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老舗が軒を連ねる浅草で長く愛されるフレンチを目指す 「ルディック」

フレンチ シカ イノシシ そのほか 東京
2019.01.16

日本らしい名所が集まった街、浅草。由緒正しい和菓子の老舗や100年以上も営業している飲食店が普通に存在しています。だからこそ、今、外国人はもちろん、日本人までもが訪れ、連日多くの人でにぎわう観光スポットになっているのでしょう。そんな浅草の喧騒から少しだけ離れたエリアに、2016年の12月にオープンしたフレンチレストラン「ルディック」があります。

カウンターとテーブル席合わせて15席というこぢんまりとした店内ですが、木目調のカウンターや丸太をアーティスティックに配置した壁など、北欧の香り漂う居心地のよさが人気です。

「ロアラブッシュ」出身の若きシェフが腕を振るう

「ルディック」を切り盛りする大塚勝也シェフは、24歳で渡仏後、名門パティスリーやミシュラン星付きのレストランで最先端の調理技術を取得。その後、青山の名店「ロアラブッシュ」などで研鑽したのち、自らの店をオープンさせました。

まず、1品目に運ばれてきたのは、「雉のコンソメ」(3,000円・税別)。

スープの中にすくっと立っているのは、いわゆる“チューリップ”(手羽元の肉を加工しチューリップ型にまとめたもの)。森の湖畔で水飲みをする雉の姿がふと思い浮かびます。スープは、驚くほどにシンプル。余計な雑味が一切なく、出汁そのものを堪能できます。浮かべられたマッシュルームも香り豊か。このスープを味わうためだけに訪れるお客さまがいるというのも納得のひと皿です。

大塚シェフがジビエをやろうと思ったのは、「おもしろいから」。

「ジビエは当然個体差もあるけれど、アプローチが食用肉とはまったく違うから、とにかく考える。モノを見て、その状態を見て、そこからどう手を加えるか。『ここはミンチにして…』『こんな素材と合わせてみたら…』と頭を悩ませる、それがおもしろいんです」。

シェフの遊び心を感じる食事の楽しさ

2品目は「鹿の炭火焼き」(2,600円・税抜)。

ソースに使っているのは、千葉県の富里市から届いた紫落花生。「たまたま手に入ったんで」というこの珍しい素材を、鹿肉のソースに使うあたりはにくい演出。フォアグラベースのソースに胡椒を効かせ、紫落花生の風味を引き立たせています。落花生の紫の色合いも鹿肉にぴったりマッチ。

クロケットや鹿の脂が添えられていますが、「鹿肉は脂が少ないので、足してあげたらメイン料理としてのどっしり感が備わるんです」。あふれる脂の旨味とソースの風味がまろやかに溶け合い、あまりの美味しさに思わず笑みがこぼれます。店名の「ルディック」は、フランス語で“遊びの”という意味合いの言葉。その名のとおり、それぞれの料理のここかしこに、大塚シェフの遊び心が垣間見え、それが程よい塩梅のスパイスになっているのが、なんともたまりません。

3品目は、ラストを飾るにふさわしい豪華な1皿が登場。

長崎県平戸産「猪バラ肉のブレゼ」(4500円・税抜)。

“ブレゼ”とは少量の出汁やワイン・水などの水分を加え、鍋またはオーブンで肉や魚を蒸し煮にするフレンチの料理法。そのため、肉はナイフを使う必要がないほどやわらかです。上にかかっているのは“ベーコンの香りの泡”。これは、ベーコンを牛乳で煮出し、ベーコンの香りづけをした牛乳を泡立てたもの。フランス料理の煮込みというと、どうしても重くなりがちですが、「ビーフシチューに生クリームをかけるような感覚ですね」。軽やかな香りとともに、肉がすっと喉を通っていきます。

ルディックでは、1か月に1度メニューを変えているそう。新しいメニューを考えるのはたいへんじゃないですか?との問いに「考えるのが楽しい。自分的には、いつかきっとだんだん難しい料理は作らなくなる気がするんですよ(笑)。今34歳なので、今しかできない、今しか思いつかないことを今のうちにやっておきたいんです」。

クラシックフレンチをベースにしつつ、「王道だけじゃつまらない、なにかやりたい、驚かせたい」と野心にあふれた大塚さんの心の声が聞こえてきそうな料理の数々。オープン2年目にして「ルディック」が貫禄の存在感を放っている理由がよくわかりました。

取材したこの日は、実は定休日。「せっかく取材してくれるのなら落ち着いた中で」とわざわざお店を開けてくれたのです。一見クールイケメンの大塚シェフですが、なによりおもてなしの心を大切にする方なのだと実感。「同じ料理をもっと美味しくできないかといつも考えている」と笑う大塚さんの言葉に、来るたびに違う料理を楽しめるという予感がした取材となりました。

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