ジビエのイベントに行く

おいしく食べて学ぶ! ジビエト初企画・ジビエ体験ツアーをレポート!

神奈川県 体験 イベント
2023.02.08

2023年1月、女性ハンターによって結成されたチーム・ジャパンハンターガールズとジビエトがコラボした日帰りツアー「ジビエBBQを楽しむSDGs体験ツアー」が開催されました。場所は多くの野生動物が生息する神奈川県南足柄市。捕獲のプロである彼女たちのナビゲートで山道トレッキングやバーベキューを楽しみながら、ジビエやその背景にある環境問題、SDGsについて理解を深めていきます。

参加者は14名。親子から20代のカップルまで、ジビエに関心を持つ幅広い層が集まりました。「家族全員ジビエ好きで、7歳の子供がジビエを食べたいと言うので参加しました」という人や、「将来はジビエの普及に携わる仕事に就きたいので、ハンターさんから話を聞いたり野生動物が暮らす場所をこの目で見たかった」という大学生まで、参加理由もさまざま。

小田急線開成駅に集合し、まずは廃校をリノベーションした施設・CAMPiece(キャンピース)南足柄へ。山道トレッキングやジビエバーベキューの前に、講話を通してジビエと狩猟、そしてSDGsとの関係性を学びます。

ジャパンハンターガールズのみなさんは「狩猟でできるSDGs」をテーマに、イベントなどを通して狩猟やジビエ、ジビエの利活用について発信しています。今回は、共に狩猟歴7年目となる代表理事の田坂恵理子さん(写真中央右)と理事の脇島里江(写真中央左)さんがお話を聞かせてくれました。

講話では資料を見ながら「どうしてジビエを食べるようになったの?」「狩猟がSDGsとどうつながるの?」といった、ジビエに関する素朴な疑問について解説。クイズも織り交ぜながら、和気あいあいとした雰囲気で進みます。

「近年は自然環境や人間の居住地が変化したことにより、里山を中心に野生動物による森林被害や農作物の被害(獣害)が深刻になっています」と田坂さん。

「問題視されているのが、自然環境への影響。野生動物たちが森林の植物を食べてしまうと草木が減って森林が弱り、大きな台風や大雨に耐えられなくなります。土壌が剥き出しになると大雨により土砂災害も増えますし、土や木が川や海に流れ出て、水のなかで生きる生物にも影響が及ぶんです。山と海はつながっているので自然環境を守るうえで、野生動物の駆除・捕獲は必要不可欠。その命をちゃんと活用していこうというのが、私たちの取り組みです。今日を機会にそうしたバックグラウンドにも興味を持ってもらえたら」(田坂さん)。

現在のジビエを取り巻く事実に衝撃を受ける参加者続出!

狩猟・捕獲することで被害を減らし、適正な頭数を維持したり、人間が暮らす里山に降りてくるのを防ぐ。つまりジビエは「あくまでも環境を守るために生まれてきた副産物」と脇島さんは話します。「わざわざジビエを食べなくても食料には困らない時代ですが、生産者がいる畜産肉と違い、ジビエは私たちが駆除・捕獲した獲物(鹿や猪)を食肉処理施設で食用肉に加工して販売されています。実は現在、捕獲される野生鳥獣のうちジビエとして流通されているのはわずか1割。なので、ジビエを食べるだけでSDGsにつながるんですよ」(脇島さん)。

参加者たちは「知らなかったことばかり!」と、興味津々。「単純に食べるために獲っていると思っていたので、ほとんど破棄されているというのは衝撃」と話す人をはじめ、大学の農学部で獣害について学んでいる参加者は「一筋縄じゃいかないんですね」と、新たな課題が見つかった模様。「野生動物側のことも、関わる人たちの利益ことも考えないといけない。そんな問題を知らない人も多いと思うので、まずはSNSを活用するなどして目を向けてもらうことが重要だと感じます。こうしたツアーはまさに、気軽な入り口として最高ですよね」。

山道で捕獲罠や野生動物の痕跡を探索!

ジビエについて理解を深めたら、近くの山道をトレッキング。二班に分かれ、野生動物の痕跡を探したり、鹿や猪を捕獲するための罠の見学や設置を体験します。

さっそく、鹿が寝ていた痕跡を発見! 鹿は几帳面な性格なため、足元の草をどけて寝るんだそう。ベテランのハンターになると、フンや足跡の大きさを見て何歳くらいの個体かまで分かるのだとか。

森に設置されている箱罠も見学。こちらは中にエサを入れて誘い込むものですが、野生動物は人工物の匂いを警戒するため、仕掛けてから半年ほどは捕まえずにエサを食べさせながら様子をみるといいます。農学部の学生たちは「教科書の写真でしか見たことがなかったので、実際に見られて嬉しい」と目をキラキラさせていました。

くわえて、“弁当箱”と呼ばれる、地面に置いて野生動物の手足を引っ掛けるタイプのくくり罠の設置体験も実施。挑戦したお子さんのご両親は「子供も楽しみながら、自然に興味を持ってくれてよかった」と話します。

バーベキューやあったか料理でジビエのいろんな部位を食べ比べ!

小一時間の散策を終えたら、お待ちかねのバーベキュータイム! 先ほど講話を聞いたCAMPiece南足柄のグラウンドで、大自然の空気とともにいただきます。小田原で獣害駆除をしながらジビエの食肉処理施設を運営しているジャパン・マルチハンターズの協力のもと、いろんなジビエメニューが振る舞われました。

バーベキューでは鹿の肩肉をはじめ、薄切りのシンタマ(やわらかいモモ肉の中でも更にやわらかい内側のモモ肉)、噛みごたえのあるシキンボ(後ろあしの筋肉部分)、鹿肉のミンチを使ったホイル焼きのハンバーグと、異なる部位を食べ比べます。この日、初めてジビエを食べる人は5人。感想を聞いてみると「噛むほどに旨味があふれてきておいしい! これはお酒が進みますね(笑)」、「噛みごたえがあったり柔らかかったり、部位によって食感が違っておもしろい。特に柔らかなシンタマが最高」と、大満足のよう。

なかでもパートナーと参加した20代男性は「おいしくて、畜産肉と同じくらい親しみが湧きました。最近はジビエが食べられるお店も増えているので、今度友人を誘って食べに行きたいと思っています」と、すっかりジビエの虜に。

知らなかったジビエの調理法に目からウロコの参加者たち!

さらには、鹿のスネ肉のシチューやジビエのミンチを合わせて作ったペンネまで! この日の気温は10℃。雨が降り始めてしまったこともあり、温かさが体中に染みわたります。ほっこり温まる煮込み料理に、おかわりする人が続出する人気ぶり。ジビエ料理人の長谷川謙司さんいわく「焼く以外にも、いろんな調理法で楽しめるんです。きちんと下処理されたジビエは肉本来のおいしい香りが引き出され、臭みも感じませんよ」とのこと。

参加者から多かったのは「煮込みやシチューで食べるのは初めて」という声。「普段食べているビーフシチューと鹿肉がこんなに合うことを知って、ジビエをより身近に感じました。じっくり煮込むとお肉がホロホロになるんですね。トマトソースのペンネもおいしくて、鹿とトマトの味がマッチするというのも発見でした」(20代女性)。「ふるさと納税でジビエを手に入れ、家でもよく食べている」という小学生のお子さんと参加したご夫妻は、「味が好きで食べていましたが、ジビエの背景を知ってから味わうと有り難みがあります」としみじみ。

ちなみにジビエは、低温でじっくり焼くのがポイントだとか。「薄切りの鹿肉は、肉汁が上がってきたらひっくり返して、もう一回肉汁が上がってきたらちょっと持ち上げてみてください。そのタイミングで湯気が立っていたら食べごろのサインです。ジビエって焼きすぎちゃう方が多いんですが、火を入れすぎるとパサパサになってしまうので、このくらいがちょうどいいんですよ※」(脇島さん)。

※ジビエは中心部まで火が通るようしっかり加熱して食べましょう。(中心温度が75度1分又はこれと同等以上)

ジビエについて学びと発見にあふれた1日が終了!

バーベキュー後は、南足柄随一の観光スポット・あしがり郷 瀬戸屋敷で醤油麹作りも体験。漬け込むとお肉を柔らかくしてくれる醤油麹は、ジビエとも相性抜群。手作りした醤油麹は、自宅に帰ったあともジビエを楽しんでもらうきっかけになりそうです。

大充実の半日ツアーを通して、参加者たちはさまざまな発見があった模様。「ジビエ=狩猟のイメージが強かったので、罠を仕掛けたり痕跡をもとに動物を探すといった地道な活動内容を聞いて驚きました」、「バーベキューがお目当てでしたが、結果的にいい食育になりました」といった声とともに「ハンターさんやジビエ料理の専門家さんなど、いろんな角度からジビエに携わる人々とも触れ合えたことで、みなさんがいるからSDGsが実現できていることを肌で感じられたのは大きかった。これから意識して消費するようになると思います」と、SDGsに目を向けるきっかけになった人も。

帰り道では「また開催してほしい」と話す声もちらほら聞こえました。ジビエを学び、体験し、味わった同ツアー。みなさん、すっかりジビエの虜になったようです。

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