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静かな里山カフェで味わう熟成ジビエカレー「里山料理教室&週末café 金沢キッチン」石川県金沢市清水町

石川県 カフェ カレー イノシシ ランチ
2021.09.22

城下町として知られる石川県金沢市は、実は海から標高1000mを越える山岳地帯までの広い市域を持っていて、そのほとんどが里山です。そんな里山地域のひとつ、清水町は、金沢城の石垣にも使われた戸室石(とむろいし)の産地・戸室山の裾野の標高270m前後に位置する、棚田が広がる小さな町です。

日本三名園として有名な「兼六園」からはバスで30分ほどの清水町。にぎやかな城下とは別世界の、のどかな景色が広がっています。

今回紹介する「里山料理教室&週末café 金沢キッチン」(以下、金沢キッチン)へは、金沢駅より車で約20分。公共交通機関を利用する場合は、西日本JRバス・医王山線に乗り約20分、「田の島」で降車。清水町への分岐の坂道がバス停のすぐそばにあります。

坂を登って進むと道が分かれるごとに「金沢キッチン」と書かれた案内板が設置されているので、迷うことはありません。のどかな町並みを眺めながら歩くと、バス停から30分ちょっとで到着しました。

手作りのかわいい猪の看板が目を引きます。

店内は、どこか上品さを感じさせる金沢町家の雰囲気を残しつつ、ウッド調の家具を中心にした温もりある空間です。店内の席数は、空間に余裕をもたせて10席ほど。

窓から見える風景は、緑一色。店内に聞こえる音は、森の木が風にざわめく音や鳥の声だけ。県道から少し入っただけで、車の音もまったく聞こえない、心が落ち着いてくるような空間です。

涼しい季節に人気のテラス席は、西側にあるので夕陽が見えるそうです。

オーナーは食に情熱を傾ける野菜ソムリエ

オーナーシェフは関西出身の野菜ソムリエ、丸山 順子さん。この「金沢キッチン」を2015年にオープンさせました。

順子さんは、2013年に野菜ソムリエの資格を取得。当時住んでいた愛知県では料理教室「Aloha kitchen(アロハ キッチン)」を立ち上げましたが、金沢出身の夫の郁夫さんのUターン転勤でこの清水町へ移ることになり、郁夫さんの実家であった建物をリノベーションして誰もが親しみやすいネーミング「金沢キッチン」が生まれたのです。

「こんな自然豊かな場所なら、里山を生かした教室が運営できる!」と思い立ち、オープンした当初は週末にカフェをしながら、平日は親子で参加できる収穫体験など里山教室を開催。食育にも尽力し、味噌や麹の有効活用を研究するなかで、全国で10軒ほどしかない北陸唯一の種麹店、富山県の「石黒種麹店」ともご縁が。石黒社長による味噌教室を毎年「金沢キッチン」で開催してきました。

また、NHK「ひと皿の魔法 NY天才シェフ 日本修行の旅」にて麹の回の撮影が「金沢キッチン」で行われ、石黒社長の味噌教室にニューヨークのトップシェフであるDavid Bouley(デビッド・ブーレイ)氏が参加したことも。
「石黒社長の麹の話や、私が作る発酵料理を食べてもらうきっかけを与えてもらい、貴重な経験をすることができました」と順子さん。

無添加料理や、「はぐくみスクール」など子供や親子への食育活動の功績が認められ、2019年には東久邇宮(ひがしくにのみや)記念賞をご夫婦で受賞するなど、食に傾ける情熱と活躍には脱帽です。

料理開発に4か月、熟成ジビエカレー誕生

ジビエに関わるきっかけは、知り合いから「猪肉の売れ行きが今ひとつで困っている。誰もが美味しく食べられるジビエメニューを作って猪肉を普及できないか?」と相談があったことです。猪肉を使うのは初めてでしたが、実際に使い始めてみると、あることに気が付いた順子さん。

「複数箇所から猪肉を取り寄せ食べ比べてみたら、味が全然違いました! 個体差だけではなく“しめ方”で味が大きく変わるということを知り、食肉になるまでの一連の流れがどうなっているのか興味を持ったんです。猪肉がもっとも美味しかった食肉処理施設『ジビエ工房三谷』の杉本 秀夫さんや友人と勉強会、試食を繰り返し取り組み、試行錯誤してきました」
食べて知っていくうちに、苦手意識が強かった猪肉に自分自身が虜になってしまったそう。

どうしたら猪肉の旨味を最大限に引き出せるか、メニュー開発に打ち込み、4か月かけて完成したジビエメニュー第1弾が「ジビエカレー」でした。

猪肉は1日寝かせて熟成させ、カレーは4時間ほど煮込みます。保存料をいっさい使っていないので、完成したら冷凍保存しています。

提供する時は、ゆっくり解凍したあと、じっくりと湯煎で温めます。

カレーに使う野菜も添える野菜も、できるだけ農家さんが無農薬で育てたものを使っているそう。
「きれいさを求めず、安心の美味しさを求めて、形の整った野菜よりゆがみや大きさも大小さまざまな野菜を使います。農家さんのフードロス問題にも貢献できたら」と順子さん。ここにも、食材を無駄にしないという順子さんのこだわりが感じられます。

誰もが美味しく安心して食べられるジビエメニュー

今回ご用意していただいたのは、「ジビエカレー」と「ジビエのタコライス」の2品です。

「ジビエカレー」(1,500円・税込、テイクアウト1,000円・税込)は、ワンプレートに猪肉のカレーと自家製の黒米、カボチャの煮物、加賀太きゅうりのゴマ和え、白インゲン豆とニンジンのマリネ。カレーは250gとボリュームたっぷりで、小麦粉は使わず、野菜やお肉などの素材だけでとろみを付けています。

ごろっとした猪肉は、噛むととろける脂が口の中に広がります。甘味と旨味が絡み合った深みのある味わいで、カレーの中でもしっかりと猪肉としての存在感を主張しています。

「ジビエのタコライス」(1,500円・税込)は、メキシコ料理のタコスに猪肉が使われていて、自家製黒米の上に惜しげなくのっています。

ご飯と具材を混ぜながらいただくと、甘いトマトに濃厚なアボカド、スパイシーに味付けされた猪肉が刺激的。溶けたチーズが程よい塩味と風味を利かせ、暑い夏にはピッタリ!

こちらのプレートにも、野菜がたっぷり添えられていてうれしいですね。

ジビエが初めての人やお子さんでも、猪肉の美味しさを存分に堪能できる味わいで、またジビエを食べ慣れた方でも、きっと新たな味に気付かされることでしょう。

美味しくいただいたあと、丸山さんが素敵なところに案内してくださいました。「金沢キッチン」のすぐ裏には、子どもが伸び伸びと遊ぶことができるように竹で作られたすべり台やツリーブランコが設置されています。竹のすべり台の上には竹でできた広場もあります。

竹で作られた「竹テラス」では、事前に予約すればお食事も可能とのこと。里山の自然と開放的な空間の中で、順子さんのお話に耳を傾けながらジビエ料理を味わえば、心穏やかなひと時になるに違いありません。

  • ジビエトの掲載店舗は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に基づいた仕入れ、加熱調理等がされていることを確認しています。
  • 掲載内容は取材時のものです。営業時間などの最新情報はお出かけ前に各店舗の公式HP等にてご確認ください。
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