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ジビエの調理に使うのは塩のみ! 鹿と猪の旨味をシンプルに楽しむ「ビストロハマイフ」東京都中央区新富

東京都 フレンチ 焼肉・ロースト シカ イノシシ ランチ
2023.01.25


東京都中央区の新富町は、行政機関やオフィスビルが立ち並ぶエリア。銀座や築地といったおでかけスポットに近く、落ち着いた雰囲気の良店も少なくありません。

なかでも隠れ家的な存在で人気があるのが、カジュアルなフレンチを楽しめる「ビストロハマイフ」(以下、ハマイフ)です。

こぢんまりとした店内には、木目を生かしたテーブルが並びます。たくさんの裸電球をスタイリッシュに使った照明がオレンジ色のやわらかな光を放ち、それがとても心地よい空間を演出。

2020年にリニューアルオープン後、長野県・南信州の鹿、石川県の猪といった特定の地域のジビエを積極的にメニューに加えるようになりました。というのも、店長の松下 敦史さんが長野県下伊那郡泰阜(やすおか)村の出身。2017年、同村に「ジビエ加工施設 もみじや」ができたことで、故郷の鹿肉を身近に感じるようになり、その美味しさをお客様に提供したいと思ったからです。

「泰阜村は天竜峡という大きな峡谷の中にあります。そこに暮らす鹿たちは、アップダウンの激しい傾斜面をいつも駆け巡っています。つまり運動量が多いアスリート系の鹿なので、とてもしなやかで弾力のある肉質が特徴。特にシンタマと呼ばれるモモ肉の一部は、旨味が強く絶品です!」

一方、猪肉は石川県の「ジビエアトリエ加賀の國」で処理加工されたものを使用しています。アジア最大級の食品・飲料展示会「フーデックス」で、松下さんがジビエアトリエ加賀の國のスタッフに出会い、猪肉を試食したことがきっかけ。その美味しさに驚愕したとか。
「鹿も、猪も、私自身が高品質だと思ったものを、シェフと相談しながら、美味しさを最大限に生かす調理法でご提供しています。その結果、肉を焼く時に使う調味料は塩だけで十分、となりました」(松下さん)

もちろん、付け合わせの野菜や彩りのソースも添えられています。しかし、最もシンプルな調理法で、素材本来がもつ味で勝負しているのです。

シンタマのしなやかな弾力は、噛めば噛むほど味わい深く

さっそく、「南信州鹿肉のもも肉のロースト」(2人前、3,200円・税込)を試食させていただきました。

調理をするのは、フレンチでずっと腕を磨いてきたシェフの村上 智昭さん。これまで在籍していたお店でもジビエに接する機会はありましたが、ハマイフでかなり扱う量が増えており、その奥深さに触れるようになったそう。

筋などを綺麗にとった新鮮な鹿のシンタマに、塩を多めに振りかけます。素材に付ける調味料は本当にこれだけ。

乾燥しないように油を塗ったあと、約90度に設定したコンベクションオーブンでじっくりと熱を加えます。
「肉のどこにもストレスをかけないでゆっくり熱を加えるので、弾むようなやわらかい肉質を損ないません」と村上さん。

出来上がった鹿のローストをまずは何も付けずに口に運ぶと、非常にジューシーで、鹿独特の酸味と旨味が広がります。

続いて、鹿の筋、赤ワイン、カシス、ジュニパーベリーなどで仕立てたソースを絡めて味変にトライ。果実の酸味が加わって、さらに芳醇な味わいが楽しめます。

付け合わせの野菜やフルーツにもストーリーがあります。
「泰阜村の鹿は、秋から冬頃に栗を食べるので、肉に添えるフルーツは栗をメインに、冬に旬を迎えるレンコンやカリフラワーなどの野菜を付け合わせにしました。今回は栗ですが、春のタケノコを鹿が食べていたらそれを添えるなど、季節に合わせて変えています」と、松下さんは付け合わせを選んだ理由を語ってくれました。

やはり信州・安曇野の赤ワイン「アヅミノワール カベルネ&メルロ」(グラス1400円・税込)をペアリング。ミディアムボディの重めの赤、樽香のフレーバーが、ジビエによくマッチします。

猪の脂と相性のいい炭火で2度焼いて、香り付けを

次に「加賀の国 いのしし ランプ肉の炭火焼ロースト」(2人前、3,600円・税込)をいただきます。ちなみにランプ肉とは、腰からお尻の部位のこと。猪肉といえば、しっかりとした脂が魅力ですが、まずはブロックごと炭火で焼いて、余分な脂を落とします。

もちろん、こちらも調味料は塩のみ。その後は、鹿と同様にコンベクションオーブンに入れて、焼き上げます。そして最後にまた炭火で焼いて、燻しの香り付けを。

猪肉は、鹿と比べるとクセが強いので、ハーブ類を多用したり、煮込み、リエット、テリーヌなどの加工品にすることが多いとのこと。しかし、こちらの猪はちょうどよい硬さのしっとりした脂、細やかな繊維の赤身肉とのバランスが絶妙。特に手を加えずとも、素材本来の旨味を堪能できるのは驚きです。

肉に付けるソースは、ジュドビアンド(※香味野菜や肉の出汁からとったソース)にマスタードを加えたもの。旬のゴボウのピューレも添えられていて、コンビネーションも抜群。もちろんそれらを絡めても美味しいのですが、何も付けなくてもよいくらい、しっかりとした猪肉の旨味が感じられました。さらにハマイフ独自の、炭火焼きで仕上げた香りと脂が程よくミックス。猪肉は苦手…という人でも、これならペロリとたいらげてしまいそうです。

松下さん(写真左)は、まずは南信州の鹿を知ってもらい、認知度を上げることで、限界集落になりつつある泰阜村への貢献を考えています。そして縁が繋がった石川県の猪の美味しさも広めていきたいとも。今後も、シェフの村上さん(写真右)とタッグを組んで、ジビエの美味しさを伝え続けてくれることでしょう。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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