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“職人”のエッセンスが随所に。五感で楽しむ男のフレンチ 「レストラン アルティザン」

フレンチ 神奈川 イノシシ そのほか
2019.01.18
今回の舞台は、神奈川県・横浜中華街から徒歩5、6分の場所。横浜駅からみなとみらい線に乗り換え、終着駅・元町中華街駅と日本大通り駅の中間地点へ。東アジア最大の中華街やみなとみらいなどの観光地に近い「レストラン アルティザン」を目指します。

エントランスから店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが右手に広がるオープンキッチン。広々とした空間には無駄なものが何一つなく、清潔に保たれていて、「美しい!」のひと言。

真っ白なクロスがかけられたテーブルがいくつも並ぶフロアは、“New Yorkの倉庫”をイメージしたそう。店名の“アルティザン”とは、フランス語で熟練工や職人を表します。

当店のオーナーシェフ・佐藤 剛さんは、フレンチの“アルティザン道”をひたすら走ってきました。

フランス人シェフが教えてくれたスピード感とダイナミズム

佐藤シェフは沖縄生まれ新潟育ち。新潟のステーキ店で働き始め、1年後には厚木ロイヤルパークホテルへ。そこで出会ったシェフのフィリップ・バットン氏に大きな影響を受けたそうです。

「フィリップが紡ぎだす世界観にノックアウトされたのです。もともと僕はバイクレーサーを目指していたので、スポーツのようなスピード感、ダイナミズムに圧倒されて。いつか彼のようなシェフになりたいと思うようになりました」。

佐藤さんはフランスと日本国内のさまざまなお店での修業を経て、現在では横浜にアルティザングループとして、自らのお店を何件も経営しています。

さて、料理に話を戻すと…。

今回、1品目にいただいたのは「青首の鴨のロースト ソースサルミ」(6,800円・税込)。

ソースサルミは、ジビエ料理によく使用されるもの。野鳥類の骨、内臓などで煮込み、それをつぶして、こしては寝かせ、こしては寝かすを何度も繰り返すと、さらっとツヤのあるシルクのようなソースが完成。

最後に、最高級ブランデーの「バ・アルマニャック・ラヴィニャン」を足して味を仕上げます。

同時に、お肉もどんどん調理されていきます。青首の鴨は、ムネとモモに分けられ、ムネはフライパンで表面を焼いた後、炭火でローストに、モモは叩いて薄くのばし、マスタード・卵白・パン粉を付けてラード油でカリッと揚げます。

この一連のプロセスには全く無駄がなく、佐藤シェフの動きが力強く美しいことに感動! そして、出来上がった料理は、大きな益子焼の皿に盛り付けられました。「僕はあえて野菜は使いません。野菜の彩りは美しいのですが、ごまかしになってしまうような気がして」と佐藤さん。まるで西洋絵画のようであり、日本画のようであり。熟成した果実と深い森のような色合いがすばらしく、ジビエ×焼き物が紡ぐ世界観に圧倒されてしまいました。

その後、シェフ自ら取り分けていただきます。鴨の全身が余すところなく使われたソースサルミと鴨肉のハーモニーは、なんとも言えない深みとコク。口の中ですべてが溶け合い、まろやかに胃の中へ吸い込まれていきます。モモ肉の軽いサクサク感は、極限まで薄く均一にのばして付けられた衣のおかげでしょう。

2品目は「栃木の猪のパイ包み フォアグラとトリュフ」(4500円・税込)

パイで包んだ猪肉を200度のオーブンで20分程度焼き、フォアグラとトリュフを載せ、ポルト酒を煮詰めた自然な甘味を感じるソースでいただきます。パイ包みの中の肉は、猪の頭や首、スネなどを使用。肉を一度やわらかく煮て骨を外し、同じくやわらかく煮た豚足と和えてミンチ状にしたものを包んでいるのです。すべての部位を無駄なく料理にそそぐという佐藤さんの姿勢がここにも。

パイとフォアグラ、ジビエが融合したフランス料理らしい一皿でした。

食べて、飲んで、おしゃべりして。食事はそれでコンプリート

ワイングラスに注がれたのは、ブドウの優しさと余韻が特徴的な「ドメーヌ ド セベーヌ レ バンスル」。ワインのおかげか、取材スタッフと佐藤さんの会話が一段と弾みます。そう、これこそがジビエ、ひいては食事の醍醐味です!

「食べて、飲んで、おしゃべりして。それで楽しければいいと思っています。だけど、自分が作り出すものに妥協したくない。流行りのフレンチにも興味が沸きません。よりオリジナリティがあって、フレンチよりフレンチらしいものを作りたいのです。その結果、お客さまに受け入れられればいいのかなと思います」。

シンプルで、ギリギリまで削ぎ落とした完成形ながら、素材を何一つ無駄にしない。流行りに背を向けつつも、繊細かつ大胆に料理を作り続ける職人の姿がそこにありました。

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