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熊本市を拠点に、狩猟肉の魅惑を広める専門店 「山ねこ軒」

熊本 シカ イノシシ 狩猟肉料理店 くまもとジビエ料理フェア
2019.11.20

メイン食材は狩猟で捕獲した肉類のみ──。熊本市内では珍しいそんなスタイルの店が、熊本県庁正門前にある「山ねこ軒」です。

なんともかわいい響きの名前ですが、取材を通して感じられたのは、オーナーシェフ・村上正樹さんがこの仕事に賭ける静かな情熱でした。

飲食店の立場から鳥獣害問題解決に役立ちたい

「ここの料理にジャンルはありません。強いて言えば狩猟肉料理でしょうか。和洋中の専門店だと、それぞれの技法を基に料理人が食材にアプローチしますよね。でも僕の場合はまず食材ありき。どう調理すれば、この鹿や猪が一番美味しくなるだろうと日々模索しています」。

その成果は、メニュー表替わりに掲示された黒板に現れています。

そこには、酢モツならぬ「酢シシ」、回鍋肉ならぬ「回鍋猪」、牛スジ大根ならぬ「鹿スジ大根」といった、ジャンルの垣根を越えて興味をそそる料理名がずらり。

「ワクに縛られない自由さがウチの強み」と村上さん。フランス語の“ジビエ”ではなく、あえて“狩猟肉”と呼ぶのもそうしたこだわりからです。

宮沢賢治作「注文の多い料理店」から店名を拝借した「山ねこ軒」は2018年1月にオープン。ここ数年の深刻な鳥獣被害を知った村上さんが、「飲食店側から問題解決に切り込めないか」と考えて始めた狩猟肉料理店です。

「海外では優れた食材として扱われる狩猟肉ですが、国内ではほとんど廃棄処分。日本の料理人として、その現状は少し情けないなって。この店が、わずかでもそれを変える一助になったらと思います」

1頭買いの狩猟肉と自由な発想で、料理を楽しむ

現在仕入れている狩猟肉は熊本県産が主体で、壁に飾った鹿の骨も人吉市界隈で獲れたもの。通年味わえる猪や鹿のほか、キジ、カモ、アナグマなど、厳しく吟味された良質な肉が随時入荷しています。

「いつも1頭買いするので、さまざまな部位が使えて料理の幅が広がりますね。狩猟肉は個体差が激しく扱いが難しいのですが、最近は逆にそこがおもしろくなりました。僕にもお客様にも、その日の料理が“一期一会”の特別な体験になるわけですから」。

今でも加工場に出向いては、職人にさばく技術を学ぶという村上さん。ほかにも懇意の精肉屋さんとイベントを開くなど、狩猟肉の魅力を発信すべく地道に努力を積み重ねています。

「狩猟肉ソーセージとポトフ」(1,800円前後・税込)。猪6:鹿4の割合で混ぜたソーセージは、肉の凝縮感があって旨味も濃厚! 冷めてもサラミのように楽しめそうです。

そしてこれが同店のスペシャリテ「狩猟肉の薪焼き」(写真は猪350g/6,650円・税込)です。肉がパサつかず、適度にジューシーさを残す絶妙の仕上がりは薪ならでは。骨周りの肉だけに風味もバツグンでした♪

「薪焼き」の肉は季節や仕入れによって変わります。事前に予約しておけば、メニューにない希少部位が味わえることも。

これも市内では珍しいのですが、同店のアルコールはポルトガル産のワインのみ。
「複数のブドウをブレンドして醸造する独自の醸造法が継承されており、独特な味の銘柄が多いんですよ」。
ワイン党の方はチェックをお忘れなく!

狩猟肉の普及のため、イベントやマルシェにも進んで参加している村上さん。もうすぐ実現しそうだという、こんな素敵な企画も教えてくださいました。
「社会貢献活動的なものですが、今度保育園や小学校に狩猟肉を無償で提供し、給食担当の方と一緒に料理を作ります。鳥獣被害のことも含めて、子供たちに野生の食材の美味しさを伝えたいですね。それに狩猟肉のような健全な食材に触れることは、きっと子供たちにも意味がある。例えば将来、“どんな食べ物が自分によくて何が悪いのか”を判断できる力に繋がるような…僕はそう思うんです」。

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