂身もさらさらと喉を滑っていきます。獣臭どころか一般的な肉の臭みもなく、感じるのは“美味しい肉の芳香”。驚きをもって下処理の仕方を訪ねると、下ゆでをするだけで特に香味野菜を使っての臭み消しはしていないとのこと。
「村の食肉処理施設での処理や熟成が上手なんでしょうね」と田中さんがさらりと呟く言葉に、村の食材への深い関心と生産者への敬意が感じられます。

美味しい前菜と田中さんのお話を堪能しているうちに、メインのお料理が仕上がりました。

「鹿の背ロースのロースト」(写真手前)と「鹿のヒレカツ」(写真左上)。美しいロゼ色に仕立てられた鹿肉はしっとりなめらか。添えられたおろしダレは信州高山村産リンゴと香味野菜を醤油ベースで合わせたものです。

ヒレカツはひと口サイズにカット。ほんの少し塩を付けて口へ運ぶと、高温でカリッと揚げられた薄い衣の下から、肉繊維を感じさせないほど緻密でやわらかな鹿肉が顔を出します。その歯触り舌触りのコントラストの妙!

続いて出していただいたのは、冬だけのごちそう「鴨汁そばがき」。腕利きのハンターが千曲川(ちくまがわ)で仕留めたという野鴨は、狩猟シーズンにしか味わえない逸品。なめらかな舌触りのそばがきは、カツオと昆布から丁寧にとった出汁と鴨の旨味が絡み合い、トロリとした汁を纏って口の中へ滑り込みます。あとからくる柚子の香気と共に余韻にうっとり…。

コースの内容は仕入れ状況により異なりますが、ジビエスペシャルコースは6,000円・6,500円(各税込)、鹿料理がメインの通常コースは4,000円(税込)~。そして、5,000円(税込)以上のコースでは、囲炉裏の利用が可能に。

また、ロースト鹿丼や猪汁などのテイクアウトをはじめ、ケータリングや仕出しなども行っています。

豊かな村の環境で育つ植物や動物、そこに暮らす人々、生命の繋がりや力強さを感じさせてくれる田中さんの食材のお話と、“特別なのに普段使い”のジビエ料理。気負うことなく、地のものをいただく。“今だけ、ここだけ。そして、あなただけに”。きっととっておきのごちそうとなるでしょう。

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