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皮に傷があっても、デザインとして生かし一点もののアイテムに「Dear Deer」鳥取県八頭郡若桜町

鳥取県 シカ 通販・お取り寄せ 革製品
2022.12.24

鳥取県を代表する観光地、鳥取砂丘から車で約50分。緑豊かな山間部を走る若桜(わかさ)鉄道の若桜駅から徒歩5分の場所に、鹿の革などを使ったバッグや小物を製造・販売する「Dear Deer (ディア ディア) 」があります。ちなみに店名の「Deer」は鹿の意味。

もともと村役場だったという古い建物を生かしたスタイリッシュな空間で、同店のオーナーの石井 健治さんは毎日、鹿の皮と向き合う生活を送っています。そこで「Dear Deer」を開店するに至った経緯をお伺いしました。

若桜町(わかさちょう)と近隣の八頭町(やずちょう)も、日本の各地方同様に、深刻な鳥獣被害を抱えています。ジビエ利用後の鹿の皮が有効活用されず廃棄されている状況を知った石井さんは、鹿の皮から作るスキンケアクロス(後述)を商品にしようと思い立ちます。しかしそれだけでは廃棄量の減少にそれほど繋がりません。

ミリタリー(軍事)フィギュアの模型を作って販売していた石井さんは、もともと手先が器用でモノ作りが大好き。自身でバッグなどの皮革製品を制作して商品展開を増やすことに。2012年に若桜町に移住して「Dear Deer」を開店しました。

地元の猟師さんが仕留めた鹿は、若桜町の食肉処理施設「わかさ29(にく)工房」に運ばれます。
「『わかさ29工房』は、鳥取県では初めてHACCP(ハサップ ※食の安全性を確保するために発案された衛生管理の国際的な手法)適合認定制度を取得していて、肉だけではなく、皮の取り方もとても優れています。その皮は兵庫県たつの市の「タツノラボ」でなめして『ポルティラ』というブランド革に進化。これはスペイン語で“大地のために”という意味のものです。有害物質を使用しない独自のなめし製法で作られ、いつか大地に還っていくという意味が込められています。そのなめし革を使って、私は商品を作っているのです」と石井さん。

田畑の農作物に被害をもたらす鹿を捕獲→その肉や皮を利活用することで産業廃棄物の量をできる限り減らす→タンナー(なめし皮業者)にはいい素材が手に入る→良質な商品が作れる、というポジティブな循環になっているというわけです。

お店の隣にある工房には、数々の工業ミシンやカラフルな糸が並び、ここで一つ一つ丁寧に手作りしています。ミシンは有名メーカー品ではなく、すでに生産されていないタイプの機械もあるので、壊れたら修理するのもひと苦労。それでも、石井さんの手に馴染むミシンは手放せないといいます。

店頭販売しているアイテム以外にも、セミオーダー(3,500円〜)、フルオーダー(10,000円〜)で商品を注文することも可能。しかし、電話やインターネット販売はされておらず、対面での受注のみとなります。
「野生の鹿なので皮に傷が付いているものがあり、日本では捨てられてしまうことが多いのです。でも、それでは皮の廃棄量を少なくすることができません。綺麗な状態の皮を欲しがる方も多いので、なぜ傷がある皮を使っているのか、また、比較的単価が高めになってしまうので、なぜこの価格になっているのかをご説明するためにも、ご来店いただくことにしています」

傷がある皮でも、なめしていくうちに“いい感じ”に裂けてきて、それもまた個性的なデザインになります。どこにもない一点ものとなり、オリジナルの小物の出来上がり。

なかなかアクセスしにくい場所にお店がありながらも、わざわざ遠方からいらっしゃる方が絶えません。商品の魅力はもちろん、お店の居心地のよさ、石井さんの人柄に惹かれてリピーターになっている方も多いようです。

また、鹿の革は「セーム革」といって、非常に滑らかな風合いで、人工製品では真似できない超微粒子コラーゲン繊維質によって驚くほど油や汚れを落とせるのが特徴。昔から、車の洗車後の吹き上げによく使われてきました。この天然繊維の特性を生かして、スキンケアクロス「ピュリアス」(1,980円・税込)も開発。洗顔後に、クロスに水を含ませて優しく撫で洗いすることで、肌に負担をかけずに毛穴の汚れを落とすことができます。使うごとに、肌の色が一段明るくなり、透明感もアップ。こちらはインターネットでも購入可能です。

「地元で得られた貴重な資源ですから、いかに地域に還元していけるかも大事だと思っています。スキンケアクロスの封入作業、パッケージの印刷などは地元の若桜の福祉作業所に委託して自立支援の一助としています。さらには商品本体を作りたいという作業所には、私が指導に出向き、なるべく単価が高い商品を作れるようにサポート。今後は鹿革を使う同業者の数を増やし、革の認知度を上げていきたいです」と、未来への展望を語ります。

若桜町に移住し、ビジネスを始めて10年。やっと傷のある革製品への理解を得られるようになったと言います。ここまで一人で頑張ってきましたが、来年の春から若い世代のインターンも入ってくる予定。これからもよいプロダクト作りに邁進していきたいと、石井さんは決意を新たにしています。

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  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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