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真の美味を追い求める“食のアーティスト”「Restaurant Kazu(レストラン カズ)」

フレンチ 福岡 イノシシ
2020.02.25

市内屈指の高級住宅地、福岡県福岡市の浄水通で客を迎える「Restaurant Kazu」(以下、レストラン カズ)。

モノトーン風のフロアは美しい秩序で保たれ、その凜とした光景は、オーナーシェフ・篠原和夫さんの人柄を映した鏡のようにも思えます。

ジビエの評価基準が変わる、極上猪料理

“料理の鉄人”坂井宏行氏に師事し、渋谷の「ラ・ロシェル」や「ラ・ロシェル福岡」などで研鑽を積んだ篠原さん。2004年に独立し、中央区警固に小さなビストロ「カズ キッチン」を開くと、たちまちグルマンの間で評判となりました。「レストラン カズ」は、その篠原さんが2011年に移転・改名して再スタートを切った、次なる挑戦のステージです。

その後のキャリアも順調で、2014年にはフランスの名門「ルージェ」社の国際フォアグラ料理コンテストで優勝。名誉ある「フランス料理アカデミー」の会員でもあります(写真はその認定証)。

料理の完成度の高さから、時に“食のアーティスト”とも呼ばれる篠原さん。しかし取材で垣間見えたのは、華やかなスターシェフの姿ではなく、むしろ古風でストイックな職人の素顔でした。
「僕を突き動かすのは、ただ“美味しいものを出したい”という気持ちだけ。そして、それを形にするにはどれだけ良質な食材を選び、適切に処置できるかが肝心なんです。その点、生産者との距離が近い福岡は東京よりも有利ですね」。

そう語るように、どの料理にも篠原さんの想い──旬の食材の美味、それを生んだ自然への賛歌、生産者への敬意など──が満ちています。
「地産地消にこだわり、パリでも東京でもない、福岡ならではのフランス料理を創造する“九州テロワール”。それが今の僕のコンセプトです」。

もちろんその姿勢はジビエにも及びます。現在仕入れている猪は、佐賀県唐津市の信頼できる猟師が仕留め、処理場で丁寧に加工・処理したものだとか。
「猟師さんが僕の理念や料理を理解してくれてるので、毎回最高の肉だけが届きます。よい猟師さんなしによいジビエ料理はありえませんね」。

その“原石”たる食材は篠原さんの手で磨かれ、さらに輝きを放ちます。例えば今回使う猪肉は、脂やハーブと共に2週間密封してウエットエイジングをかけたもの。

ジビエの魅力をうかがうと「やはり力強さです」と篠原さん。
「ジビエが持つ生命力は、ほかの食材にはない臨場感や季節感、地域性を料理にもたらしてくれますから」。

それを象徴するのが「骨付き猪ロースの網焼き」(コース料理の一例)。表面はカリッと焼きこんでいますが、肉質はやわらかく、しかも繊維を噛みしめるたびに深い旨味がジュワッと広がります。

甘い脂のシャキッとした歯触りと香ばしさもたまりません。自分の中の「美味しいジビエ」の評価基準が大きく変わる、極上の一皿でした。

「四季を味わう」という贅沢が待つ名店

あわせて、春のコースの前菜料理例もご紹介。本日の食材は北海道産タラの白子です。

調理後は旨味濃厚なムニエルに変身。春キャベツのソースに魚の出汁を加えたピューレを敷き、上には春キャベツと菜の花をのせたもの。篠原さんが大事にする“香り”の要素も際立って、まさに春そのものを味わうような夢心地!

旬の空豆の自家製パンも添えて(写真右上)。新芽を使う“春の息吹”の演出がキュートです。

優れた目利き、入念な下準備、そして然るべき技術があれば、ジビエはどんな高級食材にも引けを取らない。篠原さんの猪料理は、その持論を見事に証明するものでした。
「低カロリーで高タンパクなジビエは、まだまだいろんな可能性を秘めています。ただデリケートな食材でもあるので、もっと僕ら料理人や生産者側の努力が必要でしょうね。いつもジビエに触れ、試行錯誤しながら美味への感性を養い、業界全体でクオリティを上げていく取り組みが」。
料理への愛情ゆえ、常に自分に厳しくあり続けてきた篠原さんらしい言葉に思えました。

ジビエを含め、九州の食材を通して四季の贅沢を表現する「レストラン カズ」。ここは、改めてその価値や豊かさに気付かせてくれる名店です。

メニューはコースのみ。ランチ、ディナー共に8,500円・12,800円・15,800円・20,000円(すべて税抜、要サービス料10%)。

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