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【ねこのいる宿】主人が仕留めた猪を鍋やアジア料理で楽しむ農家民宿「ねこのひたいの宿 山王ちぐら」岡山県井原市

岡山県 イノシシ ホテル・旅館 ランチ
2022.01.19

「老いても嫁の手を煩わすことなく、健康で幸せな生涯をまっとうできる」という霊験があるとされる「嫁いらず観音院」が有名な岡山県井原市大江地区。

そんな大江地区の高台に立つ一軒家が、「ねこのひたいの宿 山王ちぐら」(以下、山王ちぐら)です。

宿の入口には、「ジビエ」「どぶろく」と書かれた看板が。納屋で見つかった廃材を使い、DIYしたものだそうです。

一見、普通の民家なのでわかりにくいですが、玄関脇の「キジトラ招福堂」と書かれた木製の看板が目印。「キジトラ招福堂」は、ジビエやどぶろくの販売を含めた屋号です。

玄関をくぐると、キジトラ猫の“ちぐちゃん”(女の子)が出迎えてくれました。弟の“ぐらちゃん”は、恥ずかしがり屋でなかなか姿を見せてくれないそうです。

宿を営むのは、小泉 登さんと早都紀(さつき)さんご夫婦。小泉夫妻はもともと大阪で暮らしていましたが、二人とも「いつかは田舎暮らしをしてみたい」という思いを抱いていたそうです。そんな折、井原市地域おこし協力隊に応募し、2016年に移住を叶えました。登さんは、地域おこし協力隊の活動をする中で狩猟免許を取得。猟友会のメンバーと共に、畑を荒らし、農作物を食べる猪などの狩猟を行ううち、「野生動物の命を無駄にしたくない」という思いから、ジビエとしての活用を志すようになりました。

一方、早都紀さんは、かねてから夢だったどぶろく作りを志します。どぶろく作りには、井原市で認定された「どぶろく特区」(※農家などが特別に酒類の製造・販売を認められた区域)の制度を活用しました。しかし、「自ら生産した原料で酒を製造すること」「農家民宿や農家レストランなどで酒類を提供する農業者であること」という条件を満たさねば、どぶろくの製造はできません。そこで、地域の人々のサポートを受けながら、原料となる自家製米を作ることから取り組みました。

そして、訪れる人にジビエ料理とどぶろくを体験してもらえる場をと、2020年2月22日に開業したのが「山王ちぐら」です。

雑木林に囲まれるように立っていた空き家屋を改装し、猪肉などの精肉加工や真空包装、冷凍保存を行うスペース、どぶろくの醸造所、見晴らしのいい2階には宿泊客が泊まれる客室も設けました。建物を覆っていた雑木林は、地域の人々の協力のもと、畑へと生まれ変わりました。

ここでしか味わえない、自家製糀を使った猪鍋

ここを訪れるゲストの目当ては、なんといっても猟師である登さんが自ら捕獲し、腕をふるったジビエ料理。基本的には猪肉料理ですが、穴熊を使った料理が登場することもあるそうです。2021年春からは、自家製のどぶろくも楽しめるようになりました。

食事は、どこか懐かしい雰囲気の居間でいただきます。平日は、予約制で食事のみの利用も可能です(昼のコース3,000円~、夜のコース4,000円~・各税込)。

宿泊時の夕飯は、ジビエ料理のコース。メイン料理の一番人気は、自家製の糀を使った猪骨スープの糀鍋。猪すき焼き、猪焼肉もあり、お好みで選ぶことができます。メイン料理以外にも、猪肉を使った前菜や串カツ、焼き物も登場し、ジビエ三昧を楽しめます。

猪骨スープの糀鍋は、食材を入れる前に、猪の骨のみでとったスープに自家製にんにく生姜醬油糀を溶かして味付けをします。

自家製にんにく生姜醬油糀は、自家栽培米で仕込んだ糀と、ニンニク、生姜、本醸造醤油をじっくりと発酵・熟成させたもの。まろやかで香ばしく、上品な旨味を感じられます。200g 600円(税込)で購入も可能。

野菜は井原市芳井町産のゴボウをはじめ、地元のものがたっぷり。芳井町のゴボウは、太いけれどもとってもやわらかく、香りがよいのが特長です。この日は、自家栽培のバターピーナッツカボチャもありました。

最初に野菜を入れ、野菜が煮えたら猪のロース肉を投入します。

「捕獲した猪は、市内にある食肉処理施設に持ち込み、衛生的、かつスピーディにさばいていきます。そうすることで臭みがなく、美味しい肉に仕上がるのです。猪肉は脂が溶けやすいのでスライサーで切るとパラパラと形が崩れてしまう。そのため、うちでは一枚一枚包丁で切るのが基本です。とりわけ、脂がのった冬から春は、肉の旨味を存分に楽しんでいただけます」(登さん)

肉は厚みがありますが、食べてみると思いのほかやわらかく、脂身はサクサク。もちろん、猪肉でよく言われるクセはまったく感じません。すっきりとした味わいのスープがよく馴染んで、いくらでも食べられそうです。猪肉と野菜をたっぷり味わったあとは、手延べ麺で知られる岡山県浅口市鴨方町の鴨方うどんをいただけます。

連泊客やリピーターには、四川風猪料理も好評

登さんは、9年間ほど台湾で暮らしていた経験から、アジア料理にも精通しています。そのため、連泊やリピーターの方の食卓には、猪肉を使ったアジア料理が登場することも。

こちらの「蒜泥白肉(スワンニーパイロー)」は、ゆでた猪バラ肉に、ニンニクソースとパクチーを添えた一品。豚バラ肉を使った四川料理からヒントを得たそう。ニンニクソースには、刻みニンニクと酢、中国の醤油、ゴマ油が使われており、しっとりとした猪肉との相性が抜群です。

猪肉と相性のよいパクチーは、一年中切らさないように温室で自家栽培しています。

猪のウデ肉をミンチにしてワンタンの生地で包んだ「紅油抄手(ホンヨーチャオソー)」。ウデ肉と聞くと、かたくて食べにくい印象がありますが、そんな心配は無用。ツルンとしたワンタン生地で包まれた猪肉の団子は、プリプリと弾力のある食感。猪肉の甘味とラー油や花椒、唐辛子のピリッとした辛味、青唐辛子のさわやかな辛味が口の中で溶け合います。

猪肉と一緒に味わいたいのが、宿自慢のどぶろく(ボトル1本1,700円・税込)。口当たりはクリーミーですが、フレッシュなだけに生きた酵母ならではの微炭酸が感じられ、後口はさわやか。自家製どぶろく以外のアルコールやジュース類の提供・販売はないので、飲み物は持参を。

野菜の収穫や森林散歩など、農泊ならではの体験も

2階には、大人4名+子供2名まで泊まれる客室があります。窓の外にはのどかな山並みが広がり、四季の移ろいを感じられます。11月ごろには、部屋から雲海を望めることも。利用は1日1組限定(1泊2食付き、大人1名8,800円~・税込)。

泊まった翌朝は、宿周辺の森林に登さんが仕かけた“くくりわな”の見回りを体験できるフィールドワーク(無料)にも参加できます。猪が通るけもの道などを見ながら、登さんのお話を聞くのも貴重なひとときです。

「森の中には、猪などが日常的に通るためにできたけもの道があり、足跡や踏み倒された草、木々に体をこすり付けた跡などを見ることができます。それらによって、最近どんな動物がここを通ったかといったことがわかるんです」と、登さん。
動物たちの生態に思いを巡らせながらの森林散策は、心身共にリフレッシュできると宿泊客からも好評のよう。

農家民宿らしく、希望すればタケノコ掘りや野菜の収穫体験もできます。

ゆったりとした時の中でジビエ料理やどぶろくを楽しみ、自然と共にあることの豊かさを感じる。そんな非日常を楽しむ宿へ出かけませんか?

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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