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ワインとジビエのマリアージュを店内でも持ち帰りでも「セルクル軽井沢」

長野 ビストロ シカ イノシシ
2020.03.12

湯川の清流沿いに自生する春楡(はるにれ)の木々約100本をその名の由来とし、個性的な店舗が集まる9棟の建物がウッドデッキで繋がれたエリア「ハルニレテラス」。長野・軽井沢を観光や避暑で訪れる人たちにとって、今やすっかりお馴染みとなったハルニレテラスが中軽井沢に誕生したのは2009年の夏のことでした。

今回訪れた、「セルクル軽井沢」は、そんなハルニレテラスの誕生と同時にオープン。
「最初は別荘を訪れる方々向けのデリが中心で、デリに合うワインもそろえた店だったんです」。
そう話してくれたのは、オーナーである鎗田(やりた)順一さん。そう、この店ではテイクアウト用のデリ(惣菜)とワインを販売するスペースがあり、店内の半分以上のスペースを占めています。

食事が楽しめるのは繁忙期でも34席ですが、この規模だからこそ、それぞれのゲストに合わせたサービスを提供できているのです。

ワインをより一層美味しく楽しむためのジビエ料理

まずは「鹿のスネ肉の赤ワイン煮込み」(単品1,636円・税抜)をいただきます。ソースには赤ワインとフォンド・ボー、そして栗のピューレも入っているとのこと。

スネ肉というと硬いというイメージが先行しがちですが、実際に食べてみると肉の繊維に沿ってホロホロとほぐれ、噛むとじんわり旨味が広がっていきます。ソースの赤ワインのほのかな苦味と香り、そして程よい脂が旨味として余韻を残し、時折口の中ではじけるブラックペッパーが心地いい刺激に。添えられた栗のほっこりとした甘味は、赤ワインソースと対照的で、交互に食べると互いの味わいを際立たせます。

また、スネ肉ということ、そしてこれだけの肉の厚みを考えても、このやわらかさと複雑で何重にも感じられる旨味に対して、ただただ感服するばかり。

続いて、生のパスタ、キタッラのもちもち食感を楽しめるのが「信州産鹿のラグーソースパスタ」(単品2,100円・税抜)。冬季限定のメニューで、大きめにカットされた鹿肉がその存在感を強く主張する一品。

ラグーソース自体が第一印象ではシンプルで、しかもトマトの酸味がさっぱりしているので鹿肉の味を楽しむために用意されたというべき一皿。

もちもちとした食感が魅力のパスタを楽しみつつも、大きめにカットされた鹿肉の味をしっかりと味わうことができます。

目の前に運ばれて来た瞬間、香ばしさとバターの香りが鼻腔を刺激するのが「鹿とフォアグラのパイ包み焼き」(2,000円・税抜)です。

鹿肉のミンチに玉ネギ、卵を繋ぎにしてパイで包んだこの一品には、鹿の骨からとった出汁、カシス、赤ワインなどから作ったソースが添えられていて、それぞれの持ち味が一体化。

そして鹿のミンチの中央に配されたフォアグラが、こってりとした味と食感で全体を包み込み、鹿肉の旨味を引き立てています。

地元、長野県の山崎商店からジビエを仕入れていることに対して、シェフの久保庭直人さんは「山崎商店は下処理が抜群にうまい。そして、欲しいと思った部位ごとにオーダーできて、ポーションで納品してくれるのがありがたい」と評価します。

ソムリエである西津 黎(れい)さんは、「当店ではおもにフランス産のワインを取りそろえていますが、信州の希少なものもその時によっては入荷していますので、お声がけいただければ幸いです」と笑顔。
この店ではグラスワインのメニューはあるものの、ワインリストはありません。というのも、ボトルワインを楽しみたい場合は、店内のワインショップでエチケットを見ながら好みのものを選び、レストランでいただくというシステムなのです(小売価格+500円・税抜)。

オーナー自らがその目で確かめた信州ジビエの安全性と美味しさ

オーナー鎗田さんに改めてお聞きしました。なぜ、ここで地元のジビエを扱うようになったのか。
「期間限定で開催されていたCu-Cal(クーカル)という、軽井沢のグルメイベントがきっかけです」。

「リストランテ アクアパッツァ」の日高良実シェフ、「Passo a Passo」の有馬邦明シェフといった著名なシェフと一緒にイベントを作り上げていくにつれ、ジビエに取り組みたくなったという鎗田さん。このイベントを機にとある現場へ視察に出向き…。
「食肉処理施設は清潔だし、説明もリアルで丁寧。持ち込まれた際の状態や血抜きの仕方、どんなハンターを選ぶか、など、きちんと説明してもらい、ここは信頼できると感じました」。

オーナーの鎗田さんも実はソムリエ資格の保持者。店内で食事をする方に料理にマッチするワインを教えてくれるだけでなく、デリ利用の方に対しても、好みのワイン選びを手伝ってくれます。

「軽井沢という場所は、店内で料理やワインを召し上がる方だけでなく、デリの総菜とワインを別荘に持ち帰って楽しむ方も少なくありません」と鎗田さん。

「でも、ソムリエの資格を取ればゴール、ではありません。体系的にワインの知識を身につけつつ、生産者の背景、そこにある物語までお客様にお伝えでき、そして生産者の気持ちに寄り添えること。それが大事なんです」。

軽井沢、そしてハルニレテラスという観光地の最たる場所にありながら、長年営業を続けられている理由は、こうした鎗田さんの姿勢によるものではないでしょうか。おしゃれでトレンドを追求するだけの店ではなく、ジビエについても、ワインについても、真摯に取り組むオーナーの心意気を、確かに感じた訪問でした。

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