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既成概念を超えて食と美酒のマッチングを楽しめる下北沢のレストラン「Salmon & Trout(サーモン&トラウト)」

東京都 バル(バー) シカ イノシシ 天ぷら・揚げ物 スープ
2021.01.06

東京都世田谷区、賑やかな下北沢駅前から歩くこと約10分。

緑道のある北沢川を過ぎると左手に現れるのが「Salmon & Trout」(以下、サーモン&トラウト)です。

どこか懐かしい感じの扉を開けて入ると、目の前にはカウンターが6席。美味が生まれる瞬間のシェフの手さばきを間近に見たいなら、こちらのカウンター席がおすすめ。

道路に面した窓際にはテーブルが1卓あり、最大6名まで着席できるそうなので、小グループでの利用にはおすすめです。

「サーモン&トラウト」のディナータイムは、月替わりのディナーコース12,000円(税抜・要予約・金額が変更になる月あり)のみ。アルコールもノンアルコールも楽しめるドリンクペアリング込みになっています。

この日、まず登場したのは「猪と鹿のスープ」。猪と鹿の骨を7~8時間かけて、じっくり煮込んで旨味を抽出しているそう。

ひと口含むと、猪の甘味と鹿の旨味が絡まって広がり、そこに何かさわやかな香りがアクセントとなっているのを感じます。

その香りの正体は…、スープに浮かべたカラミンサの花と葉。シソ科の香草であるカラミンサのほかにも、オーナーが約20種のハーブ類を育てていて、こうして料理やドリンクに利用しているとのこと。

ジビエそのものの味を生かしつつ、花やフルーツ、ハーブで多彩な表情に

続いて登場した「鹿カツ」は、宮城県牡鹿半島の鹿のモモ肉を使用。赤ワインやベリー類、紅麹やトマトなどで作ったソースが添えられています。サクッとした衣の歯応えの次に感じるのは、やわらかな鹿肉の弾力と旨味。そこにフルーティなソースが味わいを広げます。また、カツの上には自家製の醗酵茶葉がのせられているので、一緒に食べるとほのかな苦味と華やかな香りがプラスされてまた一興。

「サーモン&トラウト」でシェフを務めるのは中村 拓登さん。辻調理師専門学校、辻調グループ フランス校を卒業後、フレンチレストラン「コム・ダビチュード」、懐石の名店「八雲茶寮(やくもさりょう)」などで腕を磨いたのち、フリーランスの料理人に。国内外の飲食店などにメニューを提供したり、人材を育成したりと幅広く活躍。2019年6月からはこの店でただ一人のシェフとして、すべての料理を手掛けています。

そんな中村シェフは「流行りの料理には興味がない。自分は日本料理が基本ですが、それをそのまま出すのではおもしろくないんです」と話します。残暑の時期には発酵食品や食欲を促すスパイスを使って、体を癒す。秋めいてきたら温かな品を増やして、食べて体を温める。その時、その月に自分が欲するものが、月替わりのコースを組み立てる軸になっているというのです。

料理をより美味しくするワイン、日本酒、ビールを提案

こうして中村シェフが毎月考案する料理に対して、おすすめのアルコールなどを提供しているのが、オーナーであり、カヴィスト(酒の仕入れや管理の専門職)でもある柿崎 至恩さん。フードライター、翻訳編集者を経て、2014年に「サーモン&トラウト」をオープンさせました。また、ソムリエとしてのキャリア7年を超える山崎 裕太さんが接客を担当しています。

ワインの在庫は300本弱とのことですが、「特定のエリア、特定の銘柄にこだわっているわけではありません」と柿崎さん。

さらに、中村シェフが話を引き取ります。
「例えば鹿に赤ワインが出てくるのが定番ですよね。でも、柿崎は試食してみて、フルーツビールを合わせてみたりする。ジャンルレスなんです」
柿崎さんは2006年にイタリア・シチリア島へ渡り、ワイン醸造について見聞を広めました。カヴィストというワインの専門家でありつつも、日本酒、ビール、焼酎など、ワイン以外のアルコールも熟知。

お茶も中国茶、日本茶、台湾茶など、多彩な飲み物に造詣が深く、料理との相性を考慮してペアリングしているとのこと。

ジャンルレスという点では、次に出していただいた「霞ヶ浦の鯰(なまず)の焼き物」もそうかもしれません。

炭火で焼かれたナマズに添えられているのは、追熟させた調理用バナナを白味噌で風味を足したもの。さらに喜界島の花良治(ケラジ)みかんのピールが香りと苦味を添えています。
「イメージした立ち位置としては、“日本の中の東南アジア”という感じです」(中村シェフ)

ナマズは塩麴と追い塩で下味が付けられていて、炭火の遠赤外線効果でふっくらとした食感に焼き上がっています。そこにバナナの甘味と柑橘のさわやかさ、豆の歯応えといったさまざまな要素が加わり、意外性と複雑な美味のハーモニーを楽しむことができます。

「いろいろ試作していたら、できちゃったんで」と出していただいたのは、「鹿のモモのジャーキー」(単品500円・税抜)。鹿のスジ肉を使ったジャーキーは、噛めば噛むほど鹿の旨味がにじみ出てきて、ブラックペッパーの刺激にまたアルコールが進みそうな一皿です。
「この鹿は120㎏という特大サイズで、牛舎に入り込んで餌を横取りしてたような“やんちゃくん”だったそうです(笑)」と中村シェフ。

実は中村シェフの奥様は2年前に狩猟免許を取得。現在は牡鹿半島で猟師として活躍しているそうで、中村シェフも実際に狩猟の現場に同行し、「命をいただく」「命のありがたみに感謝して、決して無駄にしない」という思いを強めたのだと言います。

コース料理は月ごとに内容が入れ替わりますが、鹿や猪、猟期中には鴨などのジビエを積極的に取り入れています。また、月替わりコースと言っても、日本食で「走り、盛り、名残り」と旬が3つあるように、同じ月のコースでも微妙に調理法や味付けを変えているので、常連客でも毎回、新鮮な驚きを覚えることができます。

中村シェフの生み出す季節ごとの料理、柿崎さんが料理に合わせる酒類、そして山崎さんの気持ちのいい接客と、3人それぞれの強みを生かした居心地のいい空間、「サーモン&トラウト」。週末には不定期でランチやイベントを開催していて、こちらでジビエ料理が提供されることもあるそう。緑道のお散歩がてらに寄ってみるのもおすすめです。

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