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常連だと自慢したくなるような“隠れ家的”懐石風創作フレンチ 「クー・ド・マサ」

フレンチ 千葉
2018.11.20

ジビエのおいしいお店を日々探している記者として、ふと「実は自分の地元にも素敵なお店があるのでは?」という軽い気持ちで探したところ、見つけたのが「クー・ド・マサ」。さっそく取材に出かけてみましたが…、ムムム…、なかなかたどり着けません。お店に電話し、マダムの案内に沿って道を進んでいくと、緑あふれる閑静な住宅街にひっそり建つおしゃれな外観を発見。まるで隠れ家のような佇まいに期待が高まります。

「クー・ド・マサ」は、千葉県柏市にある完全予約制の一軒家のレストラン。オーナーシェフ・渡辺政昭さん御家族で営む、小さな料理店です。渡辺氏は、フレンチの名店「イル・ド・フランス」(現在は閉店)勤務時代に当時の料理長の勧めで渡仏。25~29歳までの4年間、できるだけ多くのことを吸収するため、パリを中心にさまざまな地域や地方の料理店で修業を重ねました。

フランスからの帰国後、三重県鳥羽市にオープンする「タラサ志摩ホテル&リゾート」の料理長に就任。油を控え、素材の味を生かした、おいしく食べて太らない料理「キュイジーヌ・マンスール」を提供しながら、体のことを丁寧に考えた料理について追求。14年勤めあげたのち、2006年に自分のお店をオープンさせました。

かのアラン・デュカス氏と腕を磨いた渡仏時代

店内は高級感あふれるしつらえで、暖炉のあるメインダイニングに、シックなウエイティングバーもあります。基本、前日までの完全予約制。ディナーのおまかせコースは3,600円~(税込)で、3種類のコースから選ぶことができます。今回は、その中からおすすめのメニューを試食させていただきました。

1品目は「低温調理のエゾジカのサラダ」。

温度68℃で真空パックされた蝦夷鹿を、温風と水蒸気を用いて調理を行うスチームコンベクションで約1時間、じっくりゆっくり火を通していきます。使用しているのは鹿の内モモ肉でほとんどが赤身の部位。火の入れ方に気を付けないと硬くなってしまうのですが、この方法なら失敗なく最高の柔らかさとおいしさを提供できるのだそう。フォアグラやルッコラ、マッシュルームも加わり、花畑のような華やかさです。パルメザンチーズとたっぷりかかった粗挽きの黒胡椒がピリッと大人の味へ引き締めていました。

実は渡辺シェフ、渡仏中、天才シェフと称されるミッシェル・ゲラール氏の下で料理を学んだり、史上最年少でミシュラン3つ星を取得したフランス料理界の世界的巨匠、アラン・デュカス氏と一緒に働いていたことも! 「彼がどんどん出世して大きな存在になっていくのを見て、自分も負けていられない」。そう感じた気持ちが、いつか自身の店を持ちたいという夢の実現へ導いたのかもしれません。

本当に有名な方々と肩を並べて活躍されてきたことを知り、驚いている間に、2品目の「エゾジカの温製パイ」が焼き上がりました。

蝦夷鹿の肉とフォアグラ、豚の挽き肉、レバーなどを合わせたパテを、刻んだマッシュルームや松の実と一緒にピザ生地で包み、焼き上げた一品。パイ生地ではなくピザ生地を使っているため、生地がサクフワで、肉の旨味とフォアグラの粘りが高級感を残しつつも、より親しみ深い味になっています。驚いたのはピリ辛の朱色のソース! 中身を尋ねると、「隠し味に豆板醤を使っているんです」と渡辺シェフ。驚きの組み合わせですが、ケチャップやマスタード、はちみつと共に混ぜたソースはピザ生地にぴったりです。

メインの肉料理は暖炉で焼き上げる

3品目は、いよいよ暖炉で焼いてくれるというメインの「エゾジカの暖炉焼き」。程よいころ合いになると、マダムの孝子さんが暖炉に火を入れてくれます。夏でもこのスタイルのため、点火すると「えっ!? 夏なのに暖炉? 一体何が始まるの…?」と驚く方もいるとか。

暖炉で焼かれるため、鹿肉にはかすかな燻製の香りが感じられ、絶妙な火加減で肉の弾力もばっちりです。ジビエは個体差があり、入手する肉の質も多種多様。

「初めて暖炉で焼いた時は真っ黒こげになってしまったり、焼き切れていなかったり、苦労も失敗もありました。でも次第に、ひとつひとつのジビエと向き合い、触れ、感じることで、一番おいしい瞬間に火から引き上げられるようになりました」。

さまざまな場所で修業を積んだ渡辺シェフ、調理の腕のなせる業というわけですね。

メインのお肉は、必ずこうしてシェフが席までお持ちし、「今日はこちらのお肉を焼かせていただきますね」と説明してくださるそう。まさにシェフのご自宅に1人の友人として招待されたかのようなおもてなしに、誰もが心温かな気持ちになるに違いありません。

おまかせディナーコースは3,600円~(税込)で、8品+デザートでも6,200円(税込)というリーズナブルさ。「高くておいしいのは当たり前ですから。『この値段でいいんですか⁉』とお客様に驚きと喜びを与えたいんです」。味と値段と雰囲気、そしてオーナーご夫妻のお人柄を鑑みると、どう考えても支払い足りなくて申し訳なさを感じてしまうほど。

ぜひ、一度は訪れてほしい柏の名店フレンチ「クー・ド・マサ」。もし道に迷ってしまったら、お店に電話してみてください。丁寧に教えてくれるので、ご安心を。