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ジビエと有機野菜を人形町の隠れ家で味わう 「あまからくまから」

居酒屋 シカ イノシシ 東京
2019.11.25

地下鉄日比谷線、都営浅草線のどちらの人形町駅からも徒歩1分。東京・日本橋の人形町交差点と目と鼻の先に、「ジビエ 野菜料理 あまからくまから」と書かれた看板を見つけることができます。

階段を上がると重厚感のある扉に、何やら手書きの文字が…。
「素晴らしきジビエワールドへようこそ!!」「扉を開けて3歩おすすみ下さい!」

扉を開けると、天井や柱には蔦がはい、壁には小鹿や穴熊の毛皮が飾られている店内の雰囲気に圧倒されます。木材が多用されているので、どことなく山小屋のような雰囲気もあり、鉄の格子で区切られた個室に腰を下ろせば、都会の隠れ家にいるかのよう。
聞けば日本のトップ建築デザイナー、兼城祐作さんによる内装なのだとか。モダンとロハスが混在する、居心地のいい空間です。

4人掛けの個室は3卓、2人掛けが3卓あり、最大収容人数は18名。広すぎず狭すぎない空間は、仕事終わりに気の置けない友人と訪れたり、親密度を一歩進めたいカップルで楽しんだりするにもおすすめです。

そんな「あまからくまから」を営み、自ら料理を手掛けるのが店長の林 育夫さん。
「去年の冬に一番人気だったのが、ぼたん鍋。広島の生口島(いくちじま)の猪を使っているんですよ」。

肉自体も脂身も特徴的な「みかん猪」をぼたん鍋で

そう言いながら出してくださったのが、「みかん猪のぼたん鍋」(1人前3,300円・税抜 ※写真は2人前)。ぼたん鍋の名前の通り、花のように盛り付けられた猪肉は、深紅の赤身と脂身の色のコントラストが美しく、鍋から立ち上る焼き飛び魚の出汁と特製味噌の香りと相まって、見ているだけで食欲をそそります。

カボチャやネギ、春菊、キノコ類などの野菜に火が通ったあたりで、猪を投入します。脂身は透きとおり、赤身が褐色に色付いてきたら食べごろ。
口の中へ入れて噛むと、まず、肉のやわらかさに驚きます。脂身は甘く、赤身の味をマイルドに包み込むかのよう…。さらに山椒の香りがピリッと引き締めるアクセントに。

ところで、メニュー名にもある「みかん猪」とは、どういうものなのでしょう。
「広島県の生口島にある、柑橘類の栽培が盛んな瀬戸田で捕れた猪を“みかん猪”と呼んでいるんです」。
林店長によると、この辺りの野生の猪は瀬戸内海に浮かぶ離島間を泳いで渡るため、肉が発達しているうえ、柑橘類を食べているために肉が甘く、脂ののりもよくなるのだそう。

「普通、脂身といったら白だけど、みかん猪はピンクがかっているんです」。
動物たちが口にするものによって味が左右されるジビエですが、柑橘類を食べるとこんなにも脂がやさしい味わいになるのかと驚きました。

次に出していただいたのは、「天然エゾ鹿の炭火焼ステーキ」(1,500円・税抜)。

実はこのメニュー、焼き上がりまでに25~30分の時間がかかります。時間がかかっても炭火の遠赤外線効果で肉の旨味を引き出すのが林店長のこだわり。

そのため、2~3cmはあろうかという厚みなのにナイフの通りがよく、外はパリッと香ばしく、中は肉汁がじんわりと口の中に広がる仕上がりに。味付けは塩のみとシンプルなぶん、鹿肉の味そのものがダイレクトに感じられます。

また、付け合わせのジャガイモ、シシトウ、パプリカなどの野菜は長野の農園などから仕入れる有機野菜。いずれも食感がよく、焼いただけなのに素材の味、甘味さえも感じられ、鹿肉の合間に口に含むと、口中をリセットするかのようにさわやかです。

お客様の「美味しい」の声に背中を押されてジビエ研究に傾倒

林店長がジビエに取り組み始めたのは約5年前。有機野菜を仕入れていた長野の農園から、冬は野菜の収穫が少ない代わりに、鹿や猪を仕入れるように。
「だから最初は、冬だけの季節限定で始めたんです」。

実はかつてジビエにあまりいいイメージを持っていなかったという林店長。
「けれど、実際食べてみたらものすごく美味しくてびっくりしてね!ぼたん鍋として出してみたらお客さんに大人気で、リピーターも出てきて、それからジビエにハマっちゃったんです」。

さまざまジビエを取り寄せては調理&試食を重ね、どういうものが美味しいのか、どう料理すると魅力を引き出せるのか、研究を続けると同時に、精肉加工卸など専門家の人々とコミュニケーションを広げていき、季節や産地、猟師さんによる違いなどにも精通。いまや「ジビエと有機野菜」を看板に掲げるまでになりました。

そして、最後の1品は自信作「猪肉のトマトソースパスタフレスカ 浅草開化楼特製」(1,200円・税抜)です。

メニュー名にある“浅草開化楼”とは、中華麺の製麺所として多くの人気ラーメン店から支持をされている東京屈指の製麺所。そして“パスタフレスカ”とは生麺のこと。
「特殊な小麦粉を使って低加水で作っているため、生麺では普通、アルデンテにならないのにこれだときちんとしたアルデンテに仕上がるんです」と林店長。

そんな生パスタはもっちりとした食感、そして噛んだ際の小麦粉の香りが絶妙。肝心の猪のミートソースは、一般的なミートソースよりも肉が一つ一つ大きめで、しっかりと歯ごたえがありつつもかたくはなく、噛むと肉の味が滲みだしてパスタとの相性もピッタリ。

店名の「あまからくまから」とは、沖縄・奄美地方の方言で、「あっちからこっちから」という意味とのこと。今回紹介したエゾ鹿は北海道から角が生える前の若いものだけを、猪だと生口島はもちろん全国から仕入れていて、ことに熊本県の狩猟の名人、大寺さんから仕入れる猪は、そのために来店するリピーターが付くほどの人気だそう。

みかん猪など人気の素材は仕入れ状況によりますが、林店長の目利きで仕入れたジビエはいずれ劣らず、質のよいものばかり。一期一会の出会いを期待してふらりと出向くのもまた一興かもしれません。

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