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蝦夷鹿肉をフレンチの繊細なワンディッシュ&デザートでいただく「ESPICE」兵庫県神戸市

兵庫県 フレンチ 焼肉・ロースト シカ エゾジカ ランチ コース
2021.12.13

兵庫県神戸市の中心街にあり、JRや阪急など各線三宮駅から歩いて5分ほどで訪れることのできる「ESPICE(エスピス)」(以下、エスピス)は、2016年のオープン時から注目を集めるフレンチレストランです。

敷居の高いイメージを持たれがちなフレンチですが、肩肘張らずに訪れてもらえれば…と、エントランスにはなんと提灯が。そんなギャップに、親しみを感じます。

店名の「ESPICE」は造語で、フランス語の「Spirale(スピラル)=らせん」と「Espace(エスパス)=空間」を組み合わせたもの。大地を表現した坪庭のある“空間”で、人間にとって大切な“食”が生み出される、そしてフレンチの伝統を受け継ぎながらも固定概念に捉われず昇華していくさまが、“らせん”のイメージに込められています。

多くの人が行き交う三宮エリアにありながら、お店に一歩入ると喧噪からすっと切り離されるモダンな空間。さっそく、主に冬季のおまかせコースに組み込むことのある蝦夷鹿を使ったメニューをご用意いただきました。

じっくり火を通した蝦夷鹿肉を主役に“森”をイメージした構成の一皿

夜のコース(13,860円・税サ込)は、付き出し、4種の前菜、魚料理、肉料理、デザート、小菓子の構成です。

メイン料理に使う蝦夷鹿肉の仕込みは、肉の成形から。鹿のロース肉に、その脂身を均一の厚みに整えて赤身を巻いていきます。
「こうすることで、焼いた時に赤身に直接熱が触れないので縮みにくくなり、ジューシーに仕上がるんですよ」と話すのは、江見 常幸シェフ。「エスピス」のオープン当初から店のコンセプト作りや内装などにも携わってきた敏腕シェフです。

成形後、胡椒をして真空でマリネしておいた鹿肉を、まずはフライパンで表面を焼き、余分な脂を出していきます。鹿が好んで食べるナッツの香りのするこの脂は、のちほど活用。肉を50℃のオーブンに1時間入れて、じっくりと加熱します。

オーブンから取り出したら再度フライパンで焼きながら、同時にキノコもソテー。ナッティな脂の香りを移します。

表面の脂身は香ばしく焼かれ、赤身には程よく火が通り、視覚でもしっとりとした食感が伝わってくるよう。

盛り付け台では、天井から吊られたスポットライトを浴びながら、シンプルなお皿にさまざまな食材が盛り付けられていきます。

まるでアートのような蝦夷鹿肉が主役のメイン料理が完成。鹿肉にはリング状に揚げたジャガイモのフリットとソースが添えられています。その傍らには、トランペットダケ、マツタケ、ジロールダケの3種のキノコを盛り付け。上にはゴボウのチップスとドライにしたカラシ水菜、マッシュルームのパウダー、紫イモのパウダーを美しくあしらいます。副素材に根菜とキノコを使って、“森”をテーマに構築したとのこと。

さっそく鹿肉をカットして、たっぷりのソースと共に味わいました。ソースに使われている素材は、ゴボウ、生姜、エシャロット、少しの西京味噌とユズ。滋味深い味わいのなかに酸味も感じるソースが、鹿肉の品のある風味を引き立てています。赤ワインを合わせると、さらに味の重なりが増幅されます。

次にご紹介するのは、鹿肉を使った「ボンボンショコラ」。

「成形する時に出る鹿肉の端肉を赤ワインで煮込んで、チョコレートの中に閉じ込めました。蝦夷鹿とチョコレートは相性がとてもいいので思い付いたデザートです」と江見シェフ。この独創的なチョコレートを生み出す以前に、豚の生姜焼きを入れたボンボンショコラも提供されていたそう。鹿肉にカカオの香るソースを合わせるのは想定内でも、ボンボンショコラの中から鹿肉が出てくるのは意外性たっぷり。シェフの発想力にただただ驚くばかり!

冬は蝦夷鹿、夏なら本州鹿と使い分ける

江見シェフは、フランスの三ツ星レストランでも研鑽を積んだ経歴の持ち主。帰国後にはミシュランのビブグルマンを3年連続取得した「ガストロバルKNOT(ノット)」でも創作性の高い料理を手がけてきました。

「蝦夷鹿肉は長年北海道から仕入れていますが、安定して使えて個体差の影響がそれほど大きくないのが魅力です。味わいにはパワーを感じますね。部位はロースかヒレを選んでいて、塩釜焼きにして提供したこともあります」と教えてくれました。本州鹿を使う場合は夏を選び、4・5月に草を食べて育った鹿肉に軽めのソースを合わせることが多いそう。

江見シェフの祖父は兵庫県小野市で猟師をしていたため、子供のころから鹿肉は馴染みのある食材だったとか。知人がわなを仕かけて捕獲した鹿一頭丸ごとを解体した経験も。

テーブル席の奥には庭があり、よく見るとシェフが解体した鹿の角が飾られていました。

「エスピス」では、おまかせコースに合わせてワインペアリングをオーダーするお客さまが多いのも特徴です。フランスのワイン以外に、古代米を使った日本酒がサーブされることも。ノンアルコールドリンクでのペアリングも可能。

コースの内容は2か月前から検討し、何度も試作を繰り返して組み立てるという江見シェフ。冬は蝦夷鹿、夏は本州鹿と、シェフの素材使いに心躍らせるフレンチを目指して、神戸へお出かけしませんか?

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  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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